昨日月27日は、池袋「カフェ・インスクエア」で催されたサイエンス・カフェ「水と健康、“水素水”を斬る!」に行って来た。
5月27日(金)サイエンスカフェ「水と健康、“水素水”を斬る!」池袋で19時~ - samakikakuの今日もワハハ SAMA企画
5月27日(金)サイエンスカフェ「水と健康、“水素水”を斬る!」池袋で19時~ - samakikakuの今日もワハハ SAMA企画
この企画は、RikaTan(理科の探検)という雑誌によるもので、編集長の左巻健男先生が話題の水素水について2時間に渡って語り尽くした。会場はきれいなカフェで、客席と自由に会話しながらの和気藹々としたものだった。
最近、さまざまな目新しい学問的な製品や情報が跳梁跋扈していて、一方でそれらが疑わしい物として批判されている。ぼくは「水からの伝言」や「江戸しぐさ」であれば、ここがこうおかしい、とすぐに言い返せるが、「水素水」というのはどこがどう疑わしいのかパッと言い返せない、しかしそれでいて、ぼくも含めて多くの人が「見るからにインチキくさい」と「なんとなく」思っていることに、前から不満を持っていた。
それで、今話題の水素水とはいったいどんなものなのか、本当に疑わしいものなのか、であればパッと言い返せる簡単明瞭な言い方はあるのか、ということを知りたくて、この会に参加してみた。結果から言って、その願望は大いに叶えられた。
左巻先生の話は大変情報量が多く、医薬品と健康食品の違い、水素水に至る水製品の歴史、水素水を提唱する太田先生の主張が諄々と説き起こされた。最初あまりにも丁寧に太田先生の話を説き起こされるので、もしかして「実は水素水は非常にいいものなのです」というセミナーになるのかと疑いを持ったぐらいだ。もちろんそんなことはなかったのだが、ここまで詳細に自説を研究してもらえれば、太田先生も文句は言えないのではないか。中途半端な理解で、偏見を持って「どうせインチキなんだろう」という粗雑な議論をするのではなく、徹底的に理解した上で、ここに議論の余地があるという、非常に信頼できる話だった。
以下、ぼくの文責による要約である。
水素が病気に効く、というのは、日本医科大学の太田成男教授が提唱し、アメリカの権威ある雑誌、ネイチャー・メディシンに論文が掲載されて一気に注目を集めている。
彼の研究は、水素をマウスに投与すると、「悪玉活性酸素」であるヒドロキシルラジカルが選択的に破壊されるというもの。
活性酸素は、人間の体内で発生される酸素を含んだ化合物で、人間の細胞を損傷する。しかし一方で人間の免疫機能が細胞を分解するのにも活性酸素が使われる。良くも悪くも作用する。
太田教授によると水素分子(H2)は、悪玉活性酸素だけを選択的に無力化し、無害な水になるという。
水素は、水に非常に溶けにくいが、それでもちょっとは溶ける(酸素や炭酸ガスはもっと水に溶ける)。市販の水素水はだいたい1.6ppmと言われているから、1l中に1.6mgの水素が入っている。また、水素は反応性が弱い。
抗酸化性物質が体に良いという考えは昔からあり、代表的な物質としてはビタミンC、E、ポリフェノール、そして有名なベータカロテンがある。
ベータカロテンは、アメリカ、ヨーロッパでは大規模な治験が行われ、有意に発ガン性があると検証された。ガンの発生を防ぐどころか、ガンの発生を促進すると分かったのである。一方、中国ではなぜかベータカロテンを取ると健康にいいと結果が出た。これはもともとの栄養状態が悪く、ベータカロテンを摂取する過程でそれが改善されたと思われる。
しかし先進国では、ベータカロテンはガンを起こすことが分かった。緑黄色野菜は体にいいのに、なぜだろうか。天然の野菜や果物は、他にもいろいろ物質が入っているし、お腹がいっぱいになるから大量に摂取できない。しかし、単体の物質だけを選択的に抽出、摂取すれば、害が出てしまうのかもしれない。
あるいは、活性酸素が体に悪い、抗酸化性物質が体にいい、という仮説が間違っているのかもしれない(抗酸化性物質がガン細胞を死滅させる効果もあるそうだ)。
水素水も、ベータカロテンのように大規模な治験を行わなければ、人体に本当にいいかは分からないのではないか。
また、人体中では大腸の水素産生菌によって、大量の水素が発生している。おならは1回150ml、1日に400ml〜2l出ると言われているが、その10%〜20%が水素である。仮に100ml(100mg)出ていると仮定すると、水素水50l分を超える水素がおならの中にもともと入っている。しかもおならとして排出させる水素は、大腸菌が算出する水素の一部分である。
ということで、ぼくとしては「水素水はわざわざ大金を出して飲む必要なし!」と思った。左巻先生としてはあくまで断言を避け、単純に否定するよりもその背景を理解することが大切、というスタンスであったようだ。
他にも、宇宙創世のビッグバン(big bang)という言葉は「そんなビッグバンみたいなことが起こるわけがない」という反対派の言葉が元になっているとか、福島原発水素爆発の原因とか、ルルドの泉の話とか、マーガリンとバターどっちが体にいいかの話とか、ここには軽々に書けないギョーカイのウラ話まで、細かい余談がたくさんあって、とても楽しかった。
最近、さまざまな目新しい学問的な製品や情報が跳梁跋扈していて、一方でそれらが疑わしい物として批判されている。ぼくは「水からの伝言」や「江戸しぐさ」であれば、ここがこうおかしい、とすぐに言い返せるが、「水素水」というのはどこがどう疑わしいのかパッと言い返せない、しかしそれでいて、ぼくも含めて多くの人が「見るからにインチキくさい」と「なんとなく」思っていることに、前から不満を持っていた。
それで、今話題の水素水とはいったいどんなものなのか、本当に疑わしいものなのか、であればパッと言い返せる簡単明瞭な言い方はあるのか、ということを知りたくて、この会に参加してみた。結果から言って、その願望は大いに叶えられた。
左巻先生の話は大変情報量が多く、医薬品と健康食品の違い、水素水に至る水製品の歴史、水素水を提唱する太田先生の主張が諄々と説き起こされた。最初あまりにも丁寧に太田先生の話を説き起こされるので、もしかして「実は水素水は非常にいいものなのです」というセミナーになるのかと疑いを持ったぐらいだ。もちろんそんなことはなかったのだが、ここまで詳細に自説を研究してもらえれば、太田先生も文句は言えないのではないか。中途半端な理解で、偏見を持って「どうせインチキなんだろう」という粗雑な議論をするのではなく、徹底的に理解した上で、ここに議論の余地があるという、非常に信頼できる話だった。
以下、ぼくの文責による要約である。
水素が病気に効く、というのは、日本医科大学の太田成男教授が提唱し、アメリカの権威ある雑誌、ネイチャー・メディシンに論文が掲載されて一気に注目を集めている。
彼の研究は、水素をマウスに投与すると、「悪玉活性酸素」であるヒドロキシルラジカルが選択的に破壊されるというもの。
活性酸素は、人間の体内で発生される酸素を含んだ化合物で、人間の細胞を損傷する。しかし一方で人間の免疫機能が細胞を分解するのにも活性酸素が使われる。良くも悪くも作用する。
太田教授によると水素分子(H2)は、悪玉活性酸素だけを選択的に無力化し、無害な水になるという。
水素は、水に非常に溶けにくいが、それでもちょっとは溶ける(酸素や炭酸ガスはもっと水に溶ける)。市販の水素水はだいたい1.6ppmと言われているから、1l中に1.6mgの水素が入っている。また、水素は反応性が弱い。
抗酸化性物質が体に良いという考えは昔からあり、代表的な物質としてはビタミンC、E、ポリフェノール、そして有名なベータカロテンがある。
ベータカロテンは、アメリカ、ヨーロッパでは大規模な治験が行われ、有意に発ガン性があると検証された。ガンの発生を防ぐどころか、ガンの発生を促進すると分かったのである。一方、中国ではなぜかベータカロテンを取ると健康にいいと結果が出た。これはもともとの栄養状態が悪く、ベータカロテンを摂取する過程でそれが改善されたと思われる。
しかし先進国では、ベータカロテンはガンを起こすことが分かった。緑黄色野菜は体にいいのに、なぜだろうか。天然の野菜や果物は、他にもいろいろ物質が入っているし、お腹がいっぱいになるから大量に摂取できない。しかし、単体の物質だけを選択的に抽出、摂取すれば、害が出てしまうのかもしれない。
あるいは、活性酸素が体に悪い、抗酸化性物質が体にいい、という仮説が間違っているのかもしれない(抗酸化性物質がガン細胞を死滅させる効果もあるそうだ)。
水素水も、ベータカロテンのように大規模な治験を行わなければ、人体に本当にいいかは分からないのではないか。
また、人体中では大腸の水素産生菌によって、大量の水素が発生している。おならは1回150ml、1日に400ml〜2l出ると言われているが、その10%〜20%が水素である。仮に100ml(100mg)出ていると仮定すると、水素水50l分を超える水素がおならの中にもともと入っている。しかもおならとして排出させる水素は、大腸菌が算出する水素の一部分である。
ということで、ぼくとしては「水素水はわざわざ大金を出して飲む必要なし!」と思った。左巻先生としてはあくまで断言を避け、単純に否定するよりもその背景を理解することが大切、というスタンスであったようだ。
他にも、宇宙創世のビッグバン(big bang)という言葉は「そんなビッグバンみたいなことが起こるわけがない」という反対派の言葉が元になっているとか、福島原発水素爆発の原因とか、ルルドの泉の話とか、マーガリンとバターどっちが体にいいかの話とか、ここには軽々に書けないギョーカイのウラ話まで、細かい余談がたくさんあって、とても楽しかった。