最近Amazonが気を吐いている。
Kindleと、それ用の電子書籍が本国アメリカでは紙の本を超えて大成功し、そしてついに、やっと日本に進出した。
Apple、GoogleについでのIT第3極の地歩を完全に確保した感がある。



Apple、Google、Amazonはいずれもハードウェア、Webサービス、電子取引の3つを全部やっているが、それぞれ出自がきれいに分かれているので、軸足も違う。
得意分野が違うので、うまく拮抗している。
これからも切磋琢磨して、ハイテクな世界を牽引していって欲しいものだ。
と、思っていた。
しかし最近、どうもモヤモヤする。
まず、KindleのSylkブラウザーを使ってネットサーフィンすると、アクセス履歴が全部Amazonに見られているという話だ。
@IT:Amazon Kindleの本当の「怖さ」をあなたは知らないを参照)

SylkブラウザーはWebサービス側のブラウザーだからこういうことも起こるだろうが、Amazonの製品だけにあなたの個人情報(住所、氏名、クレジットカード情報)とキレイに結びついている。

Kindleは単なる端末ではなくてサービスの窓口だ。
いわば客がお店を持ち歩いているようなものだ。
だからハード価格も安くできるし、3Gネット使用料も安くできる。

Amazonの購入履歴がユーザーの消費嗜好を知ってレコメンドしてくるのは、ある程度仕方ないことだし最初から覚悟している。
(あまり気持ちがいいものではないが。)
しかし、すべてのWebアクセス履歴と言うのはおだやかではない。

つぎに、Kindleの電子書籍をユーザーは所有できないという話がある。
GIZMODE: Kindleで購入した本を所有することはできない

これは意外なのだが、Kindleの電子書籍は買うのではなく借りているだけだ。
商用ソフトウェアと同様、使用許諾契約を結んでいるだけなのである。
これもモヤモヤする。

GIZMODEの記事によると、ノルウェーに住むリン・ナイガルドさんは、Kindleを2回返品すると、アカウントを削除されてしまった。
Amazonで何回もユーザーが返品すると、アカウントが削除されてしまうという話は前からあった。
これは通販サイトとしてはある程度仕方ないことであろう。
しかし、ナイガルドさんの場合はKindleで過去買った本が全部読めなくなってしまった。

結果的にはAmazonがミスを認め、すぐに読めるようになったようだが、こんなこともできるということは、非常に恐ろしい。
DRMつきコンテンツは基本的に所有できない。
これはiTunesの音楽も、DMMの動画も同じことだ。
しかし、上のナイガルドさんの一件は、その危うさが如実に出た例と言えるだろう。

そして、Kindleの洋書が日本から買うと急に高くなったという話がある。
CNET Japan: Kindle価格の謎を解く--ジョブズの伝記はなぜ値上がりし、また値下がりしたのか

これ、ほんの数日前はやたらツイッターで話題になった。
Amazon.comにサインインしない状態でアクセスすると、アメリカ向け価格が出る。
(「日本で買い物しましょう!」と表示されてAmazon.co.jpに誘導される広告が出たから、ぼくが日本からアクセスしているのは知っていることになる。)

そして、メールアドレスとパスワードを入れてサインインすると、日本向け価格が出るが、これがひどい場合は倍以上の開きがあった。

たとえば10/25にNAVERまとめ「【悲報】日本Kindleストアオープンで洋書が国内仕様の『高い』値段に」で紹介された例としては、Android UI Fundamentalsという本がサインイン前は$16.20だったのがサインインすると$36.00になったという話があった。

11/1現在この本をぼくのアカウントでサインインした状態では$19.23だ。サインアウトすると$16.20になるから、やっぱり結構値段は違うのだが、倍以上に比べると落ち着いてきただろうか。

たしかに、日本で買うと洋書は高い。
AmazonでKindle向けの電子書籍を買うと洋書が安く読めるのは、一種の現代の裏ワザであって、非常に活用していた。
Kindle端末(ハードウェア)がなくてもKindleエディションの本は読める。
iPadやiPhone、Android端末であれば、Kindleアプリを入れれば読めるのである。

しかし、日本にKindleが進出し、日本の本も電子書籍が買えるようになると、急に洋書の値段が上がった。

これは、Amazonがプライスマッチング(最低価格保証)ということをやっていて、一時的に日本の価格を決定する相手が日本の洋書店になったために起こった現象らしい。
???よく知らない。スミマセン。

ただ、これでわかったのは、電子書籍の値段は変動相場制であり、国によって値段が変わるということだ。

それよりもなによりも、Amazon.comの会員なのにぼくが日本人であるということでアメリカ人の客と扱いが違うとは思っていなかった。
ぼくが日本人の客であることを、Amazonはどうして知るのだろうか。
登録した住所か、クレジットカードの住所か、あるいは警察と同じでIPアドレスだろうか。
どれも偽装できるが(クレカの場合はギフトカードを使えばいいのではないだろうか)、ナイガルドさんのようにアカウント停止されるのもイヤだから実験はしていない。

まとめると、電子書籍を買う、すぐに買える通信端末を持ち歩くということは、向こうからも見られている、常にお店から監視される状態であるということだ。
それは別に急に始まったわけではないし、GoogleのAndroid端末であっても、Appleのiディバイスであっても起こりうることだ。
どの端末も個人情報と紐付けされているし、常にアクセス状況や位置情報をぼくたちは意識的にせよ無意識にせよ自主的に送信している。
そしてどのコンテンツも端末に紐付けされている。
このことを意識する必要がある。

おおざっぱな感想だが、窮屈な時代であり、いろいろ注意が必要だ。

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