ぼくは情報中毒である。
小さい頃からテレビっ子、ラジオっ子、活字中毒であった。
しかし、年齢を得て目が弱ってきて、以下の2つのメディアがだんだん苦手になってきた。
本とテレビである。

通勤電車などで本を読んでいると、本業の仕事をするときに目が痛い。
それでも情報の主力はなんと言っても本だ。
大事なことは本で、それも相当量を読まなければならない。
逆に、そう重要でもない情報、エンターテインメントを摂取するときは、目を休めたくなる。

もっと辛くなってきたのはテレビである。
まず、本と一緒で視覚を酷使する。
次に、実時間を使う。
30分の番組を見るのに、30分掛かる。
本よりもハズれ情報をつかんだ場合のダメージが大きいのだ。

iPod/iPhoneを常用するようになって、この2つに変わって台頭してきたのが聴覚メディアである。
もともと外出中は基本的に音楽を聴いている方だが、それに加えて、ストーリーのある音声メディアを取り入れることになった。

まずは何と言っても「落語」である。
古今亭志ん生がいい。
トボけた味わいで、枯れていて、いつまでも聴いていたくなる。


ぼくは上記の全集が好きだ。
ニッポン放送のラジオから採録されたものであって、サイズがコンパクトで聞きやすい。
ガッとボックスセットを買ってもいいと思うが、そうすると意外と聴かないものである。
やはり1枚1枚買うのが楽しい。

志ん生の落語は音だけ聞いても話が分からないという人もいる。
桂歌丸もDVDの解説でそう言っていたが、本当だろうか。
ぼくは普通にCDで聴いても分かる。
(志ん生の映像はほとんど残っていない。)
もしいきなり志ん生を聴いて分からない場合は、志ん朝を聞いて耳を馴らしてから同じ噺を聴くのもいいかもしれない。



ただやっぱり親父の方が好きだ。

他にも朗読やポッドキャストなどもCDで入手できる。
ぼくはラジオを留守録してmp3フォーマットにしたものを聴いている。
ラジオの留守録にはICレコーダーが便利だ。



ラジオレコーダーは、固定式のものが一見高級感があるが、ポータブル式の方が絶対お勧めだ。
電波の受信は、場所や方向によって大きく影響を受けるからだ。
ラジオもテレビ同様、録音しておいて後で貯め聞きする方が時間の節約になる。
radikoをPCで録音するといいような気がするが、まだ研究していない。

当然ニュースや英会話を聴くのもいい。
英会話のポッドキャストはなんといってもESL.comだ。
これは別項に書いた。

あと、Audibleというサイトで本の朗読を大量に買える。
日本で朗読というと、文学や童話や詩というイメージだが、Audibleではビジネス書やユーモア・エッセイなども、新しいものがどんどん買える。
しかもダウンロードできる音声で、なんといっても価格が安い。

これはアメリカが朗読大国だからだと思う。
ホラー小説の王、スティーブン・キングは、自分の作品の朗読を聴きながら夜のメイン州を車で走るのが好きだそうだ。
どんだけコワいもの好きだよって話だが、車社会で、長時間のドライブが日常的であれば、音楽を聴くだけでなく、中身のあるものを聴きたくなるだろう。
そういえば筒井康隆が、欧米の作家は自作の朗読でお金を儲けている人が多いと聴いた。
筒井はもともと俳優志望だっただけあって、非常に朗読がうまい。
次のCDの後半には、「寝る方法」という爆笑の短編が、筒井自身の朗読で入っている。



筒井の朗読は新潮社からカセットブックがいっぱい出ていたが、CD化されていないのが残念だ。

日本もiPod/iPhoneがこれほど一般化したのだから、音声コンテンツがもっと興隆すればいい。
音声コンテンツは、電車の中や散歩中、あと銀行のATMで行列するときにサッと聴くと便利である。
実時間を取るのはテレビと一緒だが、歩きながら聴くことが出来る点で全然違う。
「ながら」の極致である。

ぼくは何もしていないと退屈で、気がふさぐので行列や移動が苦手だったが、音声コンテンツをiPod/iPhoneに入れるようになってから、これらの待ち時間がまったく平気になった。
これは、大げさなようだが、明らかに人生の中でエポックメイキングな出来事である。

一日の中で退屈な時間がなくなり、また、外出中に情報の注入が終わっている。
会社や家にいる間は、作業/執筆しているか、休息しているだけだ。
膨大な時間と労力の削減になる。

問題は音だけで情報を収集するのは結構アタマを使うということだ。
音声の情報は流れが一方向で、戻り読みが聞かない。
頭の中で情報をオンザフライで覚えていき、論理構造を構築しながら聞いていかなければならないわけである。

逆に言うと、これは脳トレにもなると言える。
人間は発語思考、つまり言葉でものを考えているので、言葉を脳で処理する能力を鍛えれば、普段の思考も論理的で豊かになりそうである。
あるいはもっと直接的に、しゃべる訓練にもなるだろう。
音声コンテンツはおすすめである。

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