前回の続き。
日本語1音の名詞を分類する試みとして、前回「津」を分析した。
本シリーズ初の取材旅行であった。
第1回では、「胃」(い)には以下のような特徴があると分かった。
・物体である
・自然に存在する
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・一個の独立したものであるとも、連続したものの範囲であるとも言える
・より大きな別のものに従属したものとしてのみ存在する
・生命を持っている
・母体から切り離されると死ぬ
・母体に対してだいたい大きさの比率が決まっている
・母体の大きさによって絶対的な大きさはまちまちである
・人間にもある
第2回では、「鵜」(う)には以下のような特徴があると分かった。
・物体である
・自然に存在する
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・生命を持っている
・一個の独立したものである
・空中を移動できる
・水上を速く移動できる
・独立して生きている
・種類の中でだいたい大きさが決まっている
第3回では、「絵」(え)には以下のような特徴があると分かった。
・情報であるか、その情報を定着させた物体(画材)である
・人工のものである
・目に見える(※「区」との区別のために追加)
・人間が鑑賞するためのものである
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・一個の独立したものである
・生命を持っていない
・どんなに小さいことも、どんなに大きなこともある
第4回では、「尾」(お)には以下のような特徴があると分かった。
・物体である
・自然に存在する
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・一個の独立したものであるとも、連続したものの範囲であるとも言える
・より大きな別のものに従属したものとしてのみ存在する
・生命を持っている
・母体から切り離されると死ぬ
・母体に対してだいたい大きさの比率が決まっている
・母体の大きさによって絶対的な大きさはまちまちである
・人間にはない
第5回では、「蚊」(か)には以下のような特徴があると分かった。
・物体である
・自然に存在する
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・生命を持っている
・空中を移動できる(※木との区別のために必要)
・一個の独立したものである
・独立して生きている
・種類の中でだいたい大きさが決まっている
・羽毛がない
第6回では、「木」(き)には以下のような特徴があると分かった。
・物体である
・自然に存在する
・生命を持っている
・一個の独立したものである
・一か所に固定している(※蚊、鵜との区別のために必要)
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・固い幹を持ち、何年も生き続け、毎年実が生る
・大きさがまちまちである
第7回では、「区」(く)には以下のような特徴があると分かった。
・情報である
・人工のものである
・目に見えない
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・それ自身独立して存在しない
・ある決まりに従って決められたそのものを指す(※差とここが違う)
・生命を持っていない
・どんなに小さいことも、どんなに大きなこともある
・人為的なものであり、何を指すかはある人の勝手で決まる(※これは「差」にはなじまない)
第8回では、「毛」(け)には以下のような特徴があると分かった。
「毛」
・物体である
・自然に存在する
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・一個の独立したものであるとも、連続したものの範囲であるとも言える
・より大きな別のものに従属したものとしてのみ存在する
・生物の一部としてへばりついているが、死んでいる(※尾と比較して特徴的)
・母体に対してだいたい大きさの比率が決まっている
・母体の大きさによって絶対的な大きさはまちまちである
・人間にも動物にもある(※尾と比較して特徴的)
そして第9回は、「差」(さ)には以下のような特徴があると分かった。
「差」(さ)
・情報である
・人工のものである
・目に見えない
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・それ自身独立して存在しない
・2つのものの関係を指す(どちらか一方がなくなると消えてしまう)(※区とここが違う)
・生命を持っていない
・どんなに小さいことも、どんなに大きなこともある
そして第10回は、「死」(し)には以下のような特徴があると分かった。
「死」(し)
・現象である
・自然のものである
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・それ自身独立して存在しない
・ある肉体に起きる現象、状態を指す
第11回は、「酢」(す)には以下のような特徴があると分かった。
「酢」(す)
・物体である
・人工のものである
・目に見える
・液体である
・人間が食べるためのものである
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・生命を持っていない
・どんなに小さいことも、どんなに大きなこともある
第12回は、「背」(せ)には以下のような特徴があると分かった。
「背」(せ)
・動物の表面の一区画である<=新しく導入した
・自然に存在する
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・連続したものの範囲であるとも言える
・より大きな別のものに従属したものとしてのみ存在する
・生命を持っている
・母体から切り離されると死ぬ
・母体に対してだいたい大きさの比率が決まっている
・母体の大きさによって絶対的な大きさはまちまちである
・人間にもある<=ここが尾と違う
第13回は、「田」(た)には以下のような特徴があると分かった。
「田」(た)
・地面の一区画である<=新しく導入した
・加工されている<=新しく導入した
・人工のものである
・目に見える
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・一個の独立したものである
・生命を持っていない
・小ささ、大きさに限界があるが、差が大きい<=新しく導入した
第14回は、「血」(ち)には以下のような特徴があると分かった。
「血」(ち)
・物体である
・自然に存在する(※ここが酢と違う)
・目に見える
・液体である
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・生物の一部として内蔵されており、生きている(※ここが毛と違う)
・人間にも動物にもある
・どんなに少ないことも、どんなに多いこともある※訂正!
第15回は、「津」(つ)には以下のような特徴があるとした。
・ある空間の範囲を差す
・世界に一つしかない
・大きさが厳密に定まっている
・人為的なものである
これでは地球上(宇宙中)の地点すべてに当てはまってしまう。
情報であるか/物体であるか(現象ではない)、人工のものか/自然のものか、目に見えるか/見えないかは判断を保留した。
どちらでもないというよりは、そういう分類に当てはまらないという感じである。
まあ「津」以外の地名に出会ったときに、その地と津の違いにおいて、津の津性、津の津たる所以が見えてくるかもしれない。
第16回の今回は「手」(て)について考える。
日本語1音の名詞を分類する試みとして、前回「津」を分析した。
本シリーズ初の取材旅行であった。
第1回では、「胃」(い)には以下のような特徴があると分かった。
・物体である
・自然に存在する
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・一個の独立したものであるとも、連続したものの範囲であるとも言える
・より大きな別のものに従属したものとしてのみ存在する
・生命を持っている
・母体から切り離されると死ぬ
・母体に対してだいたい大きさの比率が決まっている
・母体の大きさによって絶対的な大きさはまちまちである
・人間にもある
第2回では、「鵜」(う)には以下のような特徴があると分かった。
・物体である
・自然に存在する
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・生命を持っている
・一個の独立したものである
・空中を移動できる
・水上を速く移動できる
・独立して生きている
・種類の中でだいたい大きさが決まっている
第3回では、「絵」(え)には以下のような特徴があると分かった。
・情報であるか、その情報を定着させた物体(画材)である
・人工のものである
・目に見える(※「区」との区別のために追加)
・人間が鑑賞するためのものである
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・一個の独立したものである
・生命を持っていない
・どんなに小さいことも、どんなに大きなこともある
第4回では、「尾」(お)には以下のような特徴があると分かった。
・物体である
・自然に存在する
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・一個の独立したものであるとも、連続したものの範囲であるとも言える
・より大きな別のものに従属したものとしてのみ存在する
・生命を持っている
・母体から切り離されると死ぬ
・母体に対してだいたい大きさの比率が決まっている
・母体の大きさによって絶対的な大きさはまちまちである
・人間にはない
第5回では、「蚊」(か)には以下のような特徴があると分かった。
・物体である
・自然に存在する
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・生命を持っている
・空中を移動できる(※木との区別のために必要)
・一個の独立したものである
・独立して生きている
・種類の中でだいたい大きさが決まっている
・羽毛がない
第6回では、「木」(き)には以下のような特徴があると分かった。
・物体である
・自然に存在する
・生命を持っている
・一個の独立したものである
・一か所に固定している(※蚊、鵜との区別のために必要)
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・固い幹を持ち、何年も生き続け、毎年実が生る
・大きさがまちまちである
第7回では、「区」(く)には以下のような特徴があると分かった。
・情報である
・人工のものである
・目に見えない
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・それ自身独立して存在しない
・ある決まりに従って決められたそのものを指す(※差とここが違う)
・生命を持っていない
・どんなに小さいことも、どんなに大きなこともある
・人為的なものであり、何を指すかはある人の勝手で決まる(※これは「差」にはなじまない)
第8回では、「毛」(け)には以下のような特徴があると分かった。
「毛」
・物体である
・自然に存在する
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・一個の独立したものであるとも、連続したものの範囲であるとも言える
・より大きな別のものに従属したものとしてのみ存在する
・生物の一部としてへばりついているが、死んでいる(※尾と比較して特徴的)
・母体に対してだいたい大きさの比率が決まっている
・母体の大きさによって絶対的な大きさはまちまちである
・人間にも動物にもある(※尾と比較して特徴的)
そして第9回は、「差」(さ)には以下のような特徴があると分かった。
「差」(さ)
・情報である
・人工のものである
・目に見えない
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・それ自身独立して存在しない
・2つのものの関係を指す(どちらか一方がなくなると消えてしまう)(※区とここが違う)
・生命を持っていない
・どんなに小さいことも、どんなに大きなこともある
そして第10回は、「死」(し)には以下のような特徴があると分かった。
「死」(し)
・現象である
・自然のものである
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・それ自身独立して存在しない
・ある肉体に起きる現象、状態を指す
第11回は、「酢」(す)には以下のような特徴があると分かった。
「酢」(す)
・物体である
・人工のものである
・目に見える
・液体である
・人間が食べるためのものである
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・生命を持っていない
・どんなに小さいことも、どんなに大きなこともある
第12回は、「背」(せ)には以下のような特徴があると分かった。
「背」(せ)
・動物の表面の一区画である<=新しく導入した
・自然に存在する
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・連続したものの範囲であるとも言える
・より大きな別のものに従属したものとしてのみ存在する
・生命を持っている
・母体から切り離されると死ぬ
・母体に対してだいたい大きさの比率が決まっている
・母体の大きさによって絶対的な大きさはまちまちである
・人間にもある<=ここが尾と違う
第13回は、「田」(た)には以下のような特徴があると分かった。
「田」(た)
・地面の一区画である<=新しく導入した
・加工されている<=新しく導入した
・人工のものである
・目に見える
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・一個の独立したものである
・生命を持っていない
・小ささ、大きさに限界があるが、差が大きい<=新しく導入した
第14回は、「血」(ち)には以下のような特徴があると分かった。
「血」(ち)
・物体である
・自然に存在する(※ここが酢と違う)
・目に見える
・液体である
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・生物の一部として内蔵されており、生きている(※ここが毛と違う)
・人間にも動物にもある
・どんなに少ないことも、どんなに多いこともある※訂正!
第15回は、「津」(つ)には以下のような特徴があるとした。
・ある空間の範囲を差す
・世界に一つしかない
・大きさが厳密に定まっている
・人為的なものである
これでは地球上(宇宙中)の地点すべてに当てはまってしまう。
情報であるか/物体であるか(現象ではない)、人工のものか/自然のものか、目に見えるか/見えないかは判断を保留した。
どちらでもないというよりは、そういう分類に当てはまらないという感じである。
まあ「津」以外の地名に出会ったときに、その地と津の違いにおいて、津の津性、津の津たる所以が見えてくるかもしれない。
第16回の今回は「手」(て)について考える。
これは「津」を旅行した時に撮影したぼくの手だ。
「津」で撮った「手」!
あはははは。
面白がってるのぼくだけですか。
「手」は人間の前足のことである。
人間だけは直立歩行しているので、前足を手と呼ぶことによって、人間で足と言えば後足、ということになった。
そもそもまっすぐ立っているので後ろ足というのはおかしくて、下足(したあし)、とでも言うべきだ。
いずれにしても手は手、足は足なので、そういう言い換えはしない。
他の哺乳動物は4足歩行なので、前足と後足の区別が存在する。
「ぼく足が痛くて」と言うとき人間の場合「右ですか左ですか」で済んでしまうが、犬の場合は「右の前足です」と言わなければならない。
英語の場合動物の足は前後ひっくるめてpawと言う。
pawの意味 - 英和辞書 - goo辞書
Paw - Wikipedia, the free encyclopedia
paw - pronunciation of paw by Macmillan Dictionary
ポーと読む。
猿は果物を手でむいたりするから手と呼ぶ。
「猿の手」という怖い小説があった。
ただしこの小説の原題は「Monkey's paw」である。
一部の猿の場合は後足も指が深く裂けていて手並みに器用である。
ああいうのは前手、後手と書くべきかもしれない。
ところで、後と書いてウシロと読ませる場合は後ろと余計な送り仮名を書いてもいいことになっている。
これはアト、ノチ、ゴとの誤読防止のためだと言う。
送りがな - Wikipedia
たとえば上にぼくはウシロデと読ませるつもりで後手と書いたが、これはゴテと読み間違える。
だから後ろ手と書いてもいいのだが、前もマエ、サキ、ゼンといくつか読みがあるのに前えとは書かない。
なぜだろう。
動物の手足に戻るが、哺乳動物以外の場合はほとんど足である。
虫は全部足だ。
フンコロガシは足を使って器用に丸い玉を作るが、あれは全部足でやっているのだ。
虫の足はleg(脚)と言うようだ。
Insect - Wikipedia, the free encyclopedia
タコの足は、学術的には腕と呼び、英語でもarmと呼ぶそうだ。
タコ - Wikipedia
この日本版Wikipediaの書き方だと、英語をしゃべる学者以外の人がarmと呼ぶのかlegと呼ぶのか分からないが、英語版WikipediaおよびMerriam-Webster Dictionaryによると、すべてarmと呼ぶ。
Octopus - Wikipedia, the free encyclopedia
Octopus - Definition and More from the Free Merriam-Webster Dictionary
オスのタコの8本足のうち一本は、交接腕と言って生殖器である。
これは精包という精子が入ったカプセルを持ち運ぶために溝がついた脚であるというが、8本のうちどれが交接腕になるかはまちまちだと言う。
つまりメスは8本全部普通の足だが、オスは7本ピュアな足で1本は生殖器、ということになる。
タコは食べ物がないと自分の足を食べると言われるが、オスがうっかりして生殖器を食べてしまうと大変だと思うが、そのへんはちゃんと注意しているのだろうか。
人間の手に戻る。
人間の手には指が左右5本ずつ、あわせて10本あり、それが10進数の基になったと言われている。
人間の指を英語でdigitとも言うが、これが桁という意味で、デジタルという言葉の基にもなっている。
昔「世界の子供豆知識」のような本で、ドイツのある村には左右の手が6本ずつある人々が住んでいて、その村では12進数が浸透している?とか書いていて、昔ぼくはそれを読んでへぇーと感心して、方々で吹聴していたような気がするが、いま検索したらどうやら(っていうか当然)ガセネタのようだ。
ただし英語でもtenの次にeleven、twelveまでは独立した言葉がなぜかあるし、ダースという12刻みで数える数え方もある。
時計も12時間である。
10よりも12の方が約数が多いので明らかに使いやすいのである。
この12進数はどこから来たのだろうか。
遠い昔12本指で文明を築いた部族がどこかにいたのだろうか。
将棋で駒を一回動かすことを手と言う。
コンピューター将棋の場合、現状では手がないので、指示を受けて棋士の人が代理で駒を動かす。
「あの娘はいつまで経っても仕事を覚えないね」
「あれがあの娘の手なのよ。ああやって親切な男性の気を引こうっていうんだわ。おお嫌らしい」
という文章では、「手」という言葉は戦略とか計略、奸知という意味になっている。
ということで、奥深い考えを伴う人間の行動を「手」と言う。
ぼくは子供の頃から手が不器用で、母親に手が不器用だ、手が不器用だと言われていた。
あまりにも言われるので、手を使う話題になるのがイヤになって、本当に不器用になってしまった。
あれはあんまり良くない教育の方針だったと思う。
いまだにリンゴの皮が剥けない。
まあどんなに手が不器用でも出来るコンピューターの仕事があって本当によかった。
PCの配線はいちいち苦労をしている。
「仕事が手に付かない」、「手に職をつけて」、「仕事が手離れした」などと、人間が行う込み入った作業は全部手でやることになっている。
「口ばっかり動かさずに手を動かしなさいよ」と子供の頃良く言われた。
実際、人間は手に多くの役割を持たせている。
それだけ手が器用で便利ということだが、こんな大きな役割を小さな器官に集中して持たせるのは間違いだという気がする。
江川投手は現役時代、奥さんに「あなたリンゴ剥いて」と甘えられて、激怒して「俺にナイフなんか持たせて、商売道具の指を怪我したらどうするんだ」と言ったという。
(テレビで聞いたのだが、いま検索しても出てこなかったので正確ではない。)
そんな重要な作業の微妙な役割をいつ怪我をしてダメになってしまうか分からない器官に持たせるのは危険ではないだろうか。
★
では「手」の定義に入る。
「胃」、「尾」、「毛」、「背」が似ているが、最も「尾」に似ている。
「尾」(お)
・物体である
・自然に存在する
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・一個の独立したものであるとも、連続したものの範囲であるとも言える
・より大きな別のものに従属したものとしてのみ存在する
・生命を持っている
・母体から切り離されると死ぬ
・母体に対してだいたい大きさの比率が決まっている
・母体の大きさによって絶対的な大きさはまちまちである
・人間にはない
これに対して
「手」(て)
・物体である
・自然に存在する
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・一個の独立したものである
・より大きな別のものに従属したものとしてのみ存在する
・生命を持っている
・母体から切り離されると死ぬ
・母体に対してだいたい大きさの比率が決まっている
・母体の大きさによって絶対的な大きさはまちまちである
・人間にしかない(※尾との違い)
手と尾の違いは人間にあるかどうかだ。
「この箱の中に手か尾が入っています。どっちですか」と言われたとき「それは人間のですか」と聞けば良い。
人間のだったら手だし、人間のでなければ尾だ。
ただし「この箱の中に手か尾か胃は入っています」だとこのやり方はなりたたない。
「それは人間にしかありませんか、人間以外の動物にしかありませんか、人間を含むあらゆる動物にあるものですか」と聞かないといけないのである。
「津」で撮った「手」!
あはははは。
面白がってるのぼくだけですか。
「手」は人間の前足のことである。
人間だけは直立歩行しているので、前足を手と呼ぶことによって、人間で足と言えば後足、ということになった。
そもそもまっすぐ立っているので後ろ足というのはおかしくて、下足(したあし)、とでも言うべきだ。
いずれにしても手は手、足は足なので、そういう言い換えはしない。
他の哺乳動物は4足歩行なので、前足と後足の区別が存在する。
「ぼく足が痛くて」と言うとき人間の場合「右ですか左ですか」で済んでしまうが、犬の場合は「右の前足です」と言わなければならない。
英語の場合動物の足は前後ひっくるめてpawと言う。
pawの意味 - 英和辞書 - goo辞書
Paw - Wikipedia, the free encyclopedia
paw - pronunciation of paw by Macmillan Dictionary
ポーと読む。
猿は果物を手でむいたりするから手と呼ぶ。
「猿の手」という怖い小説があった。
ただしこの小説の原題は「Monkey's paw」である。
一部の猿の場合は後足も指が深く裂けていて手並みに器用である。
ああいうのは前手、後手と書くべきかもしれない。
ところで、後と書いてウシロと読ませる場合は後ろと余計な送り仮名を書いてもいいことになっている。
これはアト、ノチ、ゴとの誤読防止のためだと言う。
送りがな - Wikipedia
たとえば上にぼくはウシロデと読ませるつもりで後手と書いたが、これはゴテと読み間違える。
だから後ろ手と書いてもいいのだが、前もマエ、サキ、ゼンといくつか読みがあるのに前えとは書かない。
なぜだろう。
動物の手足に戻るが、哺乳動物以外の場合はほとんど足である。
虫は全部足だ。
フンコロガシは足を使って器用に丸い玉を作るが、あれは全部足でやっているのだ。
虫の足はleg(脚)と言うようだ。
Insect - Wikipedia, the free encyclopedia
タコの足は、学術的には腕と呼び、英語でもarmと呼ぶそうだ。
タコ - Wikipedia
この日本版Wikipediaの書き方だと、英語をしゃべる学者以外の人がarmと呼ぶのかlegと呼ぶのか分からないが、英語版WikipediaおよびMerriam-Webster Dictionaryによると、すべてarmと呼ぶ。
Octopus - Wikipedia, the free encyclopedia
Octopus - Definition and More from the Free Merriam-Webster Dictionary
オスのタコの8本足のうち一本は、交接腕と言って生殖器である。
これは精包という精子が入ったカプセルを持ち運ぶために溝がついた脚であるというが、8本のうちどれが交接腕になるかはまちまちだと言う。
つまりメスは8本全部普通の足だが、オスは7本ピュアな足で1本は生殖器、ということになる。
タコは食べ物がないと自分の足を食べると言われるが、オスがうっかりして生殖器を食べてしまうと大変だと思うが、そのへんはちゃんと注意しているのだろうか。
人間の手に戻る。
人間の手には指が左右5本ずつ、あわせて10本あり、それが10進数の基になったと言われている。
人間の指を英語でdigitとも言うが、これが桁という意味で、デジタルという言葉の基にもなっている。
昔「世界の子供豆知識」のような本で、ドイツのある村には左右の手が6本ずつある人々が住んでいて、その村では12進数が浸透している?とか書いていて、昔ぼくはそれを読んでへぇーと感心して、方々で吹聴していたような気がするが、いま検索したらどうやら(っていうか当然)ガセネタのようだ。
ただし英語でもtenの次にeleven、twelveまでは独立した言葉がなぜかあるし、ダースという12刻みで数える数え方もある。
時計も12時間である。
10よりも12の方が約数が多いので明らかに使いやすいのである。
この12進数はどこから来たのだろうか。
遠い昔12本指で文明を築いた部族がどこかにいたのだろうか。
将棋で駒を一回動かすことを手と言う。
コンピューター将棋の場合、現状では手がないので、指示を受けて棋士の人が代理で駒を動かす。
「あの娘はいつまで経っても仕事を覚えないね」
「あれがあの娘の手なのよ。ああやって親切な男性の気を引こうっていうんだわ。おお嫌らしい」
という文章では、「手」という言葉は戦略とか計略、奸知という意味になっている。
ということで、奥深い考えを伴う人間の行動を「手」と言う。
ぼくは子供の頃から手が不器用で、母親に手が不器用だ、手が不器用だと言われていた。
あまりにも言われるので、手を使う話題になるのがイヤになって、本当に不器用になってしまった。
あれはあんまり良くない教育の方針だったと思う。
いまだにリンゴの皮が剥けない。
まあどんなに手が不器用でも出来るコンピューターの仕事があって本当によかった。
PCの配線はいちいち苦労をしている。
「仕事が手に付かない」、「手に職をつけて」、「仕事が手離れした」などと、人間が行う込み入った作業は全部手でやることになっている。
「口ばっかり動かさずに手を動かしなさいよ」と子供の頃良く言われた。
実際、人間は手に多くの役割を持たせている。
それだけ手が器用で便利ということだが、こんな大きな役割を小さな器官に集中して持たせるのは間違いだという気がする。
江川投手は現役時代、奥さんに「あなたリンゴ剥いて」と甘えられて、激怒して「俺にナイフなんか持たせて、商売道具の指を怪我したらどうするんだ」と言ったという。
(テレビで聞いたのだが、いま検索しても出てこなかったので正確ではない。)
そんな重要な作業の微妙な役割をいつ怪我をしてダメになってしまうか分からない器官に持たせるのは危険ではないだろうか。
★
では「手」の定義に入る。
「胃」、「尾」、「毛」、「背」が似ているが、最も「尾」に似ている。
「尾」(お)
・物体である
・自然に存在する
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・一個の独立したものであるとも、連続したものの範囲であるとも言える
・より大きな別のものに従属したものとしてのみ存在する
・生命を持っている
・母体から切り離されると死ぬ
・母体に対してだいたい大きさの比率が決まっている
・母体の大きさによって絶対的な大きさはまちまちである
・人間にはない
これに対して
「手」(て)
・物体である
・自然に存在する
・世界に無数にある一般的なものの名前である
・一個の独立したものである
・より大きな別のものに従属したものとしてのみ存在する
・生命を持っている
・母体から切り離されると死ぬ
・母体に対してだいたい大きさの比率が決まっている
・母体の大きさによって絶対的な大きさはまちまちである
・人間にしかない(※尾との違い)
手と尾の違いは人間にあるかどうかだ。
「この箱の中に手か尾が入っています。どっちですか」と言われたとき「それは人間のですか」と聞けば良い。
人間のだったら手だし、人間のでなければ尾だ。
ただし「この箱の中に手か尾か胃は入っています」だとこのやり方はなりたたない。
「それは人間にしかありませんか、人間以外の動物にしかありませんか、人間を含むあらゆる動物にあるものですか」と聞かないといけないのである。