ぼくは人並み以上にアイドルが好きな方だ。
もっとも、中学、高校時代は洋楽ばかり聴いていた。
ハードロックとか、プログレとか、クラシックでもシンフォニーとか、壮大な感じの音楽が好きだった。
80年代は普通にアース・ウィンド・アンド・ファイヤー、スティーヴィー・ワンダー、マイケル・ジャクソンをきっかけにR&Bにハマった。
それからプリンスに出会って、以降スライ&ファミリーストーン、カーティス・メイフィールド、スモーキー・ロビンソン&ミラクルズとどんどんソウルにハマって現在に至る。
ぼくの年代だと、極めて普通の音楽の聴き方ではないだろうか。

なのになぜ、イイ年をして急にアイドル好きになったかというと、「SPEED」がキッカケである。
90年代の本場のR&Bがニュー・ジャック・スウィングというやつで、メロディがすごく悲しくて気が滅入る感じだった一方で、80年代までのR&Bの感じを残しつつ、10代の女の子が踊り跳ねる感じがすごく良かった。
モー娘。も大好きだったし、AKB48も普通に聴いている。

最近のお気に入りは「乃木坂46」で、中でも生田絵梨花さんが「推し」だった。
ドイツ出身の帰国子女で、ピアノが特技である。


アイドルというと「やらされてる感」があると見ていて辛いのだが、生田さんの場合は本当に芸能が好きで、好きなようにやっているのが伝わってくる。
テレビ番組の最中に堂々と「メンバー同士を言い争わせたりする、下品な番組の演出は好きではない」と言っていたこともある。
大物だ。



そんな生田さんが、佐久間正英さんと親戚であると知った。
佐久間さんと言えばぼくの世代で言うと四人囃子、プラスティックスと言った先進的なバンドのベーシストであった。






その後もミュージシャン、プロデューサーとして活躍している。
生田さんは佐久間さんの「いとこの娘」にあたるそうだ。

佐久間さんは小泉今日子さんの「真っ赤な女の子」のような80年代のアイドルの曲も多く手がけていた。
「あまちゃん」ブームでその当時の曲が流れて、生田さんはあらためて佐久間さんの仕事のことを認識したそうだ。

親戚の生田さんが所属している乃木坂46のことも当然気にかけていて、「君の名は希望」という曲がいい、と褒めていたそうだ。



そんな生田さんが、自分のブログで佐久間さんと共演したいと呼びかけ、「君の名は希望」を、ピアノの弾き語り+ベースという形で演じて、乃木坂のシングル「バレッタ」の特典映像として世に出ることになった。





佐久間さんは何度も重い病気を乗り越えて、今も活動している。
その佐久間さんと、これからより大きく羽ばたいていくだろう生田さんの競演は、感動的だ。

アイドルとミュージシャンのセッションというと、今年は向谷実さんとAKB48の「もうこんなじかん」もあった。



イジハピ! : 【第328回】最高の音楽体験! 向谷実 vs. AKB48

これも本気度が高くて素晴らしいプロジェクトだった。

アイドルがヒットチャートを独占していると言われて久しい。
数年前から、いわゆるAKBグループとジャニーズがほぼベスト10から20を席巻している。
アイドルのCDには握手券や人気投票参加券がついているから、同じ人が何枚も買っているということで、批判されている。
それはそれでもっともな批判である。
しかし、アイドル以外のミュージシャンの売り上げの低下を見ると、アイドルが売れているというよりは、他のミュージシャンが売れなさ過ぎているという問題のような気がする。
これは他の分野にも言えることだ。
小説はラノベが、映像はアニメが気を吐いている。
おたくカルチャーが完全にカルチャー全体を席捲しているのだ。
であれば、もし今の時代に何かを訴えようと思っているなら、そういうあり方をバカにしていても仕方ないのであって、おたくカルチャーの枠組みで先進的なファイン・アートの試みや、考え甲斐のある思想をいかに表現するか、ということを考えるべきだろう。
これからも、もっともっとビッグなアーティストと、アイドルのコラボが見たい。

91 minutes of the night sky