お金の話。



貯金はしたいが、超低金利が何十年も続いていて銀行に入れても増えない。
1回違う銀行のATMで引き出して手数料を取られてしまったら、1年分がパーだ。

これがイヤなら株とか、債券とか、不動産とか金地金と言った何らかの相場的なアセットをリスクを取って買うことになる。
外貨を買うというのもある。
こういう話は難しくて、何冊も本が出ていて、しかも本同士見解が対立している。
お金の話が大好きというのでなければ、付き合いきれない。

でも老後に備えて多少はお金を増やしておきたい。
いろいろ見ていて、1冊の本に辿り着いた。


これは基本的にETFによるインデックス投資を勧めるものだ。
インデックス投資は日経平均やMSCI-kokusai(日本以外の先進国の平均)の相場に連動するように複数の株をバランス良く買ってくれる投資信託を買うものである。

普通株というと、成長しそうな会社の株を安く買って、成長したら高く売ることで儲ける。
たとえばセロテープが将来は今よりもっと人気が出るだろうと予測した場合、セロテープの会社の株を買って持っておく。
セロテープの人気が上がれば儲かるし、下がれば損をする。
同じ株を何十年も持っている場合もあるし、朝買って昼売る場合もある。

上のように、どんな商品がこれから売れるか、どの会社が健全で伸びるか研究して売買する場合もあるが(これをファンダメンタル分析と言う)、株価のグラフの上がり下がりの形だけを見て買う人もいる(こっちはテクニカル分析と言う)。

どちらもギャンブル的な要素がある。
セロテープの人気が上がるかどうかなんて、素人にはなかなか分からない。
何年もそればかり研究していれば確度は上がるだろうが、それでも天気予報と一緒で、プロ中のプロがやっても絶対はない。
ましてやグラフの形だけ見て上がるか下がるか予想するのは、大変難しいだろう。

いや、素人でも必死に勉強すれば予測ぐらい出来るかもしれないが、毎日まいにち心配が絶えない。

以前いた会社で、株で儲けているという評判の人がいた。
短期でいろんな株を電話で売買していた。
今思えば、パチンコや競馬に凝るのと一緒で、スリルを楽しんでいたのだと思う。
煙草もやらないスポーツマンのナイスガイだったのだが、1時間に1回ぐらい不意にどこかにいなくなる。
どこにいるのだろうと思っていたら、会社の前で公衆電話を掛けていたり(携帯がない時代である)、ビルの間にはさまって短波ラジオを聞いたりしていた。
あれはなかなか大変だと思った。
サラリーマンをしながら、自分のあずかり知らぬところでお金が増えたり減ったりしていたら、絶対ストレスに耐えられない。

それを少しマイルドにしたのが投資信託だ。
これは複数の会社の株を組み合わせて買って、平均値を増やすことを狙う。
(実際には株以外にも不動産、債券なども入っていることがある。これは目論見書を見れば分かる。ぼくは株以外が入っている商品はややこしいので買っていない。ちなみに「低所得者層向け住宅ローンを証券化したもの」が暴落して起こったのがリーマンショック)
2つの種類があって、それはアクティブ投資とインデックス投資だ。

アクティブ投資は、株を毎日売買しているプロ(ファンドマネージャー)の腕を信用して、彼にお金を預ける。(ファンドを買う。)
彼の予想が的中すれば勝った人はお金が儲かるし、外れれば損をする。
ファンドマネージャーはどうやってお金を儲けるかと言うと、投資家から手数料をもらう。
だからアクティブ投資は少し割高になる。

それに対してインデックス投資は、日経平均やTOPIXのような日本全体の株や、MSCI-Kokusaiのような世界全体の株の「指数」と連動するように設計されたものだ。
実際にはいろんな会社の株を詰め合わせキットで買っているのだが、全体としては日経平均の場合は日本の主要な企業、MCSI-Kokusaiの場合は日本以外の先進国の主要な企業の平均株価とファンドの価格が連動するようになっている。

つまり、セロテープ、ハードディスク、ゴムタイヤ、からあげ粉と言った個別の商品が売れるとか、個別の企業が儲けるとかではなく、日本と言う国の景気が良くなる、世界中が良くなるのかに賭けるわけだ。

インデックス投資とアクティブ投資はどちらが儲かるか。
過去の戦績がバッチリ残っているので比較しやすいが、長期的にはどっこいどっこいだ。
もしどっこいどっこいなら、手数料のぶんだけアクティブ投資は損をすることになる。
もしアクティブで儲けようと思ったら、どのファンドマネージャーが勝ちそうか、やはり研究する必要がある。
つまり個別株を買うのと同様のリスクがある。

もちろんアクティブ投資は相場以上の成績を出そうとして努力しているので、ツボにハマればみんなが損をしているときに儲けることも可能である。
一方インデックス投資は経済が右肩上がりであるという前提に立っていて、リーマンショックのように全員が損をしていると確実に損をするという欠点がある。
アクティブ投資をするか、インデックス投資をするかというのも一つの決断だ。

そう、これも賭け事である。
賭け事だから損をすることもある。
実際にバブル時代に株を買って、リーマンショックまで持っている人がいたら、確実に大損をこいているはずだ。
しかし逆に、今は最悪の景気から持ち直している場面なので、相当の蓋然性で儲かるかもという気もする。
また、株と言うのは長期的には大体上がるものだという考え方もある。
というのは技術は日々進歩し、人間は過去から学ぶので、成長するものだからだ。

決断が怖いから冒険をしないという決断もある。
つまり投資なんかしないで貯金していく。
でもこれは「自分はいつまでも元気で働けて食うに困らない」「物価はバカみたいに上がらない」という将来に無意識に(消極的に)賭けていることになる。
人間なにかには賭けているのだ。

山崎氏の本ではインデックス投資をETFという証券化された投資信託で買うことを勧めている。
理由は手数料が少ないからだ。
しかし、ETFは一口当たりが高く、売ると税金が掛かる。
毎月少しずつ買うのには向かない。

そこでぼくは手数料が出来るだけ小さい投資信託を買っている。
具体的にはTOPIX(日本株)に連動する「日本株式インデックスe」と、MCSIコクサイ(日本以外の先進国)に連動する「海外株式インデックスe」を投信積み立てで買っている。
これらを楽天証券で、楽天カードを使って買っている。
実際には通常のカード払いとは違って買った瞬間に銀行から引き落とされる。

これの良いところは、月々自動で引き落としになることだ。
毎月決まった金額を買う。
だから株価が安い時(暴落したとき)は大量に買うし、高い時は少ししか買えない。
これをドルコスト平均法と言う。
上のやり方だと余計な手数料はかからないし、いちいち口座を移したりする手間もない。

自動引き落としのいいところは、否応なく買ってしまうところだ。
もともと給料がその分少なかったと思い込み、残ったお金でつつましく暮らせばよい。
(実際には生活のレベルが変わるほど大金を投資に突っ込むことはないが)

もっとも、スッテンテンになってしまうリスクありの投資を、無自覚に自動的にやっているというリスクもある。
やはりときどきは上がっているか、下がっているかチェックして、このままの投資金額、配分でいいのか考える時間を取るべきであろう。
また、生活防衛資金を普通の貯金で持っておくことも大切である。

山崎氏の本は「普通のサラリーマンが投資に時間を使ったりストレスにさらされることのコストについて」「貧乏人が持っているプライベートバンク幻想のおかしさについて」「若者と老人の取れるリスクの違い」「医療保険について」「FXについて」など、お金についてのさまざまな疑問に単刀直入に答えていて面白い。
こんなことを自覚的に考える機会を得たのも、投資の利点である。

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