今日、南阿佐ケ谷「ひつじ座」に、おなじみ月蝕歌劇団を見に行った。
月蝕歌劇団公式ホームページ
今回は高取氏のオリジナル脚本による夢野久作原作『ドグラ・マグラ』の再演だ。
夢野久作という名前はものすごく懐かしい。
ぼくが中学生の頃、角川文庫で彼の作品が集中的に刊行された。
装画が、俳優の米倉斉加年(よねくらまさかね)氏によるものだった。
月蝕歌劇団公式ホームページ
今回は高取氏のオリジナル脚本による夢野久作原作『ドグラ・マグラ』の再演だ。
夢野久作という名前はものすごく懐かしい。
ぼくが中学生の頃、角川文庫で彼の作品が集中的に刊行された。
装画が、俳優の米倉斉加年(よねくらまさかね)氏によるものだった。
ちなみに豆知識だが、夢野久作(ゆめの・きゅうさく)というのは彼が生まれ育った筑豊地区の昔の方言で「夢のようなことをいつも言っている呆けた男」というほどの意味だそうだ。
彼が処女作の「あやかしの太鼓」を母親に見せると、「なんやら夢野久作が書いたような小説じゃねえ」と言われたのでそのままペンネームにした、というような話だった気がする。
『ドグラ・マグラ』は中井英夫『虚無への供物』、小栗虫太郎『黒死館殺人事件』と並んで日本三大奇書と言われているが、日本人が一番読破したことがない小説のひとつではないだろうか。
時間的にも、記述的にも複雑な入れ子構造になっていて、途中でどういうわけか「精神病院がいかにひどい場所か」を詠んだ♪スカラカ・チャカポコ・チャカポコ・・・という「阿呆陀羅経」が何十ページも続く。
何の本を読んでいたのかわからなくなってくる。
この小説は登場人物の気が狂っているとか、読むと読者の気が狂うとかいう話だけど、作者が一番気が狂っているんじゃないか、という気がしてくる。
でも阿呆陀羅経の部分を読み飛ばすと、がぜん探偵小説としてのギアが入って、ぐんぐん話が進んで、いい感じで盛り上がって終わるので、ぜひご一読をお勧めする。
ちなみに最近ネットで知ったのだが、夢野久作は本作の執筆のために九州帝国大学を実際に取材しており、当時の九大精神科は結構な怪事件が連続してあったそうなので、この気が狂った小説が実はそこそこ現実に題材を取っているらしいというのも、興味深い話である。
九州大学病院 精神科 神経科 ドグラマグラと九大精神科
月蝕版ドグラ・マグラは、そういうすごい小説であって角川文庫上下巻に渡る大長編を、わずか2時間にまとめるということで、いったいどうするのかなーと思っていた。
以下、ちょっとネタバレである。
この芝居は来週火曜日、13日の夜の部までやっていて、すごく面白いので、見たい方は下の部分は読まないでください。
★
★
★
警告したからな!
昨年10月に月蝕も上演した「盲人書簡」が寺山修司による江戸川乱歩の世界の再構築だったように、月蝕版ドグラ・マグラは、夢野久作の世界に寺山修司の世界を重ね合わせることで、立体的な作品世界を再構築しているようだ。
立体的になることで、わかりやすい印象を受けた。
原作で登場する「ブウウーン」という柱時計の音は、寺山演劇でお馴染みの柱時計の音でもあるし、J・A・シーザーの劇中歌によって「胎児の夢」が歌われたりする。
また、寺山の作品とも共通する親子の愛憎関係や、先祖から受け継がれる呪いという「因果物」の側面を強調しているのもわかりやすい。
ぼくは、この原作を何回か読破していて、それを一種自慢にしてきたが、今日舞台を見て、改めてスッキリ理解できた部分も正直あった。
そしてあらためて、つくづくコワイ話だなー!と思ったのである。
美少女が大量に出てくるのはいつもながらで、中国装束の楊貴妃や、2人の教授に支える白ナースと黒ナースが出てくるのも、小説にはないビジュアルさがあって良かった。
松本俊夫監督による映画版では故・桂枝雀が演じた正木教授を怪演した新大久保鷹(今度映画で『進撃の巨人』の巨人役を演じるそうだ!)の迫力も良かった。
ここまで読んだ人も、他にも面白いシーンがいっぱいあるので、機会があれば是非お運びください。
それにしても月蝕はこの『ドグラ・マグラ』をかつてロシアでも公演したそうで、ロシア人の人はさぞかしびっくりしたと思う。
彼が処女作の「あやかしの太鼓」を母親に見せると、「なんやら夢野久作が書いたような小説じゃねえ」と言われたのでそのままペンネームにした、というような話だった気がする。
『ドグラ・マグラ』は中井英夫『虚無への供物』、小栗虫太郎『黒死館殺人事件』と並んで日本三大奇書と言われているが、日本人が一番読破したことがない小説のひとつではないだろうか。
時間的にも、記述的にも複雑な入れ子構造になっていて、途中でどういうわけか「精神病院がいかにひどい場所か」を詠んだ♪スカラカ・チャカポコ・チャカポコ・・・という「阿呆陀羅経」が何十ページも続く。
何の本を読んでいたのかわからなくなってくる。
この小説は登場人物の気が狂っているとか、読むと読者の気が狂うとかいう話だけど、作者が一番気が狂っているんじゃないか、という気がしてくる。
でも阿呆陀羅経の部分を読み飛ばすと、がぜん探偵小説としてのギアが入って、ぐんぐん話が進んで、いい感じで盛り上がって終わるので、ぜひご一読をお勧めする。
ちなみに最近ネットで知ったのだが、夢野久作は本作の執筆のために九州帝国大学を実際に取材しており、当時の九大精神科は結構な怪事件が連続してあったそうなので、この気が狂った小説が実はそこそこ現実に題材を取っているらしいというのも、興味深い話である。
九州大学病院 精神科 神経科 ドグラマグラと九大精神科
月蝕版ドグラ・マグラは、そういうすごい小説であって角川文庫上下巻に渡る大長編を、わずか2時間にまとめるということで、いったいどうするのかなーと思っていた。
以下、ちょっとネタバレである。
この芝居は来週火曜日、13日の夜の部までやっていて、すごく面白いので、見たい方は下の部分は読まないでください。
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警告したからな!
昨年10月に月蝕も上演した「盲人書簡」が寺山修司による江戸川乱歩の世界の再構築だったように、月蝕版ドグラ・マグラは、夢野久作の世界に寺山修司の世界を重ね合わせることで、立体的な作品世界を再構築しているようだ。
立体的になることで、わかりやすい印象を受けた。
原作で登場する「ブウウーン」という柱時計の音は、寺山演劇でお馴染みの柱時計の音でもあるし、J・A・シーザーの劇中歌によって「胎児の夢」が歌われたりする。
また、寺山の作品とも共通する親子の愛憎関係や、先祖から受け継がれる呪いという「因果物」の側面を強調しているのもわかりやすい。
ぼくは、この原作を何回か読破していて、それを一種自慢にしてきたが、今日舞台を見て、改めてスッキリ理解できた部分も正直あった。
そしてあらためて、つくづくコワイ話だなー!と思ったのである。
美少女が大量に出てくるのはいつもながらで、中国装束の楊貴妃や、2人の教授に支える白ナースと黒ナースが出てくるのも、小説にはないビジュアルさがあって良かった。
松本俊夫監督による映画版では故・桂枝雀が演じた正木教授を怪演した新大久保鷹(今度映画で『進撃の巨人』の巨人役を演じるそうだ!)の迫力も良かった。
ここまで読んだ人も、他にも面白いシーンがいっぱいあるので、機会があれば是非お運びください。
それにしても月蝕はこの『ドグラ・マグラ』をかつてロシアでも公演したそうで、ロシア人の人はさぞかしびっくりしたと思う。
