ということでドキュメントスキャナーを買った。キヤノンのDR-C240というものだ。

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 買った時はAmazonで3万8千円だった。
(※7/6現在なぜか43000円に値上げ…)
 高い。
 もっとも、これぐらいが標準的な価格帯で、特にDR-C240が高いというわけではない。なんだかんだ言ってニッチな製品であり、これ以上劇的に値段が下がることもないだろう。この値段が妥当かどうかは、家で幅を食っている本の冊数と相談して、抵抗がある方は自炊代行業者を頼るか、「自炊の森」のようなスキャナーを借りられる店を利用するか、あるいは「スキャレン」のような会社でスキャナーをレンタルすることも検討したらいい。

 ぼくはというと、スキャナーを導入して本当に良かった。
 自炊は今のところまったくストレスなくできる(大きなトラブルは経験していない)し、他の紙類の電子化もできたからである。
 DR-C240は小さな紙も読める。カードもコピーできる。
 役所や会社からもらった紙、電化製品の取り扱い説明書など、身の回りには、めったに使わないのにいつかはいると思われる紙が溢れている。一般用にコンピューターが導入された1970年代にはペーパーレス社会が来ると言われていたが、それからしょうもない紙はかえって増えて、いっこうに減らない。こういうのをスキャンすると部屋がスッキリするし、「こんな紙もあったのか!」ということを改めて再発見するので、かえって活用が増える。

 汚部屋を余計なものを捨てることで精神的にスッキリする「断捨離」が流行っているが、ぼくは捨てる前にデジタル化する「デジ捨離」(いま作った言葉だが)の方が好きだ。ぜったい聞かないと思われるCDもiTunesでインポートし、iTunes Matchにアップロードしてからブックオフで売っている。
 (実際は100枚単位でヤフオクで売ったほうがはるかに高く売れる。ブックオフはそうとう買い叩かれるので手間を惜しまない人はヤフオクで売ったほうがお得だ)この作業を行うと「このCD持ってた持ってた!」という再発見があって、かえって前よりもCDを聴くようになる。物理CDが片付かないと、結局手近にある、取り出しやすいCDばっかり聴くようになる。持っているCDをシャッフル再生したりすると、思わぬつなぎがあって、超楽しい。
 (もう違法になってしまったが、DVDも吸い出してHDDに格納しておくと部屋がぐっと片付く。もっとも映画はネット配信で見る時代になりそうだが…)

 デジタル情報は幅を食わず、タイトル順、日付順に並べられ、一瞬で検索できる。部屋を片付ける才能がない人の福音である。
 これは意見が分かれるだろうが、ぼくは、写真や手紙などもスキャンしてある程度捨てている。その方が結局見るのだ。紙を残しておいて、必要なとき探すのに時間をとられるのは短い人生で惜しい。
 面白いのが芝居のチラシ、チケット、パンフレット、生写真などをセットでスキャンして公演ごとにPDFにすることだ。さながら読む芝居になる。

 もともとフラットベッドスキャナーを持っていたが、この目的では使わなかった。膨大な紙切れを一枚一枚ガラスに押し当てて、ボタンを押して…という作業は超・消耗だ。そんなこと誰もしませんよ。それに対してドキュメント・スキャナーは、何かというとすぐ使う。どんどん部屋が片付くし、埋もれていた昔の書類を再発見する。
 ということで、自炊から離れたが、ドキュメント・スキャナーの導入はおすすめだ。

 ドキュメント・スキャナーの中ではPFUという富士通系の会社のScanSnap ix500という機種が有名で、スマホの世界でいうとiPhoneばりのシェアを誇り、いわばデファクト・スタンダードになっている。スキャレンで借りたのもこの機種だ。みんな使っているので、ブログなどの情報も豊富だ。

 ぼくもこれを買おうと思っていたが、下のWeb記事を見て気が変わった。

自炊ユーザーに朗報!:ワンランク上の性能とはこういうことさ――“超快適”スキャナ「imageFORMULA DR-C240」を徹底検証する (1/5) - ITmedia PC USER

 これ、よくよく見ると、PR記事である。宣伝だ。でも気合の入った内容で、いかにDR-C240という機種が他のスキャナー、特にix500と比べて優れているか、縷縷述べている。これでググッと気持ちが動いた。
 まんまと宣伝に乗せられた形だが、これ、ix500を前もってスキャレンで借りて使っていたのが大きい。ix500はix500で、ベストセラーだけによく出来たマシンで、快適に使えた。短いレンタル期間ではあったが、自炊の容易さ、可能性の大きさを知らしめてくれた恩人ならぬ恩機械だ。しかしながら、しょうしょうその出来に不満があった。これを、DR-C240は解消している。

 まず、単純にスキャンの速さである。これは明らかにDR-C240の方が速いようだ。また、オートシートフィーダーに1回あたり入る原紙の量も多い。機械としての基本性能が高いのだ。
 前出PR記事によると、ix500は家庭用の普及機なのに対し、DR-C240は業務用のエントリー機という位置づけのようだ。
 たしかにそういう気がする。

 ix500の方がすぐれている点も多い。まず、オートシートフィーダー(紙を入れる部分)もリトラクタブルでしっかりカバーされるようになっている。DR-C240はむき出しだ。これが気になる。
 また、ix500はWiFiがついている。DR-C240はWiFiが入っていない。ただドキュメント・スキャナーはどう考えてもパソコンのそばで、一箇所に固定して使うものなので、あまりWiFiの必要性は感じない。
 あと、多少デザインがix500の方がオシャレな気がする。DR-C240は丸っこいのが気に入らない。キヤノンという会社はどうもルイジ・コラーニに一眼レフカメラをデザインさせたり、妙に丸っこいデザインが好きで、ぼくの肌に合わない。部屋に丸っこいものがあると、空間が無駄に空費される気がしてイヤなのだ。

 逆に、細かい点でDR-C240の方がいい点もある。

 スキャナーの設定(フルカラーかグレースケールか、600dpiか300dpiか、白紙をスキップするかetc.)は、紙の種類によって組み合わせを覚えておきたい。この設定の組み合わせをプログラムと呼ぼう。ix500も、DR-C240も、このプログラムを複数記憶し、選択できるようになっている。
 ただ、ix500はこのプログラムの選択(切り替え)を、パソコン側で行わなければならない。いっぽうDR-C240は、番号によってだが、プログラムの切り替えを本体側でできるのだ。これが便利なのである。

 ぼくは基本的に、
 *フルカラー+600dpi
 *グレースケール+300dpi
という2種類しか記憶していない。で、カラーの設定を1、3、5、7、9という奇数番に、白黒の設定を2、4、6、8という偶数番に記憶している。
 まず表紙をカラーでスキャンする。紙をセットするとすぐにプログラムを変更できるので便利だ。ここで奇数番を選択し、スキャンする。
 スキャンが終わったら、いったんPDFを保存する。この操作はパソコン側で行うのが面倒だが、ちゃんとスキャンできているか簡単な確認もここで行うのでまあ仕方ない。
 次に本文を白黒でスキャンする。これもスキャナーに紙をセットしたら、ボタンを1回押して偶数番を選択すれば、白黒モードに切り替えられるのだ。(厳密に言えば、9番までだから、9番で表紙を取った後は2回押さなければならないが…)
 この機能、ちょっとしたことだが、ix500を使っていてスキャナーとパソコンをいちいち移り変わって操作するのがものすごく面倒だったので、すっかり気に入った。こういうの、キヤノンの開発者さんが実際に自社の機械で何千枚もスキャンしているうちに必要性を痛感したのではないか。見た目が無骨でボタンが多く、いかにも業務用という風貌のDR-C240だが、ここはすばらしい。

 あと、PR記事には書いていないが、超・細かいことだが、スキャンが終わった紙を受ける台のストッパーがすばらしい。

 ix500はちょっと上に傾斜していて、ここで紙がたまる仕組みになっている。だがこれがちょっと力不足で、紙がどんどん溢れだしてしまうのだ。ぼくだけかな?
 しかし、DR-C240にはリトラクタブルのちょっとしたストッパーがついていて、ここで紙が止まる。原始的だが、効果絶大である。ここで確実に紙が止まるので、ぼくは高いラックの上に機械をセットしている。ix500だと紙が部屋中にばらまかれてしまう気がする。まあ、ストッパーぐらい自分で日曜大工で付け加えてもいいような気がするが…。

 本のスキャンというのは、最初は面白いけど、何冊かやってみると退屈この上ない作業である。本音を言うと誰かに代わってもらいたい。しかしながら、こんなことを人にさせる経済的な余裕がないので、ちょっとでもストレスなくやりたいものである。ix500とDR-C240、両方を使い比べて、性能面では後者に軍配が上がるとぼくは思った。
 ix500はとにかくベストセラーなので、情報がWebに溢れている。まるまるix500の情報だけで、一冊の書籍のようなボリュームのあるブログもあるぐらいだ。こういうのを見ると、やっぱりix500にしておいた方が安心なような気もする。昔のPC-9801のようなものだ。でも、ぼくはあんまりこだわりがない性格なので、DR-C240を大して問題なくつかいこなし、自炊生活を満喫している。
 次回は、実際にスキャンをどうやるかを書く。