前回の続き。
日本語1音の名詞を分類する試みとして、前回「尾」を分析した。

前々々々回「胃」(い)には以下のような特徴があると分かった。

 ・物体である
 ・自然に存在する
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・一個の独立したものであるとも、連続したものの範囲であるとも言える
 ・より大きな別のものに従属したものとしてのみ存在する
 ・生命を持っている
 ・母体から切り離されると死ぬ
 ・母体に対してだいたい大きさの比率が決まっている(※前回追加)
 ・母体の大きさによって絶対的な大きさはまちまちである(※前回追加)
 ・人間にもある(※前回追加)

そして前々々回「鵜」(う)には以下のような特徴があると分かった。

 ・物体である
 ・自然に存在する
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・生命を持っている
 ・一個の独立したものである
 ・独立して生きている
 ・種類の中でだいたい大きさが決まっている

そして前々回「絵」(え)には以下のような特徴があると分かった。

 ・情報であるか、その情報を定着させた物体(画材)である
 ・人工のものである
 ・人間が鑑賞するためのものである
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・一個の独立したものである
 ・生命を持っていない
 ・どんなに小さいことも、どんなに大きなこともある

そして前回「尾」(お)には以下のような特徴があると分かった。

 ・物体である
 ・自然に存在する
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・一個の独立したものであるとも、連続したものの範囲であるとも言える
 ・より大きな別のものに従属したものとしてのみ存在する
 ・生命を持っている
 ・母体から切り離されると死ぬ
 ・母体に対してだいたい大きさの比率が決まっている(※前回追加)
 ・母体の大きさによって絶対的な大きさはまちまちである(※前回追加)
 ・人間にはない(※前回追加)<=ここが「胃」との違い

胃と尾を分けるのは人間にあるか、ないかである。

さて、今日は「蚊」だ。

Mosquito
「蚊」という漢字は面白い。
虫偏にブンだから蚊である。

上の絵ではなんとなく変な男性のようであるが、ブンブン飛び回って刺す蚊は妊娠中のメスである。
卵を産むのに栄養が必要だから血を吸うそうだ。
迷惑な話だ。

しかしこれは変な気がする。
蚊は人間よりずいぶん先輩であって、中生代からいたと思われる。
大昔はオス同様大人しく木や草の汁を吸っていたと思われる。
それがある日、急に「動物の血っていうのが栄養があるらしいわよ」という話になって吸血活動を始めたのである。
妊娠中のメス同士情報交換の機会があったのだろうか。

蚊は最初軽く挿して、血液が凝固しない薬や麻酔薬である唾液を動物に注射するそうだ。
で、針を深く刺し、血を吸う。
で、麻酔が切れてくるとマヒ感がかゆみに変わるそうだ。

だから、よく「かゆい液を入れなければ血ぐらいいくらでも吸わせてやるのに」という議論があるが、それは間違っていることになる。

さて、蚊を分類しよう。
これはずいぶん簡単だ。
「鵜」とほとんど一緒である。
このように、どんなことでも続けていれば楽になる。
努力をすればするほど努力の必要がなくなってくるということが、この連載にも当てはまる。

「鵜」の特徴は以下の通りである。

 ・物体である
 ・自然に存在する
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・生命を持っている
 ・一個の独立したものである
 ・独立して生きている
 ・種類の中でだいたい大きさが決まっている

しかし、ここでハタと困った。
「鵜」と「蚊」の本質的な違いとはなんだろうか。

もちろん鵜は鳥であって、蚊は虫である。
でも、それは説明であって定義ではない気がする。
「鵜は鳥で蚊が虫なんだよ」「フーン」という感じだ。
じゃあ鳥ってなに、虫ってなにということになる。

鳥と虫の本質的な違いが分かればいい気がする。
いろいろ考えたが「羽毛があるかどうか」「足が2本か6本か」「血を吸うか吸わないか」「益獣か害虫か」など、いずれも特徴、豆知識であって、本質的な違いではないような気がする。

じゃあ「本質的な違い」って何なの、どんな答えならあなたは満足するの、という話もある。

ちょっと考えに行き詰ってしまったが、ここは無難に「羽毛があるかどうか」で分けたい。
絶対に誤りがなく蚊と鵜を類別出来るからである。

「鵜」の定義は以下の通りである。

 ・物体である
 ・自然に存在する
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・生命を持っている
 ・一個の独立したものである
 ・独立して生きている
 ・種類の中でだいたい大きさが決まっている
 ・羽毛がある

「蚊」の定義は以下の通りである。

 ・物体である
 ・自然に存在する
 ・世界に無数にある一般的なものの名前である
 ・生命を持っている
 ・一個の独立したものである
 ・独立して生きている
 ・種類の中でだいたい大きさが決まっている
 ・羽毛がない

ううん、やっぱり最後の1個が異質なような気がする。
でも、なぜ異質と感じるのか。
それもおいおい分かるだろう。
世の中について分かろうとすることは、自分の感じ方について分かろうとすることなんだなあ、などと思う。

来週も大ネタ、「木」である。



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