(※注記:本記事は10月21日に発表しましたが、翌22日に比留間さんからいくつかご指摘をいただいて修正しました。すべて本文中に「※追記」として修正を入れました。スミマセン。詳しくは比留間さんのコメントをごらんください。)

10月20日日曜日、阿佐ヶ谷「バルト」で開かれた、「もじもじカフェ 第40回『新聞校閲という仕事』に行ってきた。

もじもじカフェ

前回に続いて2回目の参加である。

イジハピ! : 【第418回】【文字コード【プチ】研究(2)】もじもじカフェ「映画字幕師・佐藤英夫の仕事とデジタル化」

今回は、朝日新聞校閲部の比留間直和さんから、新聞の校閲についてお話をうかがった。
以下、ぼくが聞き取った範囲、記憶している範囲でゆるやかにまとめてみる。
正確でなかったらぼくのせいなのでそこはスミマセン。

司会の道広さんのコメントを「-」、客席のコメントを「★▲▼■」などで表現する。
また、深沢の注は(※~)とする。

(※道広さんのお話)

もじもじカフェ、今日は、新聞校閲という仕事というテーマです。
校閲は印刷物に間違いがないようにすることですね。

校正と校閲という、範囲がダブっている2つの言葉があります。
校正は、狭義では原稿と合っているか、より前の校正の赤字がきちんと反映されているかです。
それに対して校閲は、もっと内容に立ちいる。
事実関係は合っているか。
前後の文章に矛盾はないか。
でも、2つの言葉は重なっている部分もあると思います。

今日は新聞がテーマです。
日刊紙。
最も厳しいスケジュールで作られている印刷物じゃないでしょうか。
ちなみに今日は、まだ今日の原稿が書かれていないそうです。

大部数。
間違いがあったら大変です。
今日は朝日新聞の比留間さんにお越しいただきました。
文字コードのお好きな方は、JISコードの比留間さんとして有名ですが、今日は新聞校閲のお話です。

比留間さんは朝日新聞の校閲部にいらっしゃって、また用語幹事補佐という仕事もなさっています。

また、JIS委員としてJIS X 0208、JIS X 0213の策定にも参加されました。
こちらは社外での活動です。

朝日新聞の社内では、社内で使う辞書の整備もされているそうです。
ではお話を伺います。

(※比留間さん)

今日は、あいにくの天気(※大雨)の中、くじけずに来てくださってありがとうございます。

今日は新聞校閲についてということですが、まずその前に、新聞はどうやって作っているかについてお話しします。

早版、遅版、最終版

新聞には早版、遅版、最終版というもの(※一日の中でのバージョン違い)があります。
これは、中にいないと細かくは分からないかもしれません。

これは社によって多少違いますが、朝日新聞の例でお話しします。
今は各地に印刷工場がありますが、活版当時は、各地方で読まれる新聞も東京で刷っていました。
そのために、地方に送る新聞はずいぶん前に印刷を完了していないといけませんでした。

青森に送る場合は、前の日の大相撲の結果を入れるのががギリギリだったそうです。
それを夜行列車に載せて、青森に運びます。

逸話があるんですが、上野駅で遅れそうな場合は、記者がドアに足を挟んで妨害したそうです。

今では青森にも北海道にも印刷所がありますが、それでも若干の版の違いがあります。
都心部はギリギリまで最新のニュースを入れられるからです。

ここに、10月16日の夕刊の第3版があります。
(※台風26号が猛威をふるったニュース)
夕刊は、第3版と、第4版、2つの版があります。
これが、早版、遅版です。

しかし、もう一つ、第3版の後に「第3版●」という、黒丸が付いたものがあります。
3版では7人死亡となっていましたが、3版●では13人死亡となっています。
これは追っ掛けと言って、重要な変更があったときに輪転機を止めて対応するものです。

次に第4版。35人不明が51人不明になっています。

なぜ(※第1版、第2版ではなくて)3と4かはあとでお話しします。

朝刊は早版で、第12版の▲というバージョンがあります。
これは、夕刊を出していない地域に届けるものです。
朝日新聞は全国で夕刊を出している分けではありません。
こっちのバージョンは、夕刊で出たニュースも、重要なニュースは盛り込みます。
そのため、統合版と言っています。
43人不明、となっていますね。

統合版の対義語はセット版で、夕刊のある地域の朝刊です。

こちらはセット版の13版で、夕刊として3版を届けた地域の朝刊です。
夕刊として出た記事は、Wらせないでいいことにしています。

こちらが14版で、朝刊の最新版になります。
これは都心部、川崎、多摩、立川当たりまでに届いています。
埼玉、千葉は13版です。

この日の(※夕刊)、3版と4版は全然違います。
4版では、トップニュースが台風ではなくて、「名張毒ブドウ酒事件 再審棄却」がトップになっています。
同じ事件が、3版⚫には社会面に小さく囲み記事になっています。

12版(朝刊統合版)ではブドウ酒がトップです。
13版では扱いを落として解説的な記事になっています。

夕刊で書いたニュースでも、朝刊でまったく触れないわけではありません。
夕刊をお取りでない方もいますよね。
ですから、このように13版でもダイジェスト的に触れています。

作業のフロー

さて、校閲の作業について説明します。

(※作業のフローを示す。
  記者=>デスク=>編集センター=>印刷=>販売店=>読者
  校閲からは、デスクと編集センターの両方に矢印が延びている)

校閲は、純粋なニュースと読書面/文化面で扱いが違います。
読書面/文化面は、あらかじめ校了しておくことができます。

一方、ニュースの朝刊は朝までに作ります。

朝刊は夜作ります。
今時分(※この話をしている昼の2時)は打ち合わせしてると思います。
記事は夕方から入り始めます。
校閲は夕飯時から。
作業が終わって帰れるのは午前2時になります。

夕刊は朝9時に開始します。
午後イチに終了ですね。

ローテーションを組んでやります。
朝夕刊連続は無理なので、だいたい朝刊連続とかになります。

デスクというのがいます。
これは次長に当たるポジションで、各部に何人もいます。
その日の現場監督みたいな感じです。

デスクの後に編集センターという部署に行きます。
これは、昔は整理部と言っていました。
編集作業を担当します。
どれを上に持ってくるか。
見出しをどうするか。
かなり強い権限を持っている部署です。
そうでないと、限られた時間で上がらないんですね。

校閲部は、各部のデスクに対して指摘するのと、編集センターに指摘するのと、二正面作戦を取っています。
編集と執筆は同時進行で行われます。
最終関門であり、最初の読者です。

(※後のお話とも絡むが、校閲部の仕事は、まず時間的な締め切りありきで、何時までに間違いを可能な限り見つける、というものだそうだ。記事が緊急に入ったりして、その時間までに校閲が終わらなければ、校閲なしで印刷に回ることも、最悪ありうる)

新聞校閲の役割

新聞校閲の役割とは何でしょうか。

誤字、脱字、衍字(えんじ、余計な字)を指摘して直させる

直すのは出稿元のデスクです。
我々の指摘を受けて、誤字を直すか、表現を変えるか、文章を切るという対処をします。

日本語を正しくする。
日本語を守るという役割を担っています。

また、各社のルールに合わせるということもあります。

組み方のルール

この記事は、両切れという現象が起こっています。
(※実際には本物の記事がありましたが、ぼくが適当に作りました。ひどくてゴメンナサイ)
(※追記:案の定このケースが微妙に間違っていました!狩野さんのコメントをご覧ください。本当にひどくてゴメンナサイ・・・)


両切れ


見出しを境に話題が変わっていますので、A=>C=>B=>Dと読むべきです。
しかし、CとDが両方とも段落区切りになっています。
そのため、A=>B=>C=>Dと読む人がいないとも限らない。
これが両切れです。

この場合は、Cの先頭をAの末尾に追い込みました。
ここで段落が切れなくても文脈上問題がないという判断です。


両切れ解消


これで文章A+Cの連続性が分かります。

このように、字句だけではなく、レイアウトも見ます。

マズイ表現、マズイ写真

一般の書籍同様、差別表現も見ます。
写真の映り込みで、個人情報が載っていないか。
車のナンバーとかにはモザイクを掛けます。

選挙期間中とかは、特定の候補を応援してしまってもいけないので、候補が分からないように、客席だけ写るようにしたりもします。

間違いを直す

データ的な間違い。
固有名詞の間違い。
数字や、事実関係を見ます。

記事のキモであるような、新事実の校閲はなかなか難しい。
過去の経緯は過去記事を見ます。
一般常識との齟齬がないかをチェックします。

過去の経緯は、昔はスクラップブックを探していたんですが、今はネットを見ます。
ただ、ネットも信頼性が問題になることがありますね。
今は官庁もネットで情報を出していますので、それを見ます。

読みやすいか、分かりやすいか

一面と二面の矛盾がないかとか。
ある程度高度なことをここで見ます。

大体こういったことを、新聞校閲者はやっています。

事例

それでは、現場で遭遇する事例を挙げます。

正しい日本語って何なんだろう

ここに以下のような文があります。
[ ]には何が入りますか。
多くの志士[ ]輩出した松下村塾
「が」が極少数ですね。
「を」が圧倒的に多いですね。
「の」ですか。それは九州の方ならありうるかも。
だいたい意図どおりの結果です。

「輩出する」は自動詞なので、本来は「が」だと言われていたんです。
でも今は他動詞の用例、「を」を採る人も増えてきた。
そういう辞書までも増えてきたんです。

以前は「を」と書くと苦情をいただいたのに、最近は「が」と書くと苦情が増えてきました。
他動詞説を採る人が増えてきたんですね。
「が」にすると苦情が年に3回あります。
わざわざ電話で苦情する人は少ないだろうから、実は何百倍の人が怒っていると思います。

こうなると、もう「が」で押し通すのは現実的ではないでしょう。
でも「が」で上がってきた原稿を、あえて「を」に直させるのも変です。
ですから、校閲サイドでは何もしないことにします。

いくら「正しい日本語」で押し通そうとしても、振り向けば誰もいないでは困りますよね。

新聞は間違ってはいけないけど、かつ、生きた日本語を書かなければならない。

今日は脈絡なく色んな話をします。

校正と校閲

さきほど(※道広さんから)校正と校閲という話がありました。
原稿を見るのが校正。
データを見るのが校閲。
でも、中身が分かっていないとどっちもできないですよね。
ですから、きっちりは分けられません。

昔は手で書いていた

もっと昔は藁半紙に5文字×3行で書いていました。
(※注記:元記事は「5文字×30行となっていましたが、深沢の誤りでした。スミマセン。詳しくは比留間さんのコメントをごらんください。)
刷り上がりの1行が1枚になります。
遠い昔、すぐれた編集者は、紙をつまんで、つまんだ厚さで行数が分かったそうです。

今はデータ入稿なので元原稿がありません。
その結果、変換ミスはあるんですが、誤植は減りました。

変換ミスいろいろ

まれにIME、変換ソフトの間違いがあります。

一番驚いたのが、昔の製品で、「れいそる」で変換するとセレッソと出たことです。
当時まさに、この2チームは同時にJ1昇格を決めました。
用語の追加で1行ズレたんじゃないでしょうか。

IMEは今は寡占状態ですが、90年代はIMEは群雄割拠でした。
メーカーに電話したら、来月治りますって言ってました。

MS-IMEもまれにあります。
「たたり」(祟り)で検索すると人名の「たかし」(崇り?)が出ます。
(※注記:元記事に深沢の誤りがありました。スミマセン。詳しくは比留間さんのコメントをごらんください。)

ロシアの政治家メドベージェフを、メドべージェフと打ってしまう。
べがひらながになってしまうんですね。
メドはメドがつくという言葉を打ったんでしょうか。
ジェフは外国人の人名でしょう。
松田聖子の恋人ですね。
古いですか。

メドベージェフがメドべージェフになっても、紙面上は大した問題じゃありません。
ただ、蓄積したデータで問題になります。
社内向けには、名前を単語登録しました。

原発問題で登場した五百旗頭と書いていおきべさんという方がいましたが、「五百頭旗」と頭と旗が逆になってしまいました。
このように、一発変換できない難しい名前は間違ってしまいます。
一ヶ所だけ間違ってたんです。
痛恨のエラーです。

こういうのは、システム的にサポートします。

書き原稿がなくなって衰退している技術

昔は原稿と付き合わせる読み合わせというのがありましたが、今は直接データ入稿ですからありません。

あと、字解き(じとき)というのがあります。
「直」という字を「直線のチョク」と言う風に表現します。
これは現在も行っていますが、技術が衰えています。

ただ、昔の人に聞くとやり方が古くてそのままは使えないです。
「肇」という字を伝えるのに「肇国(ちょうこく)のチョウ」とか言っても誰も分からない。
ハナ肇のハジメもだんだん通じなくなってきました。
桜田淳子の淳も難しいです。

司馬遼太郎のリョウのことを、「ハニカミリョウ」と言った奴がいました。
ハニカミ王子こと石川遼のことでしょう。
かなり考えないと分からない。
独自路線を行っていますね。

昔は、原稿を地方から電話で送る(記事を口で言って、受信者に書き取らせる)電話送稿というのがありました。
こんな技術は無形文化財です。

記事以外の校閲

連載小説とか、四コマ漫画ですね。
これも校閲します。
分担が分かれていますが。

ある連載小説の担当者が夏休みで、ひどい目にあいました。
作家による間違いが多くて、深夜に校了しました。
(※記憶があいまいになっています)

マンガでは、手書き文字で、明らかな誤記がありました。
担当ではないが、横で見ていて気づきました。

用字用語、ルール

今日ここに朝日のハンドブック、用語の手引きを持ってきました。
これは社内用で、緑の表紙です。
みなさんは社外用の、エンジの表紙のものをお買い求めになることもあると思います。

実用漢字、送り仮名規則は、国の施策に則っています。

もともと新聞はやさしく書きたかったんです。
これは戦前から考えていて、大正12年に新しい用字制限を始めようとしたんですが、ちょうど関東大震災の日に当たって、一回延期になったんです。
それで、改めて大正14年に用字制限を始めました。

その反省も含めて、(※戦後、朝日新聞は)当用漢字に真面目に取り組んでいました。

ただ、常用漢字になって、かなり字が増えました。
普通の人がそのまま読めるのかっていう。
「鬱」とかですね。

元の当用漢字でも読めてなかった字があります。
賜杯の賜(し)がそうです。
10年前に、高校3年生6000人にアンケートを取りました。
4.2パーセントしか読めなかったそうです。
高校3年生といえば、相当数が受験勉強をしていると思われるので、一般社会人がこれよりぐんと読めているとは考えにくい。

腸(ちょう)って書いてきた奴がいます。
恩腸上野公園って言う。
どこだよ!

だから、常用漢字と言っても、常用されないし読めもしない漢字が増えました。

こういうのは、常用であってもふりがなを振ろうとなっています。
最近では「嫡出子」がありましたね。
「てきしゅつし」とも読めるけど、一般には「ちゃくしゅつし」。
これはルビを振ります。

弾劾裁判のガイとかですね。

訂正記事いろいろ

ではここで、過去出した訂正記事をいろいろ出します。

「酪農家に補助金」と書くべきところを、「酷農家に補助金」となってしまいました。

ラクって字がヒドいになってしまったんです。
これは口蹄疫が猛威をふるっていたころで、意味深な感じになってしまった。
らくのうって打てば変換するのに、なぜこういう間違い方が出来るのか。
オペレーターが手打ちでやったんですけど、酪農って言葉を知らなかったんでしょうか。

これは見出しだけが間違って、記事は合ってました。
見出しは別の人が打つんです。

「罹災(りさい)証明」と書くべきを「羅災(りさい)証明」としてしまった。

後ろのは、りさいとふりがなが振っていますが、羅生門のラになっています。

ふりがなが振ってあると、校閲者も見落とすんですよ。
ふりがなの方を読んでしまうんでね。

なぜ変換なのにわざわざ間違うのかって例は多いです。
他に毘沙門天をのビを昆布のコンにするとかね。

大野豊、先発に控えに大車輪

これは「先発に抑えに」ですよね。
「控えに」って。
大車輪じゃないじゃん。
これは、大阪の早版です。
追っ掛けで直しましたが、島根に間違った版が届いてしまいました。
これは痛恨のミスです。
大野は島根出身なんです。
島根は大阪から遠いんですよ・・・。

(※あとで懇親会の時に質問したが、訂正記事は基本間違った版に載せる。12版で間違った場合は後日の12版に訂正を載せるので、間違った新聞が届いた地方の人しか訂正記事を読まない。しかし、追っ掛け(●)の場合は、同じ版であっても正しい表記と間違った表記が混在する。この場合は訂正記事に
一部地域において、「大野豊、先発に控えに大車輪」と書かれていましたが、「大野豊、先発に抑えに大車輪」の誤りでした。

と書く。)
名古屋の面積は326平方㍍?
これは326平方㌔メートルです。
数字に目が行って、単位を見落としちゃうんですね。

万とか勝手につけちゃう。
新設病院が1万ヘクタールってのもありました。
大体山手線の内周が6500ヘクタールです。
これは、病院の発表がまちがっていました。

前半はここまでです。

練習問題

それでは、2つほど記事を持ってきましたので、みなさんにお配りします。
誤りを見つけてみてください。

(ギリシャをはじめとするテロ事件の記事)

★「暴動発声以来・・・」は「発生」ですね。

★「警察暑」となっていますが「警察署」ですね。

★「トルコの首都イスタンブールで、領事館に赤いペンキ」とあるが、アンカラではないか。領事館というから事件はイスタンブールで起こっているようではあるが

はい、これは素晴らしいですね。
トルコの主要都市にすべきですね。
これは定番です。
オーストラリアの首都シドニーとか、スリランカの首都コロンボとか、カナダの首都モントリオールとか、書きがちです。

★「余談を許さない」は予断ですね

★最後に句点がありません。

■これは誤植ではなくて質問なんですが、「トルコのイスタンブールで同国の左派グループが」というのの同国がギリシャかトルコか分かりにくいです。

そうですね。
ほとんど直前のものを受けることになりますので、ここはトルコですが、たしかに同で紛れることはあります。

■この記事は、第1段落が都市の暴動、第2段落が刑務所の暴動と来て、その後に都市の暴動の話に戻っている。これ、都市の暴動の話をまとめた方が話の流れがいいのではないか

この場合は、第1段落をコンパクトにしたかったのではないかと思います。
第1段落は、見出しとならんで、そこだけ読んでも全体が分かるような文章にしたい。
前文的な役割です。

(東広島市の白骨死体)

★ジャンバーはジャンパーですね

そうです。
これ年配の方が間違えますね。

★運動靴が一足だけ残っていたというのは、片方だけでは

そうです。
すばらしい!
特に印象に残ることを書くべきなので、一足だけのはずはないですね。
これは片方だけだったんです。

★いなかったたたためになっています。

いなかった
たため
そうですね。
改行前後は要注意です。

★24日に死体が発見されて、警察は23日も捜索する予定はおかしい。

すばらしい!
これは25日もです。

★白骨死体なのにめだった外傷はなく、というのはどうでしょう

ううん、たぶん肉があったとしたら外傷はないということなんでしょうか。
でも、こういうのは警察公報の言い分だと思います。

受講者が見つけた誤植

(※以下は、受講者が見つけた誤植のツッコミ)

★広告の誤り。「実験す」に「ためす」とルビが振られている。これは実の消し忘れか?

テレビ欄の広告だから、直前に差し込んだんでしょうね。
広告は校閲センターの管轄外です。
気づけば教えますが。

★URLで、http:/の次で改行しているのはどうか

新聞ではこれはあまりこだわりません。
(※注記:元記事に深沢の誤りがありました。スミマセン。詳しくは比留間さんのコメントをごらんください。)
こういう新しいものは難しいです。
asahi.comがashai.comになっているのを見ました。

★ハイフン-と音引きー

これは見分け辛いですね。
マル(○)とゼロ(〇)とか、よくやります。

新聞は禁則はゆるいです。
行頭の拗音促音の行頭禁則(※行の頭に「っ」「ょ」が来ないようにする)とかは、やってる時間から、許します。
あと、1段12文字だから、狭いので、あんまり追い出してると、スカスカになります。
よその新聞はもっと天地が小さいんですけど。

★シャープ(♯)と井桁(#)

これも難しいです。
社説でツイッターを扱ったとき、ハッシュタグをシャープにしてしまったことがあります。
印刷だから実害はないんですが、こういうのは、通常新聞でつかわないから難しいですね。

★推理小説の例。加害者と被害者が逆転している

記事の途中から加害者と被害者が逆転する例は、ほぼ毎年起こっています。
あと、事件が起こった地名が容疑者になることがある。
阿佐ヶ谷容疑者はとか。

★ここに(※もじもじカフェの資料が)音引きとマイナスが混じる、と書いているが、交じるでは?

難しいですね。
ニュアンスとしては、あえてまぜるのは交。
変なものがまざるのは混。
そう考えればここでは混じるでいい気がします。
ただ、新聞は世間よりは交に倒しがちです。

でも、日本語の訓読みは難しいです。
しょせん大和言葉なので、きれいにはいかないです。
エイヤーで行くしかありません。

質問コーナー

-これは事前のアンケートにあったぶんです。「印刷会社につとめていますが、刷りなおしとか、次回はタダにするとかで、事故金額が400万円になったことがあります。新聞でもこういう金銭的な被害はあるんでしょうか」

金額的な事故はないと思います。
昔はフィルムに撮っていたので、撮り直しのコストが掛かっています。
コンピューターになってからも、しばらくは掛かっていました。
いまはCTPと言って、データを直接印刷しますので、そのコストは減りました。
昔ならお前の給料飛んでたよっていうのは、良く言われます。

★誤植で訴訟はないですか

朝日新聞は別の意味で恒常的に訴訟を抱えていますが、校閲ではないですね。

★さきほど訂正というのがありましたが、新聞は、おわびではなく訂正なんですか

非常に大きな実害があればおわびします。
加害者と被害者の取り違えはお詫びです。
同じ記事が2回紙面に載っちゃうとお詫びです。
あと、配達遅れもお詫びです。

★手書きマンガの修正は、現場でやるのか、マンガ家に戻すのか

いろいろです。
デザイン担当がレタッチする場合もあるし、マンガ家に頼むこともあります。
いずれにしても、マンガ家には確認を取ります。
誤字であっても、わざとかもしれない。

マンガにはストックが何本かあります。
だから、陰惨な事件の記事の横に暴力的なやつはまずいので差し替えよう、などの判断をします。

マンガ家に連絡が取れない場合、明らかな誤字で、必然的でない場合は、修正します。

★校正者は、寝ないのか

気を失ってる奴は、良く見ます。

緊急のニュースは、2~3分で上げないと行けない。
新聞は、ニュースを伝えてナンボなので、しょうしょう不格好でもニュースが最優先です。

★ATOKで、炭疽菌が疸になってるやつがあって、これは毎日新聞が訂正していましたね

★永久機関のような、疑似科学はどうしますか?

真偽は校閲部門では難しいですので、科学部に聞いたりはします。
iPSを臨床で使ったって人がいて、読売と共同が引っかかったんですけど、ウチの科学医療部に聞いたら、この人は前からこんなこと言ってましたっていってました。

★日航ジャンボ機のドラマで電話送稿していましたが、いまでもありうるんでしょうか?

見たままを伝えることですよね。
ありうると思います。

★校閲はどうするんですか

メールで戻すと思います。
携帯でチェックできる。

★記者のツイッターは校閲しないんですか

そんな暇はありません(笑)。

いや、おっしゃる問題は分かります。
でも、もともとゆるいメディアであるので、ライブ感を大事に。

★夕刊が3版、4版なのは、結局なぜなんですか

これは朝日新聞特有の事情ですが、昔は早版は1、2版もあったんです。
で、早い時間のがなくなったんですね。

★版が変わると記事ばバッサリカットされ、ある版では間違ってた記述がなくなることがありますね。

新聞の文字量は、昔の半分です。
新聞の読者は高齢者が多いので、競うように文字を大きくした結果です。
ページは増やしてますけどね。

だから、昔の記事は冗長なんです。
講釈師調。

いまはデータを詰め込んでいます。
校閲者の負担は同じです。

★大僧正の、酒井雄哉さんがなくなったとき、朝日新聞は「哉」の八画目がない字を使っていました。酒井さんは八画目がない字を使っていて、ご著書の名前もそうなっていますが、途中から朝日も「哉」にしていました。

八画目がない字は異体字とされます。
新聞は、人名であっても正字に統一するつもりですが、当事者の強い希望でゆるやかな運用を行います。
これは確か朝日の特ダネだったと思いますが、お寺の関係者から情報を得て、最初は本人が使ってらっしゃったのを使ったんだと思います。

(※懇親会で柔道のシノ原の話もあった。戸籍上は竹+条であるが(イ|がない)、各社は篠原で統一した。しかし朝日は正しく竹+条と書いたのに、朝日文字かと冤罪を掛けられた。篠原は結婚を期に戸籍を篠原に改めたので、朝日も篠原にした。しかし、柔道着の刺繍は相変わらず竹+条である。)

青森県知事の北村正哉さんも途中までノなしで表記していました。
(※注記:元記事に深沢の誤りがありました。スミマセン。詳しくは比留間さんのコメントをごらんください。)

これは、時期によって揺れてしまいます。
戸籍が正しいかっていうと、何万字あっても無理になってしまいますから、正字主義ですが、一方で個人の希望も入れることがあります。

★連載番号飛ばしの間違いはありましたか。私(※質問者さん)は、プレゼントに絡んでいて大問題になったことがあります。

これもあります。

(※注記:元記事に深沢の誤りがありました。スミマセン。詳しくは比留間さんのコメントをごらんください。)

上中下で間違って、下なのに中って打ってしまって、続きはもうないんです、スミマセンってのもありました。
前の日のを敷いて作業をするといいと思います。

-(道広さんから)いぜん科学雑誌の編集をしていたとき、(月ではなくて)号数の貼り間違いは、精神論だけでは防げないので、年間予定表にどの月はどの号だ、と書いていて、チェックしていました。前の号を見る、だと、一回ズレたらずーっとズレてしまいます。

アメリカの新聞で、通巻号数が入っているんだけど、百年ズレっぱなしという例があったそうです。

★書籍校正と新聞校正の違いはなんですか

責任は面ごとにきめます。
面ごとに担当部員がいて、これを面担(めんたん)と言います。

作業が一日単位で終わるので、精神的には楽です。

最近はウェブがあるから、蓄積するじゃないかという話にもなりますが、ウェブはスタイルがまた違いますね。
バージョンが確定しないので。

★Webは訂正を入れるのか

字句はそっと直します。
誤報はお詫びを入れます。

(※さきほどの話に戻りますが)新聞は色んなものが読めますね。
書籍は好きなことだけずっと読めます。
また、記事作りにも積極的に関われる。
そういう違いがありますね。

★間違いを見つけたらニヤッとしますか

ハイ(笑)

へそまがりなんでしょうかね。
単純に成果があがってうれしいってのもあります。

でも、ずっとチェックしてて、間違いがなかった日も意味があるんですよ。

-警官に似てますか

どっちかというと、消防署というか、ガードマンですね。

★間違いを見つけてご褒美はありますか

たまに部長賞が出ます。
(同行された女性部員の方に)何かもらったよね。

■ハイ、もらいました。あれは天人です。てんじんというのは、天声人語のことです。ある著作の発行年次が、昭和初期と書いてあったんだけど、そうとはいいきれないんじゃないかと思って、図書室に行って調べたら、大正末期にすでに刊行されていることがわかって、賞をもらいました。

これ、たいしたことないじゃないか、と思われるかもしれませんが、限られた時間の中で、図書室に行くのがすごいんです。
天人は著者が2人いて、助手もいるから、そうは間違えないはずなのに。
これ、図書室まで行って、間違ってなかったら、そのムダな時間、他の記事のチェックが削られちゃうわけだから

■図書室に行ってるとき、私も、しまったかなとは思いました(笑)

★同じ間違いを何回もする人は、フィードバックするのか

記者に直接はないです。
校閲がコンタクトするのはデスクです。
これでOK、と言って記事を送信する、リリースボタンを押すのはデスクだから。

記者が刷り上がった新聞を見て、自分の書いた記事がどう載っているか見て、学ぶかどうかは、人によります。

(※修正の他に)扱いが悪い、短くなっている、見出しが小さい。
なぜか。
真面目に考える人もいます。

マクレランっていうアメリカの政治家を、何回もマクラーレンって書く人がいる。
何回も間違える人がいる。
デスクも何回も見逃す。
こういうのは、記者の名前見て、気をつけろっていうのはありますね。

★部との間で険悪な人間関係はありますか

いや、そこは司司で割りきっています。

新聞には校了がありません。
校閲が済んでないから印刷待ってくれってことはないんです。
何時までっていう時間が決まっていて、それまでに校閲できなかったらそのまま印刷されます。

★★★

以上である。
文化と実用、事件が交わるところのお話で、大変エキサイティングはお話だった。
もじもじカフェはいつも、大変楽しい。