2018年4月14日土曜日、浅草六区ゆめまち劇場で行われた、劇団DangerousBoxの芝居を見に行った。
昼夜ダブルキャストの2回公演を見た。
題名は「晩餐狂想燭祭~死~」(ばんさんきょうそうしょくさい~し~)である。
長いし難しいしヤンキーっぽい!
でも内容はものすごく良かった。



この演劇は、バー「月光密造舎」で知り合った大友沙季さん、叶江 透さん、八木 岳さんが出ている縁で見に行った。
知り合いが3人も出ている芝居は珍しい。
ていうか、総出演者が100人の芝居である。
ひゃ、百人って君!
出演者の方も「まだ、全員揃っての通し稽古が出来ないんですよ」「最終的にどうなるか、まだ予想がつかないです」などと言っていた。
でも見終わってみれば、100人ピシリと舞台にカッコ良く収まっていたし、逆に100人出ないと、あんな迫力は出なかっただろうし、100人いる必然性を感じた。

明治時代の遊郭の話である。
何十人もいるのは、華やかな花魁(話をするだけの処女の花魁もいる)たちである。
そして、黒い着物を着た、長年の花魁暮らしで梅毒に掛かり、隔離されて娼館を終の棲家にする元花魁たちもいる。
こちらも、黒い衣装の隅々に細かい細工が施されていて美しかった。

ゆめまち劇場は、それなりに広い劇場で、真ん中の大きな花道を3方から客が取り囲む感じでとても見やすかった。
客席で飲食もできる。
また、最初に配られた模造紙幣の「おひねり」を、客がショータイムに花魁の胸元に入れたりするパフォーマンスもあって、客席も含めた劇場全体が娼館という趣向である。

びっくりしたのが和風生バンドで、三味線、琴、笙、太鼓が和風ロックを演奏していた。
ダンスもすごくて、舞台の隅にポールダンスが2箇所と、エアリアルが2箇所ある。
エアリアルって言葉、ぼくは知らなかったが、心底びっくりした。
天井に50センチ四方の四角い穴が空いて(ちょうど1個の穴がぼくの真上にあった)そこから白い布がするするっと降りてくる。
そして、半裸の女性ダンサーが、その布に絡みついて降りてきて、ブランブランしながら踊るのである。

夢みたいだ!
楽しい!
男優さんたちの剣舞もすばらしかった。

遊郭は現在でいう風俗という機能の他に歌舞音曲を披露する演芸場でもあったので(まさに浅草にも花街はあった)音楽やダンスを楽しむのも演劇のうちなのである。
お酒を飲みながら舞台を見ていると、虚構空間全体に飲み込まれるような、限りなくバーチャルなタイムスリップのような感覚に包まれる。
よく「舞台の世界に飲み込まれる」、「物語の世界にタイムスリップする」というような言い方がされ、ぼくも何回か書いてきたような気がするが、こんなにリアルに劇空間に飲み込まれる舞台は珍しい。

演劇の内容は遊女と金持ち、そして庶民の悲しい恋愛模様を描いた世話物だが、演劇の言葉がものすごく変わっていた。
うまく再現できないと想うが、たとえば「あなたが・すごく・好きだ」という文章があったとして、「あなたが」、「すごく」、「好きだ」という3つのフラグメンツに分割して、広い舞台のぜんぜん違うところにいる役者さんが言葉を継いでいくのである。
「あなたが」、「すごく」、「好きだ」という文章の断片が、観客を取り巻く空間をぴゅんぴゅん移動するのである。
いわば集団ポエトリー・リーディングだ。
これもすごい。
ポールダンスやエアリアル、剣舞と同じぐらい、セリフを言うことが言葉のアクロバットのようである。
観劇というより、演劇空間体験だ。
劇場を生きているという実感が湧いてくる、そんな舞台だった。