AKB48の人のラジオを聞いていたら「サイン、コサイン、タンジェントって何で勉強したんだろうね」「正直、ぜんっぜん使わないよね」的なことを言っていた。
ぼくはAKB48の人にそこそこ好感を持っている方なので、ちょっとゲッソリした。
この話は「あるある」であって、本当におバカ系の芸能人の人が良く言う。

実際、三角関数は、ものすごく良く使う。
高校で物理を習うともう出てくる。
波動、振動を記述するのに使うし、CGにも使う。
三角関数がなければシンセサイザーはないから、AKB48の人の音楽も成立しないし、CGがないとビデオも出来ないのである。
だいたい特に必要もなしに、あんなしちめんどくさいものを考え出すわけなかろう。
物理と数学が違う教科なので起こる誤解であるが、それほど役に立たない知識を、ただいい成績を取って進学するために学び、卒業したらサッパリ忘れてしまうというのは、ものすごい青春の空費である。



ぼくは歴史の年号の方がよく分からない。
「いい国作ろう鎌倉幕府」というのを、どうしようもなく覚えているが、じゃあなんだと思うのである。
ていうか、鎌倉幕府の成立は1192年ではなくて1185年である説が最近は取られているそうだ。
どうなるんだろ。いい箱作ろう? いい箱ってなに?
とりあえず何千万人の人が、何十年にも渡って、営々と覚えてきた「イイクニつくろう」という呪文は壮大なムダだったことになる。

教科書が間違っていたといえば、例の石器発掘の捏造騒ぎもあった。
あの人どうしてるんだろうね。
あの一件のおかげで教科書は大改修になったそうである。
ていうか、それほど大きく教科書が書き換わっても、まったく社会に影響がないということが分かる。

では、鎌倉幕府の成立年代とか、石器文明の成立について、学校で教えることについてぼくが反対しているかというと、全然その反対であって、むしろガンガン教えて欲しいと思っている。

『フェルマーの最終定理』という本に、こういう話が出てくる。
エウクレイデス(ユーグリッド)がプトレマイオス三世時代にアレクサンドリアの図書館で数学を教えていた時、ある少年が「先生、その数学はどんなことに使えるのですか」と質問をした。
授業の後でエウクレイデスは従者に向かって「あの少年に小銭を与えなさい、彼は学んだことから実利を得たいようだから」と言って少年を放校にしたそうだ。
これは学問の本質をあらわしていると思う。
学問は勉強することそれ自身が楽しくて仕方ないからやるのである。

ツイッターでビートたけし氏の言葉が引かれていて、なるほどと思った。




学生というのは本当にいい身分である。
昼間から、酒も飲まずに「宇宙が・・・」とか「織田信長が・・・」とか話している。
天国である。

大人はわざわざお金を払って勉強をする。
何万円も掛かって駅前留学で英会話を習ったり、市民講座に行って源氏物語を読んだりする。
でも大人になって、頭が固くなっているから、なかなか頭に入らない。
ああ若いころにもっとやっとくんだったなあと思う。

でも勉強盛りの、当の学生はその特権的な立場を楽しんでいないようだ。
自分の過去を振り返ると、先生がいやだった。
学校の先生ってなんであんなに偉そうで、いやなやつが多いんだろう。
問題を出し、分からない生徒を選んで指して、立たせる。
答えが出ないで、冷や汗を流して苦しんでいるのを、クラス中の晒し者にする。
先生の教科書はアンチョコで、答えがカラーで印刷しているのである。
知っているのは当たり前だ。

テストもつまらない。
教科書の一部を切り抜いて貼ってあって、穴埋め問題にしている。
教科書を覚えていると埋められるし、覚えてないと埋められない。
クイズである。
冒頭に書いたことと矛盾するようだが、こういう勉強は社会で何の役にも立たない。
社会では教科書見放題、ネット調べ放題、電卓使い放題である。
ネットと電卓を使って、なお分からない問題をテストで出すべきだ。

しかし、今のままでも勉強を楽しむ方法はある。
変な先生とテストは無視すればいいのである。

ぼくは成績はひどかったが、勉強は大好きだった。
変な先生と成績さえ気にしなければ、学校は天国である。
思うに、親に恵まれていて、小さいころから大人の本を読んでいたので、知の喜びを知っていたのであろう。
だから学校でつまらない先生に引っかかっても、あまり意に介さなかったのだ。
今思うとこれが、本当に人生を豊かにしてくれたと思う。

学生はせいぜい勉強を楽しんだ方がよい。
そして先生や、親は、「勉強とはつまらないが、我慢して学ぶ苦行である、卒業して就職すればいくらでも忘れていいから、今は苦しんで知識を詰め込め」という、明らかに間違った考えを子供に吹き込まない方がよい。
子供が勉強を楽しんでくれないと、世の中はどんどん暗くなるのである。

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