今日2013年12月18日、ザムザ阿佐谷で初日を迎えた演劇『有明をわたる翼』を見に行った。
去年から空前の観劇ブームで、あとザムザ阿佐谷にばっかり行っている。
去年から通算して3劇団5公演目である。

『有明をわたる翼』は諫早干拓事業が生態系に及ぼす影響と、それを巡る漁民の対立、そして哲学的な動物の世界を描いた舞台である。
演劇と科学のコラボレーションと言うべき内容であって、これまで見てきた寺山修司の不条理劇とはまったく違う、リアルでハードな舞台であった。
これはこれで非常に面白かった。

ありあけ

有明をわたる翼 | 演劇企画フライウェイ [演劇公演紹介] 演劇、ミュージカル等のクチコミ・チケット情報ポータル★CoRich 舞台芸術!

東京で諫早湾演劇「有明をわたる翼」を上演したい!(飯島明子) - READYFOR?
ぼくは演劇を見始めてまだ日が浅いので、この舞台がどうだ、あの舞台がこうだ、という批評が出来ない。
かわりに「演劇とは映画と比べてどういう芸術か」、「テレビと比べてどういうものか」という見方をしてしまう。
いつも書いていることとしては、見る角度と回数によってまったく印象が違う、誰かが話している時に誰かの表情が変わるのが面白い、ということだ。

今日リアルな世界(水俣病をチッソは認めなかった、という台詞も出てくる)の舞台を見て思ったのは、舞台という限られた空間で演じる以上、どんなリアルでハードな世界を描いても必ずファンタジーになる、そこが面白い、ということである。
俳句や短歌が限られた字数であるから新聞記事とは違う味が出るように、限られた空間、人数、時間でわかりやすく伝えるためには、絶対に省略や比喩が行われる。

ネタバレになってしまうが、カムイ伝やライオンキングのように動物が話す舞台である。
動物の世界と人間の世界が交互に描かれ、この2つが入り乱れてSF的な展開になる。
それを楽しんでいるうちに、現実の環境問題や、どうして地元の漁民たちが容認する形になるのか、という問題も、単に新聞の社説のような、あいつが悪い、俺は正しい、という問題ではなく、より汎通的な議論になる。
産業が悪くて動物がかわいそう、というだけでなく、われわれの心の問題になるのである。
これは、逆に不条理劇や超現実的な舞台を見ていたときは気づかなかったことである。

琴やパーカッション、そして男性歌手のナマの演奏がすばらしかった。
狭い舞台に色々な要素が詰まっていて良かった。
生態学や時事に関係なく、舞台としても面白いので、機会があったら見にいかれることをおすすめする。
日曜日まで昼夜8公演やっている。

日本ベントス学会という、海底生物を研究している学会が主催している舞台で、「環境問題は科学が引き起こしたが、それを解決すべきなのもまた科学だ」という視点で描かれていることも好感を持った。