消費税アップに備えてCDも買った。
この2枚だ。
両方ともマイルス・デイヴィスのライヴ・アルバムである。
この2枚だ。
両方ともマイルス・デイヴィスのライヴ・アルバムである。
まず『We Want Miles+3』は、奇跡のカムバックを果たした81年のライヴ録音である。
まだういういしい新人だったマーカス・ミラーがベースを、マイク・スターンがギターを弾いている。
『We Want Miles』はマイルスのCDの中でも特に分かりやすくノリノリの作品だ。
マイルス入門に好適で、ぼくはそういう趣旨のブログ記事をもう書いている。
それを今回なぜわざわざ買い直したかと言うと、題名通りここに来て3曲追加になった新盤ということと、1500円の特別価格だからだ。
追加されたのは「URSULA」、「AIDA」、「FAT TIME」の3曲で、いずれもスタジオ復帰作『Man with the Horn』からの作品だ。
録音は81年10月4日の東京公演である。
ちなみにこの黄色いカッコいいジャケットは、日本公演のポスターを流用したものだそうだ。
日本のデザイナー(Yoshihiro Yamadaさん)、やるな!
81年のマイルスはまだまだ復帰初年ということで体調が悪く、特に東京公演の日はボロボロだったそうである。
旧盤に収められたボストンおよびニューヨーク公演もかなり調子は悪かったらしいが、テオ・マセロの魔術的な編集で見事にいいとこ取りの作品になっている。
それに対して今回追加された東京公演部分は、テオ・マセロも死んでしまったので編集もされていず、弱々しい印象を受ける。
そこがまたいい。
マイルス好きも病膏肓に入ると、調子が悪い日のマイルスを聴いて「アーちょっと調子悪いなー」とニンマリしたりする。
タチが悪い。
「URSULA」は『Man with the Horn』唯一の4ビートナンバーだが、『+3』では最初のテーマだけを2分ほど繰り返して終わってしまう。
これはマイルスのライヴ盤でよくあるパターンで、『Cellar Door』というアルバムの中の「Sanctuary」というトラックは「♪ぱぱぱららら〜。。」というオープニングのテーマだけを、吹いて終わってしまう。
マイルスにしたらちょっと気が向いて吹いてみた、ぐらいの感じだろうが、それをわざわざCDのトラックを切って、タイトルをつけているのである。ジャケットに
Sanctuary (0:03)
などと書いてあるのである。3秒ってどんな曲だよ。
ということで、たまに「Sanctuary」が入っているブートのCDを見かけると、まず演奏時間を確認したりする。
2分もやっていると「長いな!」と思って買ってしまったりする。
『+3』の「URSULA」も長い方である。
「AIDA」はもともとの『We Want Miles』に「Fast Track」という題名で入っていた。
この「Fast Track」は、中山康樹氏の『マイルスを聴け!』によるとちょっとテオ・マセロによってスピードアップ加工されている可能性がある、ということだ。
聴き比べてみると確かにその形跡がある。
「Fast Track」はマイルス史上に残る凄絶なカッコ良い演奏だが、そのカッコ良さのかなりの部分をテオの編集テクニックに負っていると思われる。
むろんそのテオを雇って、あれこれ指示しているのもマイルスだから、テオの編集も含めてのマイルスである。
「AIDA」は「Fast Track」に比べるとかなり大人しい。
「Fat Time」は後年はスパニッシュ風味に演奏される曲だが、『+3』に入っている演奏はスタジオ盤と後年のスパニッシュ風味版のちょうど中間のような味わいがある。
この曲は長い間ライブ版はブートしかなかったが、ブートに比べるとさすがに音質が良く、ミックスのバランスも良いのでうれしい。
ただ、やはりちょっと大人しいというか弱々しい。
あと、スタジオ盤の衝撃のエンディング、めちゃめちゃカッコ良いエンディングがどうなっているか楽しみで聞いていたのだが、ちょっと「Jean Pierre」のメロディを1小節ほど吹きかけてスッと終わってしまう。
サックスのビル・エヴァンス(有名なピアノのビル・エヴァンスとは別人)が「えっ、Jean Pierreやるんですか」的に慌てて同調しているが、唐突に曲が終わるところも面白い。
この2秒ぐらいを「Jean Pierre」というトラックにされなくて良かったと思う。
ていうか良く気づいたな!>俺
日本盤で、中山氏がライナー・ノーツを担当しているが、「Fast Track」と「AIDA」の違いなど、テオ・マセロの編集がどう掛かっていたかの解説がまったくないのが不満である。
やはりレコード会社に頼まれて書くライナー・ノーツには書けないことも多いのだろうか。
『マイルスを聴け!』がアップデートされるのが楽しみである。
ということで、『We Want Miles』をまとめると、新録の3曲は東京公演で、マイルスは相当体調が悪く、編集がまったくされていないが、音はすこぶるいい。
と、聞いて「それは面白そうだ」と聴きたくなる人以外は無理に新盤を買い直す必要はない。
これから買う人は当然新盤の方がお買い得である。
これからこのアルバムを聴く人が本当にうらやましい。
なんと言っても1曲目の「Jean Pierre」が最高にハッピーである。
★
★
★
『MILES at the FILLMORE EAST』はニューヨークにあったロックの殿堂フィルモア・イーストで、1970年6月17日(木曜日)から29日(土曜日)まで4夜に渡って行われた演奏を収めたアルバムである。
フィルモアでのマイルスはロックバンドの前座扱いで、この日はローラ・ニーロという人の前座だったらしい。
もともとオフィシャルは例によってテオ・マセロによる編集盤が出ていた。
この編集がちょっとやり過ぎで、4日間合わせてCD2枚組と短く、ブツ切りの部分がまる分かりである。
演奏が急に変わって「えっ、今、何が起こったの」、「その切り取った部分で何やってたの」とめちゃめちゃ気になる。
『フィルモア』当時はデジタル編集の技術もなかったのでスプライサーという装置でテープを切ってスプライシング・テープという専用のセロテープ的なものでつなげていた。
マイルスのアルバムでは他に『Live Evil』、『Bitches Brew』、『Jack Johnson』が編集のブツ切り感が目立つ。
慣れると、この唐突な編集もカッコ良くて、このテオ・マセロのブツ切り感も含めてマイルス、と思うのだが(さっきから似たようなことを何回も書いているが)、未編集版は未編集版で聴きたい。
未編集盤を聴いてみると、ああなるほど、この冗長でマイルスがなかなか出てこない部分は切りたくなるのもしょうがないわー、と思ったりするのだが、それはそれで欲しいし聴きたい。
ということで、『Live Evil』とそのノーカット盤『Cellar Door Sessions』と両方買って聴き比べないと納得がいかなくなるのである。
他の方のブログを読んでいて、なるほどと思ったのが、テオ・マセロの編集盤は野球の好プレー集のようなものだ(逆に言うと、完全盤は生の試合をそのまま見るようなものだ)ということだ。
Miles Davis(70-75年)
これは本当に実感として分かる。
あと、『Live Evil』(未編集版は『Cellar Door Sessions』)と『Fillmore』に関しては、未編集盤の方が1曲1曲の流れが良く分かるので、ぼくにとっては聴きやすい感じがする。
『FILLMORE EAST』も水曜日、金曜日、土曜日が別々にブートで出ていた。
オフィシャルが出なかったので、いけないと知りつつ背に腹は変えられないのでブートを買っていたのだ。
木曜日だけがなかなか出なかった。
(去年の年末にやはりブートで出たらしいが、それは知らなくて買わなかった。)
今回はその木曜日も含めて4枚組、オフィシャル版で出なおしたのである。
さすがに高音質である。
マイルスの演奏はこの時代が一番ハツラツと吹きまくっている。
マイルスの音楽はだいたいサックス奏者とキーボード奏者で年代が区切れるが、この時代はサックスがスティーヴ・グロスマン。
キーボードが左からチック・コリア、右からキース・ジャレットという泣く子も黙る豪華編成である。
ただ音楽は『Bitches Brew』時代のもので、かなりヘヴィーで難解でサイケである。
デイヴ・ホランドのベースがかなり高級感があって、いかにもジャズという感じで、ぼくはあまりジャズが良く分からないので好みではない。
ホランドの後任となる、分かりやすくファンキーなマイケル・ヘンダーソンの方が好きだ。
ぼくが持っていた土曜日のブートは『Precious』というタイトルがついていて、マイルスのトランペット、スティーヴのサックス、そしてアイアート・モレイラのパーカッションだけが異常に前に出てきていて他の音が引っ込んでいる、そしてエコー処理がまったくされていないという異常な録音だったが(そこがまたいいのだが)、それはそういう録音のブートが出回っていただけらしく、オフィシャル版ではちゃんとしたバランスのミックスになっている。
しばらくマイルスのブート情報から遠ざかっていたのだが、現在フィルモアのブートは4日間のそれぞれについて、ミックスが普通のマスター・エディションと、エコー処理が行われていないオルタネイト・エディションと、楽器ごとに聴けるバージョンを複数収録したセパレート・エディションが出ていて、4×3で12バージョンが聴けるらしい。
ぼくは水曜日と金曜日のマスター版と、土曜日のセパレート版(featuring マイルス&アイアート)を持っていたことになる。
12バージョンあるなら、当然それを全部聴きたい。
でもさすがにちょっとしばらくはいいかな、という気がする。
ブートはちょっと高い。
昔は1枚5000円とか7000円とかした。
CD−Rだったりした。
今は安くなっていて、3000円ぐらいである。
それでも高い。
買って聴いたら当然楽しいのだけど、まずオフィシャルを買って、聴き倒し、味わい尽くしてから、どうしようもなくブートに手を出すのが正しい姿という気もする。
今回出たフィルモアのオフィシャル版は4枚で3600円と超お買い得である。
豪華ブックレット(輸入盤なので英語だが、ボクシングをしているマイルスの姿が入ったりしている)、ポスター(Rolling Stone誌の記事が印刷されている)も付いてくる。
念のため、同じ曲目のコンサートが4日分入っている4枚組のCDなので、それを全部聴きたいと思う人だけ買えばよろしい。
同じ曲目のコンサートを4日分聴く必要とかあるのと思われる方、その感覚が普通なので、それを大切にして生きて欲しい。
でもそのうち全部聴きたい、違いが知りたいと思ったら、そのときはようこそ病膏肓の世界へ、という言葉を捧げたい。
ちなみにブートでは各盤の最初にオーナーのビル・グレアムによる挨拶が入っているが、さすがにオフィシャルでは水曜日以外はカットされている。
ぼくもビル・グレアムの挨拶のヴァージョン違いとか聞きたいとは思わない。
あとオフィシャル版にはボーナス・トラックとして、フィルモア・ウェスト(サンフランシスコ)の1970年4月11日公演から3曲入っている。
キーボードがチック一人で、録音はかなり悪いが、曲目的に
「Paraphernaria」(オリジナルは『Miles in the Sky』)
「Footprints」(『Mile Smiles』)
「Miles Runs The Voodoo Down」(『Bitches Brew』)
というウェイン・ショーター時代の古い曲をやっているのが珍しい。
ということで5千円でCD6枚分のマイルスが入手出来てハッピーである。
これから半年ぐらいはこの音楽を繰り返し聴くことになる。
まだういういしい新人だったマーカス・ミラーがベースを、マイク・スターンがギターを弾いている。
『We Want Miles』はマイルスのCDの中でも特に分かりやすくノリノリの作品だ。
マイルス入門に好適で、ぼくはそういう趣旨のブログ記事をもう書いている。
それを今回なぜわざわざ買い直したかと言うと、題名通りここに来て3曲追加になった新盤ということと、1500円の特別価格だからだ。
追加されたのは「URSULA」、「AIDA」、「FAT TIME」の3曲で、いずれもスタジオ復帰作『Man with the Horn』からの作品だ。
録音は81年10月4日の東京公演である。
ちなみにこの黄色いカッコいいジャケットは、日本公演のポスターを流用したものだそうだ。
日本のデザイナー(Yoshihiro Yamadaさん)、やるな!
81年のマイルスはまだまだ復帰初年ということで体調が悪く、特に東京公演の日はボロボロだったそうである。
旧盤に収められたボストンおよびニューヨーク公演もかなり調子は悪かったらしいが、テオ・マセロの魔術的な編集で見事にいいとこ取りの作品になっている。
それに対して今回追加された東京公演部分は、テオ・マセロも死んでしまったので編集もされていず、弱々しい印象を受ける。
そこがまたいい。
マイルス好きも病膏肓に入ると、調子が悪い日のマイルスを聴いて「アーちょっと調子悪いなー」とニンマリしたりする。
タチが悪い。
「URSULA」は『Man with the Horn』唯一の4ビートナンバーだが、『+3』では最初のテーマだけを2分ほど繰り返して終わってしまう。
これはマイルスのライヴ盤でよくあるパターンで、『Cellar Door』というアルバムの中の「Sanctuary」というトラックは「♪ぱぱぱららら〜。。」というオープニングのテーマだけを、吹いて終わってしまう。
マイルスにしたらちょっと気が向いて吹いてみた、ぐらいの感じだろうが、それをわざわざCDのトラックを切って、タイトルをつけているのである。ジャケットに
Sanctuary (0:03)
などと書いてあるのである。3秒ってどんな曲だよ。
ということで、たまに「Sanctuary」が入っているブートのCDを見かけると、まず演奏時間を確認したりする。
2分もやっていると「長いな!」と思って買ってしまったりする。
『+3』の「URSULA」も長い方である。
「AIDA」はもともとの『We Want Miles』に「Fast Track」という題名で入っていた。
この「Fast Track」は、中山康樹氏の『マイルスを聴け!』によるとちょっとテオ・マセロによってスピードアップ加工されている可能性がある、ということだ。
聴き比べてみると確かにその形跡がある。
「Fast Track」はマイルス史上に残る凄絶なカッコ良い演奏だが、そのカッコ良さのかなりの部分をテオの編集テクニックに負っていると思われる。
むろんそのテオを雇って、あれこれ指示しているのもマイルスだから、テオの編集も含めてのマイルスである。
「AIDA」は「Fast Track」に比べるとかなり大人しい。
「Fat Time」は後年はスパニッシュ風味に演奏される曲だが、『+3』に入っている演奏はスタジオ盤と後年のスパニッシュ風味版のちょうど中間のような味わいがある。
この曲は長い間ライブ版はブートしかなかったが、ブートに比べるとさすがに音質が良く、ミックスのバランスも良いのでうれしい。
ただ、やはりちょっと大人しいというか弱々しい。
あと、スタジオ盤の衝撃のエンディング、めちゃめちゃカッコ良いエンディングがどうなっているか楽しみで聞いていたのだが、ちょっと「Jean Pierre」のメロディを1小節ほど吹きかけてスッと終わってしまう。
サックスのビル・エヴァンス(有名なピアノのビル・エヴァンスとは別人)が「えっ、Jean Pierreやるんですか」的に慌てて同調しているが、唐突に曲が終わるところも面白い。
この2秒ぐらいを「Jean Pierre」というトラックにされなくて良かったと思う。
ていうか良く気づいたな!>俺
日本盤で、中山氏がライナー・ノーツを担当しているが、「Fast Track」と「AIDA」の違いなど、テオ・マセロの編集がどう掛かっていたかの解説がまったくないのが不満である。
やはりレコード会社に頼まれて書くライナー・ノーツには書けないことも多いのだろうか。
『マイルスを聴け!』がアップデートされるのが楽しみである。
ということで、『We Want Miles』をまとめると、新録の3曲は東京公演で、マイルスは相当体調が悪く、編集がまったくされていないが、音はすこぶるいい。
と、聞いて「それは面白そうだ」と聴きたくなる人以外は無理に新盤を買い直す必要はない。
これから買う人は当然新盤の方がお買い得である。
これからこのアルバムを聴く人が本当にうらやましい。
なんと言っても1曲目の「Jean Pierre」が最高にハッピーである。
★
★
★
『MILES at the FILLMORE EAST』はニューヨークにあったロックの殿堂フィルモア・イーストで、1970年6月17日(木曜日)から29日(土曜日)まで4夜に渡って行われた演奏を収めたアルバムである。
フィルモアでのマイルスはロックバンドの前座扱いで、この日はローラ・ニーロという人の前座だったらしい。
もともとオフィシャルは例によってテオ・マセロによる編集盤が出ていた。
この編集がちょっとやり過ぎで、4日間合わせてCD2枚組と短く、ブツ切りの部分がまる分かりである。
演奏が急に変わって「えっ、今、何が起こったの」、「その切り取った部分で何やってたの」とめちゃめちゃ気になる。
『フィルモア』当時はデジタル編集の技術もなかったのでスプライサーという装置でテープを切ってスプライシング・テープという専用のセロテープ的なものでつなげていた。
マイルスのアルバムでは他に『Live Evil』、『Bitches Brew』、『Jack Johnson』が編集のブツ切り感が目立つ。
慣れると、この唐突な編集もカッコ良くて、このテオ・マセロのブツ切り感も含めてマイルス、と思うのだが(さっきから似たようなことを何回も書いているが)、未編集版は未編集版で聴きたい。
未編集盤を聴いてみると、ああなるほど、この冗長でマイルスがなかなか出てこない部分は切りたくなるのもしょうがないわー、と思ったりするのだが、それはそれで欲しいし聴きたい。
ということで、『Live Evil』とそのノーカット盤『Cellar Door Sessions』と両方買って聴き比べないと納得がいかなくなるのである。
他の方のブログを読んでいて、なるほどと思ったのが、テオ・マセロの編集盤は野球の好プレー集のようなものだ(逆に言うと、完全盤は生の試合をそのまま見るようなものだ)ということだ。
Miles Davis(70-75年)
これは本当に実感として分かる。
あと、『Live Evil』(未編集版は『Cellar Door Sessions』)と『Fillmore』に関しては、未編集盤の方が1曲1曲の流れが良く分かるので、ぼくにとっては聴きやすい感じがする。
『FILLMORE EAST』も水曜日、金曜日、土曜日が別々にブートで出ていた。
オフィシャルが出なかったので、いけないと知りつつ背に腹は変えられないのでブートを買っていたのだ。
木曜日だけがなかなか出なかった。
(去年の年末にやはりブートで出たらしいが、それは知らなくて買わなかった。)
今回はその木曜日も含めて4枚組、オフィシャル版で出なおしたのである。
さすがに高音質である。
マイルスの演奏はこの時代が一番ハツラツと吹きまくっている。
マイルスの音楽はだいたいサックス奏者とキーボード奏者で年代が区切れるが、この時代はサックスがスティーヴ・グロスマン。
キーボードが左からチック・コリア、右からキース・ジャレットという泣く子も黙る豪華編成である。
ただ音楽は『Bitches Brew』時代のもので、かなりヘヴィーで難解でサイケである。
デイヴ・ホランドのベースがかなり高級感があって、いかにもジャズという感じで、ぼくはあまりジャズが良く分からないので好みではない。
ホランドの後任となる、分かりやすくファンキーなマイケル・ヘンダーソンの方が好きだ。
ぼくが持っていた土曜日のブートは『Precious』というタイトルがついていて、マイルスのトランペット、スティーヴのサックス、そしてアイアート・モレイラのパーカッションだけが異常に前に出てきていて他の音が引っ込んでいる、そしてエコー処理がまったくされていないという異常な録音だったが(そこがまたいいのだが)、それはそういう録音のブートが出回っていただけらしく、オフィシャル版ではちゃんとしたバランスのミックスになっている。
しばらくマイルスのブート情報から遠ざかっていたのだが、現在フィルモアのブートは4日間のそれぞれについて、ミックスが普通のマスター・エディションと、エコー処理が行われていないオルタネイト・エディションと、楽器ごとに聴けるバージョンを複数収録したセパレート・エディションが出ていて、4×3で12バージョンが聴けるらしい。
ぼくは水曜日と金曜日のマスター版と、土曜日のセパレート版(featuring マイルス&アイアート)を持っていたことになる。
12バージョンあるなら、当然それを全部聴きたい。
でもさすがにちょっとしばらくはいいかな、という気がする。
ブートはちょっと高い。
昔は1枚5000円とか7000円とかした。
CD−Rだったりした。
今は安くなっていて、3000円ぐらいである。
それでも高い。
買って聴いたら当然楽しいのだけど、まずオフィシャルを買って、聴き倒し、味わい尽くしてから、どうしようもなくブートに手を出すのが正しい姿という気もする。
今回出たフィルモアのオフィシャル版は4枚で3600円と超お買い得である。
豪華ブックレット(輸入盤なので英語だが、ボクシングをしているマイルスの姿が入ったりしている)、ポスター(Rolling Stone誌の記事が印刷されている)も付いてくる。
念のため、同じ曲目のコンサートが4日分入っている4枚組のCDなので、それを全部聴きたいと思う人だけ買えばよろしい。
同じ曲目のコンサートを4日分聴く必要とかあるのと思われる方、その感覚が普通なので、それを大切にして生きて欲しい。
でもそのうち全部聴きたい、違いが知りたいと思ったら、そのときはようこそ病膏肓の世界へ、という言葉を捧げたい。
ちなみにブートでは各盤の最初にオーナーのビル・グレアムによる挨拶が入っているが、さすがにオフィシャルでは水曜日以外はカットされている。
ぼくもビル・グレアムの挨拶のヴァージョン違いとか聞きたいとは思わない。
あとオフィシャル版にはボーナス・トラックとして、フィルモア・ウェスト(サンフランシスコ)の1970年4月11日公演から3曲入っている。
キーボードがチック一人で、録音はかなり悪いが、曲目的に
「Paraphernaria」(オリジナルは『Miles in the Sky』)
「Footprints」(『Mile Smiles』)
「Miles Runs The Voodoo Down」(『Bitches Brew』)
というウェイン・ショーター時代の古い曲をやっているのが珍しい。
ということで5千円でCD6枚分のマイルスが入手出来てハッピーである。
これから半年ぐらいはこの音楽を繰り返し聴くことになる。