小さい頃「ちくま少年文学館」という児童文学の叢書を親が定期購読してくれた。
子供が言うのも変だが、うちの親は本当にこういうところがエライと思う。
子供の頃からこういう読み応えのある本を読んだおかげで、活字アレルギーにならず、ずいぶん人生が豊かになった。
心から感謝したい。
「ちくま少年文学館」の中で一番印象に残っているのが「なだ・いなだ」氏の「おっちょこちょ医」というユーモア文学である。
子供が言うのも変だが、うちの親は本当にこういうところがエライと思う。
子供の頃からこういう読み応えのある本を読んだおかげで、活字アレルギーにならず、ずいぶん人生が豊かになった。
心から感謝したい。
「ちくま少年文学館」の中で一番印象に残っているのが「なだ・いなだ」氏の「おっちょこちょ医」というユーモア文学である。
題名どおりそそっかしいお医者さんをめぐる騒動の話だが、掛け値なしに爆笑の連続であって、小学校5年生のぼくは横隔膜を痙攣させながら読んでいたものだ。
最初はおっちょこちょいの先生がおかしなことをしたり、村人がそれで右往左往したりするのを笑いものにする流れだが、後半になって戦争、差別、ファシズムをめぐるハードな展開になる。
ブログのレビューなどを見ると、これが余計であると書かれていたり、後半は真面目で考えさせられる、と書いているが、ぼくは後半のシリアスな流れこそが爆笑で面白かった。
要するにシチュエーション・コメディであって、そそっかしい医者と平和な村人が困難な時代に出会うとどうなるかということが、真面目に書けば書くほど面白い流れになっている。
あまり書くとネタバレになるが、ぼくはチャップリンの「独裁者」を思い出した。
最後の最後まで息もつかせぬ流れになっている。
なだ・いなだ氏は精神科医のエッセイストというイメージが強いが、この小説は筋が本当に面白い。
大人の方も是非お読みください。
なだ氏の成人向けのエッセイとしては、「信じることと、疑うことと」が大好きだ。
これも社会的な主張が強い本で、そーゆー人かと思って読むと、楽しめないかもしれない。
しかし、何回も読んでいると、なぜ俗流の議論が蔓延するのかを一つひとつ考えながら解きほぐしていく過程が書かれていて、知的な興奮が味わえる。
たとえば「昔とはいつのこと」という文がある。
なだ氏が講演会で話していると、聴衆の老人が「なぜ今の若い人は××なのか。昔はそんな人はいなかった、先生はどう思いますか」と聞いた。
なだ氏は賛成してみせるわけでも、言外に否定するでもなく「その昔とはいつのことですか」と聞く。
これは面白い。
言われてみると、「昔は良かった(今は悪い)」という議論は、正しい間違っているの前に前提が随分あいまいである。
(「外国はすばらしい(日本はダメだ)」も同じところがある)
その後のなだ氏と老人のやり取りも、恐ろしくも面白い。
最近は日本も政治の季節であって、ぼくなどもうっかりすると政治や時事について語ってしまいそうになる。
いや、全然政治や時事を語ってもかまわないと思うけど、ぼくはその前にこの本を読み返して、なだ氏に簡単に突っ込まれるような乱暴な議論はしたくないと思うのである。



最初はおっちょこちょいの先生がおかしなことをしたり、村人がそれで右往左往したりするのを笑いものにする流れだが、後半になって戦争、差別、ファシズムをめぐるハードな展開になる。
ブログのレビューなどを見ると、これが余計であると書かれていたり、後半は真面目で考えさせられる、と書いているが、ぼくは後半のシリアスな流れこそが爆笑で面白かった。
要するにシチュエーション・コメディであって、そそっかしい医者と平和な村人が困難な時代に出会うとどうなるかということが、真面目に書けば書くほど面白い流れになっている。
あまり書くとネタバレになるが、ぼくはチャップリンの「独裁者」を思い出した。
最後の最後まで息もつかせぬ流れになっている。
なだ・いなだ氏は精神科医のエッセイストというイメージが強いが、この小説は筋が本当に面白い。
大人の方も是非お読みください。
なだ氏の成人向けのエッセイとしては、「信じることと、疑うことと」が大好きだ。
これも社会的な主張が強い本で、そーゆー人かと思って読むと、楽しめないかもしれない。
しかし、何回も読んでいると、なぜ俗流の議論が蔓延するのかを一つひとつ考えながら解きほぐしていく過程が書かれていて、知的な興奮が味わえる。
たとえば「昔とはいつのこと」という文がある。
なだ氏が講演会で話していると、聴衆の老人が「なぜ今の若い人は××なのか。昔はそんな人はいなかった、先生はどう思いますか」と聞いた。
なだ氏は賛成してみせるわけでも、言外に否定するでもなく「その昔とはいつのことですか」と聞く。
これは面白い。
言われてみると、「昔は良かった(今は悪い)」という議論は、正しい間違っているの前に前提が随分あいまいである。
(「外国はすばらしい(日本はダメだ)」も同じところがある)
その後のなだ氏と老人のやり取りも、恐ろしくも面白い。
最近は日本も政治の季節であって、ぼくなどもうっかりすると政治や時事について語ってしまいそうになる。
いや、全然政治や時事を語ってもかまわないと思うけど、ぼくはその前にこの本を読み返して、なだ氏に簡単に突っ込まれるような乱暴な議論はしたくないと思うのである。



