文章を書くとき、箇条書きを使うが、箇条書きには2種類あって、ひとつは
  1. 朝起きる
  2. 顔を洗う
  3. 歯を磨く
  4. 朝食を食べる
  5. 二度寝する
みたいな番号つきの箇条書き、もう1つは
  • 財布
  • カギ
  • 携帯電話
みたいな黒丸付きの箇条書きである。
 この黒丸のことを、印刷/出版業界でボレットと言う。

.375H&H Cartridges of 5 Different Types

これは、フリガナのことをルビと言う、長い棒―のことをダーシと言う(もとは英語のdash)、本文のことをホンブンではなくてホンモンと言うみたいな業界用語で、たぶん世間では通じない。ブレット、ビュレットとも書くらしい。

 ところで、ぼくはこれをブリットと覚えていた。もとは英語のbulletで、最初に英文で指示されたとき、これはブリットと読む、と、思い込んだのである。
 bulletとは銃弾のことである。で、昔、「スティーブ・マックイーンのブリット」という映画があって、銃撃戦とカーチェイスが出てくる暴力的な映画である。で、このブリットという名前がたぶん銃弾のことだから、bulletという英単語はブリットと読むのだ、と思い込んでいたのだ。

 もちろんぼくの勘違いであって、ブリットというのはマックイーン演ずる刑事の役名で、Bullittと書く。まあbulletからきた名前かもしれないが、とりあえず直接の関係はないらしい。

 だからブリットとは読まないとしても、ボレット、ブレット、ビュレットというのはブレ過ぎだ。Googleで調べてみると

「ボレット 箇条書き」…202件
「ブレット 箇条書き」…8590件
 「ビュレット 箇条書き」…978件
「ブリット 箇条書き」…3280件

 なんとブリットが意外と健闘している。
 英米人が実際になんと発音しているか。

bullet Pronunciation in English

 ブリットに聞こえませんか。そうでもないかな。まあこんなの、人に合わせて書くしかない。自分としては今後はブレットで行こうと思うが、それが正しいと強弁するつもりもない。

 むかし小林信彦の文章に書いていたが、何に書いてあったのか忘れたので記憶に頼って書くのだが、むかしスチュアート(Stuart)という日本に来たイギリスの文学者(?)がいて、日本人のスチュアアトという発音が気に入らず、名刺にスチュイットと書いて配ったそうだ。それだとまだしも似て聞こえるらしい。でもそれだと逆に下の名前がなんだったのかわかりにくい。

 カタカナ語は音を写すだけでなく、元の言葉がなんだったのか読む人にも彷彿とさせるものであって欲しい。最近パーティのことをパーリーとふざけて言う言い方があるが、たしかにパーリーの方が原音に近い気がする。でもそれだとpartyを想起させないから不便である。