またインターネットで見た世間話を題材に書くブログ。
最近「居酒屋を水だけで利用するのはアリかナシか?」というニュース記事をよく見かける。

Eau de Quezac source
居酒屋は基本的にお酒を飲みに行くところで、みんながお酒を飲んでペイする仕掛けになっている。
ジンジャーエールやウーロン茶のようなソフトドリンクもお金を取るので、お酒が飲めない人はそっちを飲んで下さいと、店側では思っている。
しかし最近では、「水(無料の水道水)をください」と言って、料理だけを食べ、あまつさえ長々と話をしているグループが増えている、という。
店としては、そんな客がいれば経営が立ち行かず、困っている、というものである。
リーマン・ショック以降急に増えだしたそうだ。

ネットを見ると、そのニュース記事を受けて、水だけの客はアリかナシか、という議論になっていて、「バカ高いソフトドリンクなんか飲んでられるか」、「ケチケチしないで水ぐらい出せ」とか、「居酒屋は『本来』酒を呑むところだから酒を頼むべき」というマナー論まで、実り多い議論が戦わされている。

そもそもぼくは、居酒屋で水を最初から出してもらえるということを知らなかった。
頼めば出してもらえるらしい。
そういえば、マクドナルドもそうである。
「ハンバーガーと水ください」と言えば、水道水と氷を例のカップに入れてくれるそうだ。
スマイルだけでなく水も0円である。

そういえば昔レストランでウェイターのバイトをしていたとき、ディナータイムは「お茶だけのお客さんはお断りして」と言っていた。
ドアのところで「お食事のみとなりますが、いかがいたしますか」と言って、料理を頼まない客は追い返していた。
たまにカップルが、ふたりでサラダ1つを頼んでいたが、たしかにそういう客は滞在時間が長い。
店長はカリカリしていたようだ。

閑話休題、水だけ居酒屋の件に戻る。
ぼくはなぜこの件で議論になるのか、分からない。
居酒屋は経営が立ち行かなくて困っているのだろう。
一方客は、禁止されていないのだから、やるに決まっている。
だったら水を有料にすればいいだけのことだろう。
イケメンの川越シェフが経営しているような、ファンシーなレストランではたいていそうである。
エヴィアンやペリエのようなボトルウォーターが500円とかで出てくる。
「かならず有料ドリンクを1品ご注文下さい」と書いていればいい。

要するに制度上の問題であるが、これをニュース記事は人間同士の対立にする。
「ずうずうしい客と、金儲け一番の居酒屋主人の対立」という話にして、ワーワー議論で盛り上がる。
おとついここに書いた老害vs.若害の話と一緒である。

「罪を悪んで人を憎まず」と言う言葉がある。
最近は「罪を忘れて人をはやしたてる」という記事が多い。
STAP細胞問題でも、東京五輪エンブレム問題でも、すぐに問題は、ニュース映えする一個人の問題になり、プライバシーが晒され、酒の肴になる。
もっとも、「罪を悪んで人を憎まず」ということわざをわざわざ作らなければならなかったということは、昔も不公正、不公平というものの構造的な問題を議論して改善しようというよりは、スケープ・ゴートを仕立ててはやして終わりにしよう、という傾向が、人間にはあるということだろう。

ネットである人がおっしゃっていたことだが、自民党の「強行採決」、ろくに議論もせずにワーワー立ち上がって、委員長席の回りにスクラムを組んだり、ああいうパフォーマンスは、法案の違憲性、民主主義にもとるかどうかと言った、本来的な議論をそらすためのものであるという。
しれっと通してしまえばいいのに、ワーワー大騒ぎすることで、国会議員個人に対する憎しみをかりたてて、冷静な議論を失わせる。
「罪を忘れて人を憎む」という性質を駆り立てることで、肝心の「罪」をうやむやにするというのだ。
それが本当なら、なるほど政権党は頭がいい。