★本ブログ、来週、7月28日の週はお休みします。

今日(2014年7月21日)、東中野「芝居砦 満天星」にて、月蝕歌劇団実験室公演「白夜月蝕の少女航海紀」を見た。
昨日と、今日と、昼夜2回ずつしかないので、今日が千秋楽である。

同じ劇団で、昼の部と夜の部でガラッと違うので、昼夜通しで見た。
間の「詩劇ライブ」という女優さんの歌謡ショーも見た。
つくづくナイスお客さんである。

今回は特に場所が面白かった。
東中野というか、下落合というか、駅的には大江戸線の中井という駅が最寄なのだが、そこにある「新宿梁山泊アトリエ 芝居砦満天星」という劇場。

ていうか劇場というか・・・。

フツーのマンションというか、昭和の団地の地下2階にある。

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文字通りアングラだ!
定員は50人ぐらい?詰め込めばもっと?入るぐらいの空間である。
中央に柱があって、大きな木のテーブルがある。
奥に(舞台になった空間の背後に)バーカウンターがある。
という場所である。

昔のアングラ芝居は、いまほど小劇場というものがなかったので、喫茶店などで上演したということである。
今日の演目は1974年に高取氏が書いた処女作だが、これももともと喫茶店で上演することを目的に書かれたそうだ。

本当に、フツーの市井の人が住んでいる住居の地下でやるので、地域の住民のみなさんと俺達オタクが交差して迷惑にならないのかなーと思っていたが、けっきょく住民の方とはついに出食わさなかった。
ちなみに墓場が隣接していて、大きなお寺もある。

最初にチケットを買ってから、開場前の並び直しの間に、間があったので、食べ物屋を探した。
結局東中野の駅の方のお蕎麦屋さんに行った。
これが大失敗で、戻ったのが開場後になってしまった。
それでもフツーの小劇場の場合は、日本人はシャイで最前列を開けているので(他の国の人がどうか知らないが)、しれっとそこに陣取ればいいのだが、今回は狭いし角度的に酷しい席も多いので、見やすい席は早々に埋まってしまっていた。
結局昼の部はかなり後ろの方から見ることになった。

舞台となるバーカウンターに俳優さんたちが陣取っていて、おなじみの生写真が当たるおみくじの他に、今回はドリンクも売っていた。
バーを舞台にした演劇で、バーの従業員に扮する俳優さんが、上演前にドリンクを売ってくれる趣向である。
楽しい!
月蝕というと、正直、いい意味で、夜店的というか、文化祭的なところがあって、それが楽しいのだが、今回は特にそれが横溢していた。
結局ビールをもらってちびちび飲みながら見た。
超楽しかった。

内容は、バーを舞台にして、そこに出入りする芸能界志望の少女、悪徳教師、テロリストの会話を描いたものである。
1970年代の政治の季節に書かれた演劇であって、政治と青春と暴力がないまぜになっている。

ところが、現実の日本の、げんざい2014年も、また別の意味で政治の季節であって、ここに出てくるアイドル志望の少女も、悪徳教師も、テロリストも、改めて生々しさを持っている。

ぼくはいままで、60年安保、70年安保の政治の季節を、レトロな懐かしさと、ある種の笑いを持ってみていたが、実際にここに来て自分が政治の季節に放り込まれてみると、政治の季節とはこういうものだったのかという、不安と、恐怖心を持っている。
その時代にまさに照準を合わせて、高取氏が70年代に書いた芝居を、いまどきの時事ネタを端々に織り込みながら、このまま日本が恐怖政治に進んでしまったらというポリティカルフィクションを描いている。
まさに観劇でありながら目撃という感じである。

恐怖政治に手を貸す人も、単に愚かで強権的な人として描かれているのではなく、ぼくたち恐怖や欲望に弱い人間がうっかりするとそちら側に転んでしまうものとして描かれている。
また、テロリストが、圧制者の暴力に抗うために、結局は暴力に頼ってしまうことの矛盾も描かれていて、単純な反体制の物語ではない。

夜の部はさらに満員で、舞台の前の方に座布団を敷いて席を作り、後ろには立ち見の客も並んでいたが、ぼくは昼の部で学んでいたので、前の方で見られて良かった。
ぎゅう詰めで湯気が立ち昇るような状況で、1970年代のアングラの世界に、文字通りタイムスリップしたような体験が得られた。
タイムスリップとは、ただ懐かしい感覚を得られるものではない。
本当に時計が逆回りしたら、懐かしいだけでは済まないのである。

若い美しい女優さんが大勢出て、細かい笑いもつめ込まれていて楽しいのは相変わらず。
看板女優の倉敷あみさんが、昼と夜と別の役を、生々しい眼帯をして演じていたのが印象に残った。
終演後にお話をする機会があったので聞いてみると、役作りではなく実際に目病みになってしまって、マジ眼帯だったそうだ。
へー!
これも虚実相半ばする演劇の世界を象徴しているようなハプニングで、見ることが出来てよかった。
今回推しメンの柴奏花さんも、ダブったセーラー服の女子高生という絶妙な役で、コミカルな演技で良かった。

なお、劇中でも宣伝が入っていたが、げんざい練馬区で「あしたのジョーの時代展」というのが開かれていて、8月9日にはちばてつや氏を高取氏がインタビューする企画があるそうだ。
これは見たい!

あしたのジョー、の時代展:練馬区公式ホームページ