先週に引き続いて月蝕歌劇団『ガロア群論序説 不思議の國のアリス ガロアと二・二六』を見てきた。
本当に好きだな!
いや、もともと二回連続公演なので、予定の行動である。

今回は寺山修司作品ではなく、高取英じしんの脚本、演出によるものだ。
音楽は寺山作品と同じくJ・A・シーザーである。

「不思議の国のアリス」はルイス・キャロルというイギリス人が、近所のリデル家に住む少女アリスに請われて書いた小説であるが、キャロルは筆名であって、もともとはチャールズ・ドジソンという数学者であった。
「アリス」の中には色々な論理的な言葉遊びが入っていて、それをアメリカの数学者マーティン・ガードナーが注釈した本もあってこれが面白い。

演劇の中にはアリスの他に、エヴァリスト・ガロアが出てくる。
「数学つながり」だ。
ガロアはフランスの天才的数学者だが、同時にフランス革命に参加して、最終的に恋愛問題がきっかけで決闘に巻き込まれて死んだというめちゃめちゃ波乱の人である。

ガロア、アリス、そして二・二六というキーワードが、一続きに題名に入っているのを初めて観たときは、ちょっとおかしいんじゃないの、と思ったが、これらのキーワードがすべてがっつり入っていた演劇なので驚いた。
詳しくはネタバレを避けたいので機会があったらご覧になることをおすすめする。
21日月曜日までやっている。

「不思議の國」のクニが旧字体になっているのも考えたら意味深である。
『百年の孤独』にも感じたことだが、2013年のいま見ることに、意味があるような気がする。

高取氏の脚本は寺山作品に比べるとグンと分かりやすい。
それはいま現在の時事を踏まえて、新しい言葉で書かれているからだろう。
寺山の舞台も、高取氏が先日のパーティで話されていた寺山が生きていた時代の騒乱の中で見れば、より切実に理解できたのではないだろうか。
また、高取氏が現代に書いた舞台を見ることで、寺山作品への理解も深まるような気がした。

細かいギャグがたくさんあって、客席からは笑いがはじけていた。
寺山作品にも笑いが多いのだが、正直みているときは「ここで笑っていいのかなあ」と思ってそれほど声を出して笑えなかったのである。

それにしても二回連続公演は大変である。
ほとんど同じ俳優さんが出るのだ。
若い俳優さんが多いのだが、みんな頭の中どうなってるんだろうと感心した。
また、ドジソン役のガイジンのエリック・デュモンさんがすごかった。
日本語が達者で、「数学者版帝都物語」のような快/怪演だった。

そして快/怪演と言えばマンガ家、田村信先生の演技もすごかった。

先生、めちゃくちゃセリフあるじゃないですか!
しゃべりっぱなしじゃないですか!
今回完全に詰まってしまうところもあったが、その処理も含めて、暖かい味のある演技で良かった。
と、男優さんのことばかり書いてしまったが、むろん基本的に若い女優さんが大勢出てくる。
「アリス」もおすすめである。
Alice in the Wonderland