糖尿病と並んで、ぼくには睡眠時無呼吸症候群(Sleeping Apnea Syndrome、略してSAS)という既往症があった。
自分ながらいろいろ病気に掛かってるなあ。
成人病のデパートだ。
ただ、SASが糖尿病の原因になっているのではないかという話はある。

CPAP
SASはCPAP(シーパップと呼ばれる)という器具を使って治療する。
一種の人工呼吸器で、本体にパイプで鼻につけるマスクを接続し、どんどん空気を送り込むことで強制的に呼吸をさせる。
SASとCPAPの関係は、近眼とメガネの関係と一緒である。
CPAPを使うとSASの症状、つまり日中の猛烈な眠気や、頭痛などの症状を寛解させることが出来る。
一方、根治してくれるわけではない。
CPAPを使わなくなると元通り症状が発現する。

鼻に空気を出すマスクなんか付けて寝るのは鬱陶しい。
ぼくはこらえ性がない方で、付けていると鼻がむず痒くなり、そのうち外してしまう。
最近はCPAPにも飽きてしまって、無職のプーさんだから昼間眠くなったら昼寝すればいいやぐらいに思って、しばらく使うのをサボっていた。

しかし、SASの既往があることを話すと、ナースさんがCPAPを家から持ってきてもらって使うことをしつこく奨励する。
たぶんいろいろな症状の原因を潰して、病状をクリアに把握したいのだろうと思う。
それは科学的な態度で、理解できる。

ただ、ぼくはいろいろ考えて気が進まなかった。
まず、汚い部屋(自分史上最高にキレイだったんだけど)に人を入れて、機械なんか取ってきてもらうのは気が引けた。
次に、どうせ付けてもすぐに外してしまうし、外すと主がなくなった機械から空気が噴出して轟々音がするので、人に迷惑をかけると思った。
個室だからいいようなものだが、その時はウィルス性疾患の疑いが晴れ次第大部屋に移すような話だった。
しかしナースさんは、患者さんでつけてる人いっぱいいるから大丈夫ですよという。
あと、最近CPAPをサボっているので、いまさら入院中に着けるのもおっくうだと思った。
あと、CPAPを付けると眠れないので眠剤(睡眠導入剤)を使っていて、そうでなくても病院は寝にくいのに、眠剤を飲まないと絶対眠れないと思ったのだ。
それ以前に、胃液のドレン(鼻チューブ。マーゲンチューブ)を抜かないと、絶対に装用は不可能だ。

でもそのうち、鼻チューブが抜けて、リクライニングベッドを調整して体にフィットさせることを覚え、普通食が始まった。
で、点滴を抜去され、普段家で飲んでいる薬を飲んでもいいですよと言われた。
夜の眠剤も飲んでもいいということだ。

この時になって、ぼくはCPAPを使ってみたいと思った。
実は、入院してから日夜頭痛に悩まされていたのだ。
特に夜がひどい。

頭痛がしますとナースやドクターに聞いてみる。
額の奥が全体的に痛む、ずきずき脈動する、我慢できないほどじゃない、と告げると、我慢できないほどじゃないならしばらく我慢して様子をみましょうと言われる。
そりゃそうか。
でもぼくには思い当たる節が1つあって、それはSASの症状で頭痛が出ているのではないかということだ。

SASの代表的な症状が頭痛である。
血液中のCO2濃度が上がり、O2濃度が下がる。
すると頭痛がする。
ヴェランダに出て深呼吸したり、ちょっとその辺を散歩したりすると治ることもある。

入院中のバイタル(血圧、体温など)の検査の時に、血中酸素飽和度というチェック項目があった。
指先にちょっとしたクリップ状の機器を挟むと、ピーと音が出て液晶に数値が出る。
96とか、97とかである。
「この値どうですか」とナースに訊くと、普通98か99だけど、深澤さんはSASだから96でも不思議はない、とのことだった。
「これ頭痛に関係ありますか」と訊くと、「あるでしょう」とのことだった。

ということで、CPAPを取り寄せる決意を固めた。

ちなみにぼくはSASの件で日本の医師に掛かっていない。
最初は掛かっていたが、1ヶ月に1回出頭して、1分そこそこの診察をして、月に5000円払ってCPAPをレンタルするのが納得行かず、通うのをやめてしまった。
ではCPAPをどうしていたかというと、アメリカの通販から個人輸入して使っていた。
おりしも民主党政権の円高時代で、非常に安かった。
この件に興味がある方は、本ブログの連載「睡眠時無呼吸症候群とぼく」をお読みください。
ただ一介の市井の患者が病気と病院についてブータレているだけなので、いわゆるひとつの自己責任でお読みくださるようお願いします。

ということで、そのCPAPを自宅から持ってきてもらうことにした。
最初は大家さんに、宅急便で送ってもらえば早いかなと思ったが、高価な医療機器なんか外すのは気が進まないようだ。
そりゃそうか。

また、ここでびっくりなのだが、入院していた病院は宅急便を受け付けないとのことだった。
こりゃあびっくりだ。
ぼくは父の晩年に狂ったようにAmazonで差し入れしていたから、たぶん病院によって事情が違うんだと思う。
宅急便の受付が出来るできないで、ホスピタリティに大きく差ができると思うので、これだけの大病院であれば検討して欲しいものだ。
まあ変な民間薬とか送ってこられても困るし、取り違えがあると一大事だし、いろいろ難しい問題はあるだろう。

ということで、昔から部屋を片付けてくれてる便利屋さんを頼ることにした。

もう10年ほどの付き合いなので、社長の携帯に電話して「いま入院中で、例のおいらの部屋から、取ってきてほしいものがあるんです。明日朝、ぼくのアパートに行って、大家さんに入れてもらって、そこからぼくの携帯に電話してもらえますか」というひどい頼み方だったが、オッケーということだった。