今日、2018年3月18日は、ザムザ阿佐谷に、月蝕歌劇団の『男の星座』を見に行ってきた。
2演目連続公演の1演目目で、今日が楽日に当たる。
明日1日休演日があって、明後日から別の公演になる。
だからこのブログを見て、興味を持った方が改めて阿佐ヶ谷に行っても、もうやってないのである。
スミマセン。
超面白かった。
『男の星座』はマンガ原作者として最も著名な梶原一騎の遺作にあたる、自叙伝的な作品を演劇化したものである。
月蝕歌劇団は、主催で脚本、演出を担当する高取さんがマンガ評論家でもあるので、マンガの演劇化も多い。
しかも、面白いのが、そうとうビジュアルや演技をマンガの原作に寄せているということだ。
アニメ化や実写化よりももっと、演劇化の方が「へぇー!」と思う。
解釈の妙を感じる。
大好きなのが手塚治虫のこれも絶筆『ネオ・ファウスト』を演劇化した『ネオ・ファウスト地獄変』で、またか涼さんと倉敷あみさんの爆笑コンビの演技が最高で、3回も見た。
また最高だったのが、丸尾末広の『笑う吸血鬼』で、タカハタアミさんと絹彦さんがこれもビジュアルを超マンガに寄せていてウケるというか感動した。
でも、この2作は、どちらかというとファンタジックで、少年少女が出てくる耽美、幻想の世界である。
月蝕歌劇団は、「暗黒の宝塚」と異名を取る、アングラと地下アイドルを組み合わせたような劇団で、『ネオ・ファウスト』や『笑う吸血鬼』はその劇団のイメージに合っている。
しかし『男の星座』は、男くさい梶原マンガの中でも、特に男くさい、マスコミ、芸能界、格闘界、暴力団の入り乱れる世界である。
この世界を、しかも、いつものように女性キャストが中心でやるということで、どうなるのかなあと心配もしたが、逆に好奇心にもかられた。
見てみると、やっぱり「こう来たか……」と、解釈の妙に感動させられた。
まず、狂言回しとなる晩年の梶原一騎を、実写版進撃の巨人で巨人役で出たことで有名な大久保千代太夫さんが演じていた。
このビジュアルが、晩年の例のアノ梶原一騎そっくりで、超ウケた。
遺族の方も感心されていたそうだ。
この晩年一騎が、演劇の進行と後年の代表作との関係をポツリポツリと語るので、いろいろ腑に落ちる部分があって良かった。
もっとも、梶原一騎が語る話であるから、例のプロレス的な、虚実皮膜の話ではあるのだが……。
一方、主役である少年時代から青春時代の一騎を演じるのが、月蝕初登場となるMayulaさんである。
この方は、楯 真由子の芸名で昔から活躍されている美女である。
ぜんぜん梶原一騎っぽくない。
また、性格も、あまりアクが強くない、観客に感情移入させるような清純で傷つきやすい性格で、同じ月蝕の『寺山修司-過激なる疾走-』で岬 花音菜さん、高田ゆかさん、白川沙夜さんが演じていた寺山を思い出す。
寺山も、梶原も、読者/観客として外から見ているとその特異でアクの強いキャラクターが強く感じられるが、語り手として内側から語る姿としては、一人の純朴な少年であるのが自然であったのだろう。
でも、Mayulaさん演じる梶原一騎を見ていて、ぼくは巨人の星の星 飛雄馬を思い出した。
飛雄馬というと、テレビの「懐かしのアニメ」番組などで熱血ぶりが繰り返し放映されているが、同時に「他人の悲しみをそっくり自分の悲しみにしてしまう」センチメンタルな男で、ぼくが一番印象に残っているのは、マンガ版のラスト、ライバル左門とスケバン京子の結婚式を会場の外で見る場面である。
この飛雄馬の姿は、アニメではカットされているのだが、こういうセンチメンタルな悲しみが、『男の星座』の梶原一騎にはあって良かった。
若き日の一騎(梶 一太)が、恋人のストリッパー、カオルに、心ならずも暴力を奮ってしまうのが、いつもの月蝕のSMじたてになっているのも良かった。
女優陣がメインのキャストを演じているが、男優陣も今回多くて、初見の人もそれぞれに印象に残った。
力道山や浅草のルンペンも雰囲気があって良かったが、やはりすごかったのは木村政彦、大山倍達と戦う牛、そしてオカマのジャニーさん(実在の芸能プロの社長とは別人物)を怪演する工藤丈輝さんだ。
この人すごいよ。
平井堅さんのMVにも登場する、山海塾にも参加していた舞踏家で、全身バネのような、ケイレンする機械のような動きをする。
オカマのジャニーさんと絡むのがすっかり月蝕の顔の一人になった推しメンの慶徳優奈さんだ。
大山倍達の一番弟子の春山 章という役を演じていたのだが、これも、ダイナミックな演技と悲しげな表情が同居していて良かった。
演劇全体も、全体に楽しい、面白い話なのだが、終わってみると悲しい。
昭和の青春群像で、野心や、挫折や、劣等感、そして無常観があふれている。
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