先日、愛読しているマンガ家の方が、ツイッターで「波線を、〜〜って書くと字の間が空いちゃうんですけど、これ、間を詰めるにはどうすればいいんですか」という質問をされていた。

Gentle waves come in at a sandy beach
 「〜」というのは「あ」や「A」や「亜」と同じく、1個の字である。「〜〜〜」という風に書くときは、「〜」という字を3個書いている。「あああ」が「あ」を3個書いているのと一緒だ。
 長音記号「ー」という字を3個連続で書くと「ーーー」となって、ぼくのパソコンでは切れぎれに見える。でも、ダッシュ「―」という字を3個連続で書くと、「―――」になって、ぼくのパソコンでは繋がって見えるのである(フォントによっては切れる場合もある)。「─」(罫線素片のうちの1つ)を3つ書くと「───」と見える。これはどのフォントでもほぼ確実につながって見えると思われる。

 では「〜」を3個連続で書いた時、切れぎれに見えるべきか、つながって見えるべきか。ぼくはフォントにまかされていると思う。「あ」という字を表示するとき、明朝体に見えるか、ゴシック体に見えるか、ポップ体に見えるかみたいなもので、「〜〜〜」がつながって見えるフォントも、探せばあるんじゃないだろうか。でもたしかに、手元のパソコンのフォントでは切れぎれに見える。これは、字の形の問題だ。

 余談だが(こんなブログ余談の固まりだが)、キレギレという言葉をパソコンで変換すると「切れ切れ」になる。これだと、ぼくは「キレキレ」と読んでしまう。最近の新しい用語法で、元サッカー選手の名波選手が解説で「いまの動き、キレッキレですね!」みたいな言い方をするときに使うような気がするのだ。同じように、「蓼食う虫もスキズキ」と読ませるときは「好き好き」ではなく「好きずき」と書きたい。「好き好き」だとアイドルの歌とか、「好き好き、魔女先生!」というアニメのタイトルみたいで気持ち悪いのである。こういうの、漢字と平仮名は統一してくださいと厳しく言いたいタイプの編集者はどうするんだろうか。

 閑話休題、「〜」と言う字は波ダッシュと言って、ダッシュ(―)が波打った形のものだ。ダッシュはたぶん「新丸子を語る―東横線と多摩川を中心に―」のような、文学的な用途で使うものだ。波ダッシュも「アントニオ猪木の戦いと野望〜そして伝説へ〜」みたいな使い方ができる。他にも波ダッシュは「東京〜博多」とか「AKB総選挙は1位〜16位がシングル選抜」みたいな、範囲を示す時も使う。
 あと「あ〜、そうなんだ」と、長音記号「ー」の代わりに使うことがある。カジュアルな用法で、ぼくなんかが子供の頃はなかったと思うが、丸谷才一の「女ざかり」にもこの用法があった。UnicodeではWAVE DASHという名前で、Unicodeスカラー値はU+301Cである。

波ダッシュ - Wikipedia

 余談だがWAVE DASHは、上がって下がる、∩+∪みたいな書き方が正しいが、長い間Unicodeの例示字形では∪+∩みたいな書き方が載っていた。これ、去年ようやく直された。

UnicodeのWAVE DASH例示字形が、25年ぶりに修正された理由 -INTERNET Watch

 でも、徹底されていなくて、fileformat.infoでは下がって上がる形の字形がいまだに載っている。

Unicode Character 'WAVE DASH' (U+301C)

 UnicodeのU+3000台はCJK Synbols and Punctuation(中国、日本、韓国の記号および句読点)というブロックであって、たぶん欧米の人はどーだっていい字で、だからこんなに重要な字形の不統一が放置されていたのだろう。

 閑話休題、波線の字は「〰」という字もある。

Browser Test Page for Unicode Character 'WAVY DASH' (U+3030)

 文字名はWAVY DASH、Unicodeスカラー値はU+3030である。
 「WAVE DASH」と「WAVY DASH」、どう違うんだろうか。前者はJIS X 0208にも入っていて(1区33点)、日本語通用名称としては波ダッシュという。いっぽう後者はJIS X 0208にもJIS X 0213にも入っていない。
 ウェーヴィー・ダッシュ。
 なんだろうね。波っぽいダッシュ的な?

 iPhoneだと「なみせん」変換で出て来る。Google日本語変換だと出て来ない。ことえりだと「なみ」で出て来る。

 ちなみに、Google日本語変換には、たとえばU+3030のようにUnicodeスカラー値を入力して変換すると、その字が出て来る便利機能があったのだが、なぜかEl Capitanでは出て来なくなった。Windowsでは出て来るから、GoogleのMac版のバグではないだろうか。「U+16進数4桁がUnicodeになってもらっては困る」ような局面があるとも思えないので、設定項目ではないと思う。
 MS-IMEでは3030と打った状態で[F5]を押すと変換される。でも、いまどきファンクション・キーなんか押さないし、それいぜんにそもそもMS-IMEなんか使いたくない。ところが、向こうは使わせる気マンマンであって、何回Google日本語入力に設定しても、夜にこっそりパッチを当てている時、いちいちMS-IMEに戻しているのだ。オイコラなんのつもりだMicrosoft! しつけーんだよ! こういうところがほんとにカリカリする。

 閑話休題(閑話ばっかし)、WAVY DASHは波罫と言って、波型の罫線として使うというと、ツイッター上で教えていただいた。ナミケイと読むらしい。

 がちょ〰〰〰〰〰ん。

 それはタニケイである。どうもスミマセン。上の用例(?)を見れば分かる通り、これは罫線用であって、つながって表示されるようである。よくコラムなんかをこの罫線で囲んでいるのを見るような気がする。それにしても、〜がWAVE DASHで〰がWAVY DASHという、Unicode文字名がなんともなげやりな感じだ。
 ちなみに、波罫には縦型もある。Unicodeスカラー値はU+2307で、文字名はWAVY LINEという。Miscellaneous Technical(その他の技術記号)というブロックに分類されている。JISにはないから、日本語でなんて呼ぶのか分からない。波っぽい線?

 が
 ち
 ょ
 ⌇
 ⌇
 ⌇
 ⌇
 ん

 これをDTPソフトで処理すると縦につながって見えるはず。

 まとめると、WAV*系の文字は以下のようである。

 〜 = WAVE DASH(波ダッシュ)= U+301C = さわぐ磯辺の波ダッシュ
 〰 = WAVY DASH(波罫、横)= U+3030 = 横波ざわざわウェーヴィーダッシュ
 ⌇ = WAVY LINE(波罫、縦)= U+2307 = 兄さんはなぜかウェーヴィーライン

 Unicodeスカラー値の覚え方も作ってみたが、Unicodeスカラー値なんかもちろん覚える必要はない。