昨日も昨日とて新宿花園神社参道紫テントに新宿梁山泊「新・二都物語」を見に行った。千秋楽だ。10日間に渡る公演だが、初日と楽日に行った。

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 昨日(6月27日)は晴れていて暑かった。でも、暑い、あついと世間で言うほど暑くない気がする。素直にアロハシャツと短パンで過ごしているからだろうか。

 客席には、舞台直前の地べたにゴザを敷いて座る「桟敷席」と、後ろ半分の段になっている「指定席」がある。初日は桟敷席の上手(舞台に向かって右側)に座って、大変水を浴びたので、楽日は下手に座ってみたが、あまり状況は変わらず大変水を浴びた。千秋楽は大変な人の入りで、桟敷席は座長の掛け声で客がヨイショと声を掛けて客席を圧縮した。ぎゅーぎゅーである。前の方の客は配布されたビニールを構え、希望者に貸与されるレインコートを着て水に備える。こういうの、言うほど飛んでこないのが通例だが、梁山泊の水は本当に大量に掛かる。去年の「二都物語」は最前に座ったらバッグがぐしょぐしょになったので、今回はビニール袋にiPhoneと財布だけは入れておいた。入れておいて良かった。
 いかにも水を掛けるぞ、あとタンツボの中身を掛けるぞという金守珍さんや大久保鷹さんの、第四の壁こわしまくりの客いじりがあって、最前に座った常連客のお歴々が周章狼狽しまくるのも、演劇の一部みたいで楽しい。

 最初にスペシャルキャスト「秘密の花園7人衆」が紹介される。老人ホーム「秘密の花園」の住人という設定だが、本多劇場の代表の本多一夫さん、歌手の中山ラビさん、伝説のグラビアアイドルのフラワー・メグさんなど、演劇、芸能史上の偉人である、しかし、必ずしも役者歴が長いとは言えない7人のご年配の人がリアルに老人を演じている。これが素晴らしい。しかもチョイ役ではなくて、全員重要な役回りなのだ。中山ラビさんはギターを掻き鳴らして朗々と歌うシーンがあって、下手で見たらバッチリ目の前で歌ってくれてラッキーだった。

 舞台狭しと跳ねまわる体技を見ていて、キャスト個々人のキャラクターもすばらしいけど、全体が一匹の巨大な野獣のように、有機的に見えるのがすばらしいなあと思った。それは最後の方に出てきた見えない馬からの連想だけど、跳ねまわる役者さんたちが波打つたてがみのように見えたのだ。

 カーテンコールで金守珍さんが「去年の『二都物語』と今年の『新・二都物語』は、唐十郎さんが一人の女性に宛てたラブ・レターだと思っています。その女性が客席に座っておられます。李麗仙さんです」というと、指定席最前に座っておわれた李麗仙さんが立ち上がって拍手された。今年は唐組の『秘密の花園』で唐十郎さんと大鶴美仁音さんを見られたのに続く感動だ。(そういやこの新宿ではコマ劇場取り壊し寸前にモーニング娘。『リボンの騎士』でマルシアさんも見たな! この舞台も大変良かった。)



 ということで、唐組『秘密の花園』、劇団A・P・B-Tokyo『双眼鏡の女』、演劇実験室◎万有引力『犬神』、虚飾集団・廻天百眼『冥婚ゲシュタルト』、新宿梁山泊『新・二都物語』と、5劇団10公演に及ぶぼくの演劇月間は終わった。見るたびにアドレナリンが噴出してまったく疲れを感じなかったが、通して考えるとさすがに疲れた。でも、改めていま思うとどの劇も素晴らしく、味わいがまったく違うので外せない。この日程しかなかったと思う。去年の5月も月蝕、唐組、万有引力、A・P・B、梁山泊を見た。5月から6月って集中するのね。でも集中して見て、比較するから分かること、各劇団、役者さんの芸風の違いや、意外な共通点、各劇団に映して見えてくる時代の流れのようなものがあって、超絶楽しかった。ぼくなんか抛ってくと引きこもって小人閑居して不善を為しているばかりだが、演劇に行って世界の広がり、いろんな人生の一コマを見ることができて、精神が解放されて良かった。やっぱり映画よりも演劇の方がいい。同じことを何度もやっているが、一度も同じことがない。その舞台でマッチを擦った煙の流れは、その時にしか見られないのだ。