「マイルスはこの順番に聴け」の第5回である。
今回は「マイルス・デイヴィス・アット・フィルモア」を紹介する。
曲目は以下の通り。
今回は「マイルス・デイヴィス・アット・フィルモア」を紹介する。
曲目は以下の通り。
ディスク:1
1. Wednesday Miles: Directions
2. Wednesday Miles: Bitches Brew
3. Wednesday Miles: The Mask
4. Wednesday Miles: It's About That Time
5. Wednesday Miles: Bitches Brew/ The Theme
6. Thursday Miles: Directions
7. Thursday Miles: The Mask
8. Thursday Miles: It's About That Time
ディスク:2
1. Friday Miles: It's About That Time
2. Friday Miles: I Fall In Love Too Easily
3. Friday Miles: Sanctuary
4. Friday Miles: Bitches Brew / TheTheme
5. Saturday Miles: It's About That Time
6. Saturday Miles: I Fall In Love Too Easily
7. Saturday Miles: Sanctuary
8. Saturday Miles: Bitches Brew
9. Saturday Miles: Willie Nelson/The Theme
この録音は1970年6月17、18、19、20日である。
前回紹介した「ライヴ・イヴル」/「セラー・ドア・セッションズ」よりも前の録音だ。
CD2枚にほとんど同じセットリストが4回入っている。
曲名に曜日が入っている。
これは、4回公演をテオ・マセロが短縮編集したものである。
ちなみに昔は2枚組LP(ビニール)のA、B、C、D面に同じ曲が入っていた。
前回紹介したセラー・ドアとこのフィルモアの違いについて。
キーボードがセラー・ドアではキース・ジャレット一人だったのに対し、このフィルモアではキースとチック・コリアの2人体制になっている。
あとベースがセラー・ドアではマイケル・ヘンダーソンになっていたのに対し、フィルモアではデイヴ・ホランドが弾いている。
この時期のマイルスは、プレイヤーとしては最高だったのかもしれない。
若々しく、ハツラツとしている。
また、この時代は音楽全体がはっきりしていて、ロック的で、わかりやすい。
さて、このアルバムはブートが3枚出ている。
17日の水曜日を収録した「HIGH ENERGY」と、

19日の金曜日を収録した「Complete Friday Miles」と、

20日の土曜日を収録した「Precious」だ。

なぜか木曜日がまだ出ていない。
で、編集版とブートの完全版はどっちがいいのか、という話だが、ぼくはこのフィルモアに関しては完全にブートの勝ちだと思う。
たしかに編集版は盛り上がる部分だけを収めていて聞きやすい。
でも、もうそういう段階じゃないのだ。
昔、渡辺貞夫さんが「メシ食ってもフロ入ってもジャズだ」と言っていたが(この話は前にも書いたが)マイルスにハマったら、マイルスのやることはすべて聴きたくなっている。
飯食ってるところも、風呂入ってるところも、全部見たい。
前にも書いたけど変な意味じゃないよ。
演奏が盛り上がらないところも、失敗してやり直すところも、疲れてか、入るタイミングを伺ってか、しばらくマイルスが出てこないところも、全部聴きたいのだ。
こうなってくると編集版はイヤだ。
特にライブ版は、である。
「今急に音が変わったけど、この間に何があったの? 何なにナニ?」
とテオ・マセロを問い詰めたくなっているのである。
編集版は編集版で買うけど、未編集版と両方聴きたい。
聴く権利がある。
そう思うのである。
もしコロンビアが正規版を出したら、4枚組4万円であっても、買う。
即買いだ。
でも、売ってくれない。
だから迷わずブートを買う。
ブートがあるなら、聴かずに済ませるわけにはいかないのだ。
だから、ブートはアーティストの権利を侵害するものだという言い方は、実情に合っていない。
さて、土曜日の「Precious」は、未編集ノーカット版というのとまたちょっと違う。
記事の冒頭で紹介した公式版とサウンドが全然違うのだ。
パーカッションのアイアート・モレイラとマイルスのトランペットだけが異常に大きく入っていて、他のメンバーの音がよく聞こえない。
たぶんそういうラインの録音をミックスしないで出したんだと思う。
エコーがまったく掛かっていず、デッドな音である。
変なミックスであって、たぶんこの音がこのまま公式盤で出ることはないのではないか。
で、これが、イイ!
この演奏でアイアートはクイーカという、例のタイコの中に棒が立っていて布で擦る「ウククク・・・クイーククク・・・」を多用している。
「できるかな」のゴン太クンの声で有名な楽器である。
この音がマイルスの「ブブブブ・・・」というトランペットの音に似ていて、非常によく絡む。
トランペットとクイーカが会話しているような部分もあって、たまらなく楽しい。
そして、アイアートがバンドを鼓舞するように、「イエー!」とか「フー!」とか掛け声を発する。
これはセラー・ドアでも聴こえるが、これがめちゃめちゃバッチリ聴こえる。
マイルスのライブを、袖で直接聴いているような感覚になる。
これは、中山氏も書いているが、料理というより素材である。
高級中華飯店に行って、厨房に乗り込み、大将に頼み込んで切る前のチャーシューに被りつくようなものである。
そういうことをしたがる客は、いい客ではないだろう。
音楽が好きで聴くというよりも、また別のヤジウマ根性かもしれない。
でも楽しい。
どうしようもなく楽しいのである。
このブートは必聴だ。



1. Wednesday Miles: Directions
2. Wednesday Miles: Bitches Brew
3. Wednesday Miles: The Mask
4. Wednesday Miles: It's About That Time
5. Wednesday Miles: Bitches Brew/ The Theme
6. Thursday Miles: Directions
7. Thursday Miles: The Mask
8. Thursday Miles: It's About That Time
ディスク:2
1. Friday Miles: It's About That Time
2. Friday Miles: I Fall In Love Too Easily
3. Friday Miles: Sanctuary
4. Friday Miles: Bitches Brew / TheTheme
5. Saturday Miles: It's About That Time
6. Saturday Miles: I Fall In Love Too Easily
7. Saturday Miles: Sanctuary
8. Saturday Miles: Bitches Brew
9. Saturday Miles: Willie Nelson/The Theme
この録音は1970年6月17、18、19、20日である。
前回紹介した「ライヴ・イヴル」/「セラー・ドア・セッションズ」よりも前の録音だ。
CD2枚にほとんど同じセットリストが4回入っている。
曲名に曜日が入っている。
これは、4回公演をテオ・マセロが短縮編集したものである。
ちなみに昔は2枚組LP(ビニール)のA、B、C、D面に同じ曲が入っていた。
前回紹介したセラー・ドアとこのフィルモアの違いについて。
キーボードがセラー・ドアではキース・ジャレット一人だったのに対し、このフィルモアではキースとチック・コリアの2人体制になっている。
あとベースがセラー・ドアではマイケル・ヘンダーソンになっていたのに対し、フィルモアではデイヴ・ホランドが弾いている。
この時期のマイルスは、プレイヤーとしては最高だったのかもしれない。
若々しく、ハツラツとしている。
また、この時代は音楽全体がはっきりしていて、ロック的で、わかりやすい。
さて、このアルバムはブートが3枚出ている。
17日の水曜日を収録した「HIGH ENERGY」と、

19日の金曜日を収録した「Complete Friday Miles」と、

20日の土曜日を収録した「Precious」だ。

なぜか木曜日がまだ出ていない。
で、編集版とブートの完全版はどっちがいいのか、という話だが、ぼくはこのフィルモアに関しては完全にブートの勝ちだと思う。
たしかに編集版は盛り上がる部分だけを収めていて聞きやすい。
でも、もうそういう段階じゃないのだ。
昔、渡辺貞夫さんが「メシ食ってもフロ入ってもジャズだ」と言っていたが(この話は前にも書いたが)マイルスにハマったら、マイルスのやることはすべて聴きたくなっている。
飯食ってるところも、風呂入ってるところも、全部見たい。
前にも書いたけど変な意味じゃないよ。
演奏が盛り上がらないところも、失敗してやり直すところも、疲れてか、入るタイミングを伺ってか、しばらくマイルスが出てこないところも、全部聴きたいのだ。
こうなってくると編集版はイヤだ。
特にライブ版は、である。
「今急に音が変わったけど、この間に何があったの? 何なにナニ?」
とテオ・マセロを問い詰めたくなっているのである。
編集版は編集版で買うけど、未編集版と両方聴きたい。
聴く権利がある。
そう思うのである。
もしコロンビアが正規版を出したら、4枚組4万円であっても、買う。
即買いだ。
でも、売ってくれない。
だから迷わずブートを買う。
ブートがあるなら、聴かずに済ませるわけにはいかないのだ。
だから、ブートはアーティストの権利を侵害するものだという言い方は、実情に合っていない。
さて、土曜日の「Precious」は、未編集ノーカット版というのとまたちょっと違う。
記事の冒頭で紹介した公式版とサウンドが全然違うのだ。
パーカッションのアイアート・モレイラとマイルスのトランペットだけが異常に大きく入っていて、他のメンバーの音がよく聞こえない。
たぶんそういうラインの録音をミックスしないで出したんだと思う。
エコーがまったく掛かっていず、デッドな音である。
変なミックスであって、たぶんこの音がこのまま公式盤で出ることはないのではないか。
で、これが、イイ!
この演奏でアイアートはクイーカという、例のタイコの中に棒が立っていて布で擦る「ウククク・・・クイーククク・・・」を多用している。
「できるかな」のゴン太クンの声で有名な楽器である。
この音がマイルスの「ブブブブ・・・」というトランペットの音に似ていて、非常によく絡む。
トランペットとクイーカが会話しているような部分もあって、たまらなく楽しい。
そして、アイアートがバンドを鼓舞するように、「イエー!」とか「フー!」とか掛け声を発する。
これはセラー・ドアでも聴こえるが、これがめちゃめちゃバッチリ聴こえる。
マイルスのライブを、袖で直接聴いているような感覚になる。
これは、中山氏も書いているが、料理というより素材である。
高級中華飯店に行って、厨房に乗り込み、大将に頼み込んで切る前のチャーシューに被りつくようなものである。
そういうことをしたがる客は、いい客ではないだろう。
音楽が好きで聴くというよりも、また別のヤジウマ根性かもしれない。
でも楽しい。
どうしようもなく楽しいのである。
このブートは必聴だ。


