昔AKB48に在籍していたメンバー、佐藤亜美菜(さとう・あみな)さんが、ソーシャルゲーム/テレビアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ」で声優を務めているキャラクター「橘ありす」名義で出したCDが、オリコンランキングで週間第8位を獲得したそうだ。
めでたい。


ぼくはオタクではないのだがオタク気質で、いろいろ人に理解されない趣味が多いのだが、その中でアイドル好きは最も理解されないものだ。
今はもうそれほどアイドルが好きってわけじゃないのだが、アイドルが理解できる自分を大切にしたい気持ちがあって、一応ヌルくチェックはしている。
最初はこのへんの話をいろいろ膨らませて書こうと思っていたが、書いてもどうせ理解しない人には理解されないし、理解している人には無粋な話なので書くのをやめた。

AKB48も普通に好きだが、それほど詳しくない。
歴代メンバーの中ではとりあえず前田敦子さんが好きだ。
これも言いにくい。
水戸黄門オタクのトークで「どのキャラクターが好きなの」と言われて「黄門様が好きです」と言うようなものだ。
やはり、水戸黄門オタを名乗るからには、風車の弥七とか、うっかり八兵衛とか、柘植の飛猿が好きと言いたいものだ。

いわゆる推しメンではないけど、ずっと気になるメンバーがいて、佐藤さんがそうだった。

アイドルオタクは、極めようと思うと膨大な時間が掛かる。
ライブなんかに行こうと思うと往復の時間が大変だし、テレビを見るのも地味に時間が掛かる。
ぼくは歳を取って残りの時間が少なくなってきたし、体力も持たなくなったので、この点でアイドルをチェックすることができなくなった。
情けない話ですよ。

それで中心になったのがラジオ番組や、配信されているポッドキャストを聞くことだ。

ぼくは昔からラジオっ子で、タモリや永六輔、コサキン(小堺一機と関根勤)やくりぃむしちゅーのラジオを録音してウォークマンやiPodで聞いていた。
散歩しながら聞いたり、寝ながら聞いたりする。
超たのしい。
落語や英会話も散歩しながら聞くのが効率的だ。
笑ったり、勉強したりしながら、運動して、気がついたら目的地についている。

AKBは他のアイドルとくらべてトークが抜群に面白い。
それで、トークが面白いメンバーを中心に推すようになった。
指原莉乃さん、峯岸みなみさん、倉持明日香さんなどだが、ぼくにはなんといっても佐藤亜美菜さんが面白かった。

最初に惹きつけられたのがオールナイトニッポンで、自分が出演する回の前の回で開催された「ラジオ王決定戦」で、なぜ自分を呼ばないか、自分の夢はラジオパーソナリティだと公言しているのに嫌がらせか、とガチギレしたトークである。
いま彼女はラジオ日本でソロのラジオをやっているが、このガチギレっぷりを聞いたスタッフが目をつけて番組が決まったというから、まさに自分の力で仕事を勝ち取ったのである。
すごいなー。

同じ回で、佐藤さんが学生時代合唱をやっていた、という話になり、深夜の2時に「親知らず、子知らず」という超絶暗い曲をオンエアしたことがあった。
ぼくも学生時代合唱をやっていたので、この選曲は笑った。



他に面白かったのが、秋元康氏が若手メンバーを呼んで行った回で録音ゲストとして出た回だ。
いわば上司がチェックしている回であり、重要な仕事だと思うのだが、自分たちのトークにウケ過ぎて、「ウクククク・・・」と笑いが止まらなくなる。
収録時間の半分ぐらい笑っているのである。
秋元氏が「このふたりは面白い。どこが面白いかわかるか」と言っていて、聞いているこっちもうれしかった。

リスナーのハガキ読みもうまくて、ハガキ職人は佐藤さんのことをイジって(けなして)来ることが多いのだが「うるせー」「黙れ」とツッコミを入れるのが、生半のお笑い芸人よりもはるかに鋭い。

アイドルとしてはあまり厚遇されなくて、総選挙で8位になったのにMV(ミュージックビデオ)に1秒しか映らなかったりした。
このとき廊下に飛び出したのを高橋みなみさんが追いかけて「文句があるならちゃんと言わないと分からないだろ」と言ってなぐさめたという話がある。
まったく同じ境遇からトップに勝ち上がって来たのが指原莉乃さんだが、佐藤さんは指原さんとは違ってそういうエピソードを勝機に繋げられなかった。

なんと言っても印象に残っているのは、元カシオペアの向谷実さんがレコーディング風景を生配信するプロジェクト「レコーディング可視化」で、「もうこんなじかん」という曲を歌うユニットに、倉持明日香さん、中村麻里子さんと一緒に参加したことである。
向谷さん(メンバーに付けられたあだ名がミノルンゼット)は「ぼくがやってる音楽はフュージョンという、シックスティーンビートの裏打ちを基本とする音楽」と言っていて(狭いフュージョンの定義だな!)、その言葉通りバリバリフュージョンの楽器的な難曲だが、「歌うま」メンバーである3人は見事に歌いこなした。

歌録りが終わっても、生演奏の録音が全部終わるまで、真剣に見ていたのも良かった。



面白かったのが、レコーディング後のトークではじめてこの曲を聴いたときどう思った、と向谷氏に言われた佐藤さんが「高速道路の渋滞情報みたいな曲だと思いました。国道なんとか線の渋滞状況は・・・とか合わせて言って遊んでました」と言ったことだ。
そうとう失礼な発言だと思うのだが、向谷氏は「面白いなー」と言って喜んでいた。
ところが、その後、この曲のインストバージョンが本当に高速道路の渋滞情報のバックに使われたというから驚きだ。
いわゆるAKBパワーの凄まじさを感じるが、こういう面白いことがいろいろ起こるAKB現象は必ずしも悪いことではないと思う。

佐藤さんは作詞も担当した。
これがなかなか天才的な歌詞で、あまりにも出来が良いのでしょうじき秋元氏か、誰かオトナが代作したのか?とよこしまな疑いを持ったのだが、彼女のブログに歌詞があらかじめ書かれていて、そのバージョンではいわゆる「ら抜き言葉」も書かれていたので、これはやはり彼女が一生懸命自分で書いたのだろう。

テレビでは「AKBINGO!」で芸人らと一緒に「AKB検定クイズ」の回答者になったり、クイズ番組「ミラクル9」に大家志津香さんの代打として登場して、敵チームの元プロ野球選手の工藤氏と妙に馴染んでしまって「おとうさーん」と呼び掛けたりするのも面白かった。

運営から推されず、干されながらも根強い人気を持っていた佐藤さんだが、2014年にAKBを卒業し、かねてからのもう一つの夢であったアニメの声優になった。
ぼくはアニメもゲームも詳しくないので、よく分からないのだが、アニメファンから「AKB"なんかに"声優につとまるのか」と猛抗議を食らったようである。
へー。

でも、猛抗議を受けながらも声優の世界で着々と地歩を固め、ついにキャラクターボイスとしてCDをヒットさせた。
握手券がついてないCDである。
まさに努力は必ず報われるを身を持って証明した形である。
こういうのを見ると、やはり感動するし、自分も好きなことをせいいっぱい頑張ろうと思う。