SIMとはなにか

携帯電話にはSIM(シム)という一種のICチップが取り付けられている。
iPhoneの場合、横ちょに小さな穴が開いていて、iPhoneについてくる専用の針か、伸ばしたペーパークリップを突っ込むと小さなトレイがシュコ、と出てきて、それに載っている。
小指の爪ほどの大きさだ。

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ROM(ロム、Read Only Memory、読み出し専用メモリー)であって、携帯会社との契約ごとに個別番号が入っている。
ROMは名の通りユーザーによる書き換えが不可能である。
携帯会社はショップにROM焼き機というものを備えていて、携帯を売る時にSIMに個別番号を焼き込む。

au、docomo、SBM(SoftBank Mobile)などの各携帯通信業者(キャリアー)から売られているiPhoneなどの携帯端末は、SIMロックと呼ばれる仕様になっている。
これは、auで買ったiPhoneは、auで契約したSIMを差さないと動かない、という仕様である。
街のSBMショップで極端に安く買った端末をdocomoに契約変更して使う、などということを不可能にしている。
一方で、AppleからはSIMロックフリーの端末も出ていて、この端末にはどのキャリアーのSIMでも差すことが出来る。
SIMフリーと呼ぶこともある(SIM freeだとSIMを差さないでもいいような語感だから不正確だが)。
iPadは基本的にSIMフリーだ。
iPhoneは一時SIMフリーのを売っていたが、最近買えなくなった。
急激な円安に対応できなくなったから、という観測がある。
英国や香港などでSIMフリーを買う剛の者もいるが高い。
円安の今だとなおさら高い。

そうでなくてもAppleから出ているSIMフリーモデルは、一般にキャリアーから出ているSIMロックモデルよりもずいぶん高い。
というか、SIMロックモデルは各キャリアーがシェアを伸ばし、ユーザーを囲い込むために身を削って安くしている。
とうぜん単純に値引きしていたのでは採算が合わないから、通話通信料を釣り上げている。
買い替えをしたり、キャリアーを変更したりする人に媚びを売るために、一般の使用者からお金を巻き上げる手法であって、あまり評判が良くない。
一方SIMフリーモデルは最初の端末料金こそ高いが、IIJMIOやイオンSIMなどのいわゆる「格安SIM」が使えば安く使える可能性がある。

3大キャリアーのSIMロックモデルであっても、元キャリアーの契約を解約料を払って解除さえすれば「格安SIM」を使うことも出来る。
また、二重に料金を払って両方使うことも可能だが、そんな無駄なことをする必要はないだろう。
auはdocomo/SBMと方式が違う。
IIJMIOや日本通信b-mobileなどの格安SIMはdocomo/SBMの携帯にしか差せない(物理的には差せるが使えない)。

au互換回線のものは最近mineo、UQ-Mobileというのが出てきたが、これはiOS8以降では使えないので注意が必要だ。
auを含む最近の携帯電話は、LTEと言われる高速回線と、3Gと言われる昔の低速回線を両方サポートしている。
iPhone/iPadのOSであるiOSのバージョン8は、LTEと3Gを細かく行き来することでベストエフォート(最善を尽くす)という、可能な限り高速で、でも場合によっては速度を落としても切れないようにする、という努力をしている。
ところが、mineoやUQ-MobileはLTE回線しか使えないので、iOS8以降では使えないという話だ。
mineoはiOS7以前から商売を展開していて、この頃はiPhone/iPadでも使えた。
日本ではものすごくiPhoneの人気があるので、auを解約してmineoを導入した人が多かったが、これらがすべてiOS8にバージョンアップした瞬間に使えなくなったので悲惨である。
mineo側は解約したら違約金を徴収すると言っている。
注意が必要だ。

携帯料金は3大キャリアーの料金プランが複雑過ぎるので簡単に計算出来ないが、「簡単に計算出来ない料金プラン」なんかに振り回されるのに辟易していたので、iPhone 6 Plusにおいてはぼくは発売日にSIMフリーモデルを買った。
SIMフリーモデルは転売するとき高くなると言われているので、楽しみだ。

SIMの種類

SIMは昔の自動車電話時代には、クレジットカードほどの大きさだった。
今も、携帯会社と契約するときには、クレジットカードほどの大きさのプラスチックの板にはめ込んだ形で売ってくる。
しばらくすると携帯が小型化し、mini SIMという25mm×15mmほどの大きさになった。iPhone 3GSまではこの形。
そのうちさらに小型化してmicro SIMというのになった。大きさは15mm×12mmである。iPhone 4Sまではこの形。
そしてさらに小型化して、現在のnano SIMというのになった。大きさは12.3mm×8.8mmである。
miniからmicroぐらいまでは、サイズダウンによって装置の小型化を計るという意味があったかもしれないが、microからnanoになると単なる嫌がらせという感じがしなくもない。
つまり、ユーザーがあまり自由に昔のSIMで新しい機種を試したりして欲しくない(新しい契約をして欲しい、想定外の使い方をしてサポートの手間を増やして欲しくない)というメーカー側の意向ではないだろうか。
なお、このSIMは面白くて、もともとのSIMカードも、mini SIMも、microもnanoも、チップとしては同じものなのである。

GSM SIM card evolution

つまり、金色の接点が露出している部分だけが必要最小限の部分であって、それ以外の部分は必要ない。
だから、iPhone 4Sに差さっていたSIMをiPhone 5Sで使いたければ、SIMを切れば良い。
正確にチップの部分を認識されるように切らなければならず、ハサミを使っても上手にやれば良いが、失敗するとオシャカなので、SIMカッターという爪切りのような専門の工具も売っている。

iPhone 3GSのmini SIMをiPhone 4で使うためにmicro化するSIMカッターも存在した。
ただ、iPhone 5S以降ではLTE契約のないiPhone 4以前のSIMでは使えないという話もあっていろいろ複雑である。
逆に新しい小さいSIMを古いiPhoneで使うためのトレイ(SIMアダプター)というのもある。
nano SIMは究極の削れっぷりであって、これ以上削るのは無理だろう。
まあ新しい規格が制定されるかもしれないが。

SIMとアクティベーションとダミーSIM

上記の通りSIMというのは携帯キャリアーとの契約上存在する個体番号を載せた存在であるから、キャリアーとの契約を解除してWiFiモデルとしてのみ使うのであれば、不要と思える。
WiFi環境だけでも接続できれば便利だし、WiFiモバイルルーターと併用しても良い。
ところが、実際にはこの場合もSIMが必要ということが分かった。

ぼくはiPhoneの他に、au版のiPad miniを使っているのだが(どんだけApple好きだよ)、去年の12月に2年縛りの年季が明けたので、解約し、その後WiFiモデルとして使っていた。
auのSIMを返せとも言われなかったので、そのまま差して使っていたのだが、先週ぐらいから?(3月から?)「SIMがありません」という表示が出るようになった。

まあ表示ぐらい出しておけばいいのだが、問題があって、iOSのアップデートが出来ないのだ。
果たして、iOS 8.2へのアップデートをしろと言ってきた。
困った。

そこで、Amazonに出店している業者から、ダミーSIMというものを買った。400円ぐらい。

これを差すと、見事にアンテナピクトのところの表示が「SIMなし」から「圏外」に変わった。
すかさずiOSのアップデートをすると、無事に終わった。

これはどうだろうか。
携帯会社と契約していないiPadを、WiFiモデルとして使い続けるのは消費者の自由のはずだ。
auに2年がかりで端末料金を払っていれば、なおのことである。
しかるに、SIMがないとアクティベートできなくなるのである。なぜかは分からない。前の契約の時のSIMを返さずに持っていればいいのかと思っていたが、そのうち使えなくなるとは知らなかった。

まあ、SIMは法律上携帯会社のものを貸与している扱いだから(だからハサミで切るのも本当は良くない)文句は言えないかもしれない。
たぶんiPadのがある日急に使えなくなったのは、ぼくの旧・携帯契約スロットをauが他の顧客に割り当てたからでは?ないか。
しかし、AppleがアクティベーションをするのにSIMを必要とさせるのはよく分からん。
これ、携帯各社の都合のようである。
AppleはApple SIMというのをiPhoneに付けて売りたいのだが、携帯会社(キャリアー)は自らの「土管化」を避けるためにAppleの意向に反対だそうである。
端末を売ったり、端末にロックを掛けてみたり、コンテンツやポイント、ビッグデータで稼ぎたいのであろう。
そんなことをしても文化的には不毛だと思う。

DVDや地デジのコピープロテクトに始まり、最近はテクノロジーがユーザーの役に立つものではなく、ユーザーをしばり、企業の役に立つためにもっぱら使われている。
技術が進めば進むほどユーザーは不便を強いられる。変な感じだ。
まあ、400円でダミーSIMが買えて良かった。

SIMフリーとアクティベーション

なお、ぼくはSIMフリーのiPhone 6 Plusを買ったが、Appleから端末が届いてもIIJMIOからSIMが届かなかった。
IIJMIOのSIMビックカメラでSIMを買えば、その場でROMを焼いてくれるので受け取れたのだが、ネットで申し込むと送ってくるのに数日掛かる。
ぼくの場合IIJ側に不手際があって、一週間以上待たされた。

それで、iPhone 6 Plusを使いたいので、まだ契約が残っていたiPhone 5のau SIMを差した。
何の問題もなくアクティベーションでき、使用できたのだが、以下のような噂が伝わってきた。

 ・SIMフリーの機体であっても、auのSIMを差した瞬間に、auロックが掛かるのではないか。

 ・iPhone 5用のauのSIMを、iPhone 6 Plusで使ったら、莫大な料金を請求されるのではないか。

泡を食ってAppleとauとIIJMIOに電話してみたが、どれも「はっきりとはわからない」ということだった。
わからんのかい!
(この時にIIJMIOは発送の不備が発覚したので、結果的に良かった。)

結果的に言えば、上の2つはガセであった。
SIMフリーの機体は、auのSIMを使ってアクティベーションしても、IIJMIOで使えたし(再アクティベーションも必要でなかった)、莫大な料金も掛からなかった。
ただし、メーカーもキャリアーもはっきりとはわからないことであって、今後がどうなるか分からない。
いちいちめんどうなことである。

ファクトリーアンロック?

SIMロックは、機器内部の機能で行っているものが多いが、iPhoneの場合AppleのサーバーがIMEI(個体番号)をキーにして検索し、この機体はdocomoのSIMロック、この機体はau、この機体はフリーという風に判断しているらしい。
で、アメリカではプレミアムな顧客にファクトリーアンロックサービスというものを適用して、iPhoneをSIMフリー化しているらしい。
で、このファクトリーアンロックというのを日本からでも金を出せばやってくれるサービスが出てきているが、いかんせん料金が2万円前後とチト高い。

キャリア版iPhone6をSIMフリーにできるファクトリーアンロックをやってみた:週間リスキー - 週アスPLUS

とまあSIMウンチクを傾けてみた。
ややこしいでしょう。
こんなこと覚えていても全然何の自慢にもならない。