2月2日にドクターから、体の痒みは大したことじゃない、もう退院しましょうと言われた。
で、既往症を診てもらっているクリニックに提出してくださいといって、封緘された大きな茶封筒をもらった。
実際の退院は翌日の2月3日になるそうだ。

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病院からもらった「入院のしおり」の中に、退院は午前11時に出来るようにご連絡ください、と書いてある。
それに合わせて清掃やベッドメークや、部屋の手配を一斉に行うのだろう。
婦長さん(?)が来て、退院許可みたいなペーパーを持ってきたので、サインをしながら「明日2月3日、11時の退院ということですね」というと「そうです」とのこと。
姉に電話し、翌朝11時に来てもらうことにした。

いろいろ感慨に耽った。
入院していてツライこともあったけど、侘びしい一人暮らしを囲っているので、毎日美しいナースさんと話ができて楽しかった。
俺ナースさんがすごく好きだなあ。
単に若い女性が献身的に介護してくれて好き、というのではなく、自立した職業人として使命感に燃えていて、専門的な話をエピソードを交えて面白おかしくしてくれたのでためになったし、俺もがんばるぞと思ったのである。
そういえば男性のナースも2人いたけどどっちもいい人だった。

夜は強制消灯、朝は強制点灯で、三度三度一汁三菜のバランスの取れた食事をして、ずいぶん健康になった。
まあ、しょっちゅうこんな暮らしをしろと言われたら御免こうむるけど、たまにだと、楽しい。
変わった体験ができたからである。

その後クラークさんが来て、レセプト(請求書の明細)を持ってきた。
注射1本いくら、検査1回いくら、紙おむつ1回いくら、という明細行がびっしり書いている。
合計金額が8万円超と書いているので瞠目した。
高額医療費制度で5万円のはずでは?
するとクラークさんが、想定問答のうちらしく、2月にギリ掛かったので惜しかった、という説明をした。
高額医療費制度は月あたりの最大金額を定めるものなので、2週間で仮に10万円掛かった場合は最大2倍の開きがある。
でも、ERでの措置や注射、検査といったヘビーな措置は前半に集中していたので、それでもかなり得した計算になる。
高額医療費制度なんて病院はいやがると思っていたが、ここは(他もそうかもしれないが)向こうから積極的に薦めてくれて助かった。

翌朝、2月3日の9時頃、姉が洗濯してくれたジャージと、便利屋さんが持ってきてくれたダウンウェアを着て、1階の事務受付に並んだ。
世間の人と行列を作っていると、途端にクラクラした。
立ちくらみだ。
2週間、保護された環境から外界に出ることへの緊張とダルさを一気に感じたのだ。

結局、30分も並んでようやく自分の番になると、そこは外来患者が並ぶ場所で(なんやそれ)事務室に改めて誘導される。
そこはソファがあったし、10分ほども待っていると名前を呼ばれた。
昨日クラークさんにクレジットカードが使えると聞いていたが、実際に使えて良かった。

その部屋の入口にテレビカードの精算機があった。
カードを突っ込むとチャリンチャリン、と100円玉が戻ってくる。

病室に戻り、荷造りをして、姉を待っていた。
年配のナースさんがやってきて、部屋に忘れ物がないか慎重に確認した。
ほどなく姉がやってきたので、ナースさんに挨拶して部屋を出た。
一瞬ナースステーションに寄って、超かわいいNさんや、超美人のMさんに挨拶して来ようかと思ったけど、いないかもしれないし、忙しいかもしれないし、なんとなく馬鹿っぽいので思いとどまって、そのままエレベーターに載った。

最初は救急車の中でモメたりしたけど、その結果この病院にたどり着いて本当にラッキーだった。
完璧に症状は収まったし、胃と大腸の検査も出来たし、1週間断食して、1週間病院食で、早寝早起きしたので体のオーバーホールが完璧に出来た。
実際、メンタルな面が大きいと思うが、一皮むけたというか、体調が入院前より全然良くなった。
天の配剤というか、蓄積された疲労やいろいろ鬱積されていたストレスを病気と入院が払拭してくれた気がする。
たまに入院するのも悪くない。
まあ、軽症だったから言えることだけど。

運が良くて、ほどなく川崎駅への100円バスが来た。
そこで初めてこの病院と、川崎駅との相対的な位置関係を知った。
病院に来るときは救急車でぐるぐる連れ回されたし、ぼくもお尻からダラダラ血を流して意識が混濁していたので、この病院がどこにあるのか、まったく分からなかったのだ。
川崎から家まで、電車で30分ほどだった。
最寄り駅のビルで姉とカレーを食べた。
病院食も美味しかったが、やっぱり娑婆のカレーは味が濃くておいしかった。

姉と別れ、ようやく家についた。
大家さんが血まみれの床を拭く時と、便利屋さんがパソコンを取ってくれた時に適当に片付けてくれたらしく、部屋が前にいたときよりキレイになっている。
最高の再スタートがきれそうだ。
気力が横溢してきた。