Wilding Fields, Darwen Moor - geograph.org.uk - 217635
前回の続き。
日本語1音の名詞を分類する試みとして、前回「荷」を分析した。
第1回では、「胃」(い)には以下のような特徴があると分かった。

 ・物体である
 ・自然に存在する
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・一個の独立したものであるとも、連続したものの範囲であるとも言える
 ・より大きな別のものに従属したものとしてのみ存在する
 ・生命を持っている
 ・母体から切り離されると死ぬ
 ・母体に対してだいたい大きさの比率が決まっている
 ・母体の大きさによって絶対的な大きさはまちまちである
 ・人間にもある

第2回では、「鵜」(う)には以下のような特徴があると分かった。

 ・物体である
 ・自然に存在する
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・生命を持っている
 ・一個の独立したものである
 ・空中を移動できる
 ・水上を速く移動できる
 ・独立して生きている
 ・種類の中でだいたい大きさが決まっている

第3回では、「絵」(え)には以下のような特徴があると分かった。

 ・情報であるか、その情報を定着させた物体(画材)である
 ・人工のものである
 ・目に見える(※「区」との区別のために追加)
 ・人間が鑑賞するためのものである
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・一個の独立したものである
 ・生命を持っていない
 ・どんなに小さいことも、どんなに大きなこともある

第4回では、「尾」(お)には以下のような特徴があると分かった。

 ・物体である
 ・自然に存在する
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・一個の独立したものであるとも、連続したものの範囲であるとも言える
 ・より大きな別のものに従属したものとしてのみ存在する
 ・生命を持っている
 ・母体から切り離されると死ぬ
 ・母体に対してだいたい大きさの比率が決まっている
 ・母体の大きさによって絶対的な大きさはまちまちである
 ・人間にはない

第5回では、「蚊」(か)には以下のような特徴があると分かった。

 ・物体である
 ・自然に存在する
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・生命を持っている
 ・空中を移動できる(※木との区別のために必要)
 ・一個の独立したものである
 ・独立して生きている
 ・種類の中でだいたい大きさが決まっている
 ・羽毛がない

第6回では、「木」(き)には以下のような特徴があると分かった。

 ・物体である
 ・自然に存在する
 ・生命を持っている
 ・一個の独立したものである
 ・一か所に固定している(※蚊、鵜との区別のために必要)
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・固い幹を持ち、何年も生き続け、毎年実が生る
 ・大きさがまちまちである

第7回では、「区」(く)には以下のような特徴があると分かった。

 ・情報である
 ・人工のものである
 ・目に見えない
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・それ自身独立して存在しない
 ・ある決まりに従って決められたそのものを指す(※差とここが違う)
 ・生命を持っていない
 ・どんなに小さいことも、どんなに大きなこともある
 ・人為的なものであり、何を指すかはある人の勝手で決まる(※これは「差」にはなじまない)

第8回では、「毛」(け)には以下のような特徴があると分かった。

「毛」

 ・物体である
 ・自然に存在する
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・一個の独立したものであるとも、連続したものの範囲であるとも言える
 ・より大きな別のものに従属したものとしてのみ存在する
 ・生物の一部としてへばりついているが、死んでいる(※尾と比較して特徴的)
 ・母体に対してだいたい大きさの比率が決まっている
 ・母体の大きさによって絶対的な大きさはまちまちである
 ・人間にも動物にもある(※尾と比較して特徴的)

第9回は、「差」(さ)には以下のような特徴があると分かった。

「差」(さ)

 ・情報である
 ・人工のものである
 ・目に見えない
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・それ自身独立して存在しない
 ・2つのものの関係を指す(どちらか一方がなくなると消えてしまう)(※区とここが違う)
 ・生命を持っていない
 ・どんなに小さいことも、どんなに大きなこともある

第10回は、「死」(し)には以下のような特徴があると分かった。

「死」(し)

 ・現象である
 ・自然のものである
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・それ自身独立して存在しない
 ・ある肉体に起きる現象、状態を指す


第11回は、「酢」(す)には以下のような特徴があると分かった。

「酢」(す)

 ・物体である
 ・人工のものである
 ・目に見える
 ・液体である
 ・人間が食べるためのものである
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・生命を持っていない
 ・どんなに小さいことも、どんなに大きなこともある

第12回は、「背」(せ)には以下のような特徴があると分かった。

「背」(せ)

 ・動物の表面の一区画である<=新しく導入した
 ・自然に存在する
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・連続したものの範囲であるとも言える
 ・より大きな別のものに従属したものとしてのみ存在する
 ・生命を持っている
 ・母体から切り離されると死ぬ
 ・母体に対してだいたい大きさの比率が決まっている
 ・母体の大きさによって絶対的な大きさはまちまちである
 ・人間にもある<=ここが尾と違う

第13回は、「田」(た)には以下のような特徴があると分かった。

「田」(た)

 ・地面の一区画である<=新しく導入した
 ・加工されている<=新しく導入した
 ・人工のものである
 ・目に見える
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・一個の独立したものである
 ・生命を持っていない
 ・小ささ、大きさに限界があるが、差が大きい<=新しく導入した

第14回は、「血」(ち)には以下のような特徴があると分かった。
(毛、酢との比較で考えた)

「血」(ち)

 ・物体である
 ・自然に存在する(※ここが酢と違う)
 ・目に見える
 ・液体である
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・生物の一部として内蔵されており、生きている(※ここが毛と違う)
 ・人間にも動物にもある
 ・どんなに少ないことも、どんなに多いこともある※訂正!

第15回は、「津」(つ)には以下のような特徴があるとした。

 ・ある空間の範囲を差す
 ・世界に一つしかない
 ・大きさが厳密に定まっている
 ・人為的なものである

第16回は、「手」(て)には以下の特徴があるとした。

 ・物体である
 ・自然に存在する
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・一個の独立したものである
 ・より大きな別のものに従属したものとしてのみ存在する
 ・生命を持っている
 ・母体から切り離されると死ぬ
 ・母体に対してだいたい大きさの比率が決まっている
 ・母体の大きさによって絶対的な大きさはまちまちである
 ・人間にしかない(※尾との違い)

第17回は、「戸」(と)には以下の特徴があるとした。

 ・物体である
 ・人工のものである
 ・目に見える
 ・個体である
 ・食べられない
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・より大きな別のものに従属したものとしてのみ存在する
 ・生命を持っていない
 ・大きさがまあまあ同じである

第18回は、「名」(な)には以下の特徴があるとした。

 ・情報である
 ・人工のものである
 ・目に見えない
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・それ自体独立して存在する(区、差とここが違う)
 ・ある決まりに従って決められたそのものを指す(※差とここが違う)
 ・生命を持っていない
 ・どんなに小さいことも、どんなに大きなこともある
 ・人為的なものであり、何を指すかはある人の勝手で決まる

第19回は、「荷」(に)には以下の特徴があるとした。

 ・物体である
 ・自然にも存在するし、人工でもある(※ここが新しい)
 ・目に見える
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・生命を持つこともあれば、持たないこともある(※ここが新しい)
 ・どんなに小さいことも、どんなに大きなこともある
 ・人為的なものであり、何を指すかはある人の勝手で決まる
 ・質量がある(※ここが新しい)
 ・形は不定である(※ここが新しい)

第19回は、「荷」(に)には以下の特徴があるとした。

 ・物体である
 ・自然にも存在するし、人工でもある(※ここが新しい)
 ・目に見える
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・生命を持つこともあれば、持たないこともある(※ここが新しい)
 ・どんなに小さいことも、どんなに大きなこともある
 ・人為的なものであり、何を指すかはある人の勝手で決まる
 ・質量がある(※ここが新しい)
 ・形は不定である(※ここが新しい)

「ぬ」は飛ばした。

第20回では、「値」(ね)には以下の特徴があるとした。

 ・情報である
 ・人工のものである
 ・目に見えない
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・ある決まりに従って決められたそのものを指す
 ・生命を持っていない
 ・どんなに小さいことも、どんなに大きなこともある
 ・人為的なものであり、ある人の勝手で決まる
 ・数値で決まる(※ここが「区」と違う)

あいうえお順で次は「の」であるので、「野」について研究する。

もっとも、「野」という言葉を現代語で単独で言うことはあまりないだろう。

「野」というと連想されるのが

  君がため 春の野に出でて 若菜摘む
   我が衣手に 雪は降りつつ

とか、

  白露(しらつゆ)に 風の吹きしく 秋の野は
   つらぬき留めぬ 玉ぞ散りける

とか、百人一首に出てくる言葉である。



こういう言葉は、現代では「野原」「原っぱ」などと言う。
野性のもの、という意味で「野うさぎ(のうさぎ)」、「野ばら」などという。
wildという意味だろう。
野原は英語ではwild fieldという。

おかしいのが「野獣」(wild animal)の場合は「やじゅう」と読む。
「ウェルニッケ野」「ブローカ野」などの脳の部位のことは「や」と読む。

田舎育ちできちんとしつけられていない、という意味の「野育ち」は「のそだち」と言う。
では「あの方は「野にあって国家に尽くす」とおっしゃって政治家になられませんでした」と言うときは、難しいが、「やにあって」と言うらしい。

和語がノで漢語がヤということだろうか。

あと、ノは割とネガティブなイメージの言葉が多い。
さっきの「野育ち」もそうだが、魚の「生けじめ(ちゃんと殺して血抜きをする)」に対する「野じめ(弱るままにしておく)」などという。
ヤは「粗にして野だが卑ではない」とか、「野性的な魅力」みたいな、ポジティブな意味が多い。
wildという言葉も「田舎者で、洗練されていない」という悪い意味と、「自然由来で、たくましい」といういい意味がある。
前者にノが、後者にヤが割り当てられている気がする。



単純に「wild field(野原)」という意味であれば、「田」に近い。

「田」(た)

 ・地面の一区画である<=新しく導入した
 ・加工されている<=新しく導入した
 ・人工のものである
 ・目に見える
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・一個の独立したものである
 ・生命を持っていない
 ・小ささ、大きさに限界があるが、差が大きい<=新しく導入した

これに対して「野」は

「野」(の)

 ・地面の一区画である
 ・加工されていない<=田との違い
 ・自然のものである<=田との違い
 ・目に見える
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・一個の独立したものである
 ・生命を持っていない
 ・小ささ、大きさに限界があるが、差が大きい<=新しく導入した

こうすると、地球上の地面は全部「田」と「野」に分かれることになるが、現実には住宅地も、商業地も、道路もある。
ただ、そういう言葉は「じゅうたくち」、「しょうぎょうち」、「どうろ」と1音ではないので、まだ検討に掛かっていないわけだ。