韓国、平昌(ピョンチャン)で行われた冬季オリンピックが閉幕した。
最初は、会場の建設が出来ないんじゃないか、選手村に暖房がなくて選手が寒いんじゃないかとか言われていたが、結果的に日本のテレビ大衆的には大盛り上がりに盛り上がって終わって良かった。

Nao Kodaira 2008-11-09
ぼくはもともとスポーツを自分ではやらず、見るのもそこまで好きではなくて、寒いのにスキーやスケートばっかりテレビでやっていて、アナウンサーが「愛国」的な発言を繰り返すのにはゲンナリしていた。
それでも、ちょっと見ると面白いし、若く美しい選手たち、そして日本の選手が活躍していると、どうしようもなくうれしいし、続けて見ようという気にもなってくる。

今回最高に盛り上がったのは、やっぱりスピードスケート500m、小平奈緒さんの金メダルと、イ・サンファさんの銀メダル、試合後の二人の抱擁と、10年に渡る友情秘話が明かされたことである。
ぼくはこういう感動モノが苦手なはずだが、この話はすごく感動し、チャンネルをはしごしたりして二人の姿を追った。

テレビでは小平さんが最初に韓国語を学び、自分の上を行くサンファ選手に近づこうと努力したそうだ。
オランダ語も中国語もできるそうで、すごい人だ。

小平さんがスランプに陥って、何度も転倒してフェンスに突っ込んだりしている時期に、サンファはともに泣いたり、アドバイスをくれたりしたそうだ。
小平さんの話に、いちいち映像がかぶるのがすごいなと思った。
すべて国際大会だから、映像が残っているのだ。
オリンピックでメダルでも取らなければ、ぼくなどは知るよしもなかったが、何年にも渡って、スタジアムの隅で、友情ははぐくまれていたのである。
お互いに家に招くような仲であるとか、サンファさんが小平さんをタクシーで空港まで送ってくれて、お金も払ってくれたなどという話が、笑いとともに語られる。

それにしても、不思議に思う。
二人は絶対的なライバルである。
どちらかが上に行けば、どちらかが下に行く。
それなのに、友情を育むことが可能なのであろうか。

小平さんはソチ五輪のあと、スピードスケートでは世界トップのオランダに武者修行に行く。
ここでも子供向けの本を読んだりしてオランダ語を独学でしゃべれるようになった小平さんもすごいが、さまざまな特訓を彼女に課してくれたオランダのスケート界もすごいと思う。
強力な選手を外国に育てれば、それだけオリンピックや、国際大会で、強力な敵として立ちはだかってくることは必定である。

ぼくはこういうサンファさんや、オランダのスケート界の態度を見て、いい人たちだなあ、変な言い方だが商売っ気ないなー……と思った。
敵に塩を送る、利敵行為ではないだろうか。

だいぶ話は変わるが、いぜん英会話の本のベストセラーを出している本の著者と知己を得ることがあった。
ある日、「こういう目的の本はありませんか(書いてくれませんか)」というぶしつけな質問をぶつけた。
するとその先生は、「私ではありませんがxx先生という人の本に、xxという本があって、それにぴったりです」と言って、それ以外にも何冊もいろんな先生の本を教えてくれた。
ぼくはびっくりして「先生、商売っ気ないですねー。他の著者の本ばかり宣伝して」というと、「うーん、他の先生の本を宣伝することが、必ずしも『商売っ気がない』ことにはならないんですよ」と言った。
あとは自分で考えて、ということだったようだ。

ぼくは長年放っておいたこの質問への答えが、今ならなんとなく分かるような気がする。
結局、その世界が盛んになれば、回り回ってみんなが助かる、ということではないだろうか。
サンファさんも、オランダのコーチも、「小平さんという選手が成長して、スケート界が興隆すれば、選手のレベルも上がるし、世間の注目も集まる。
そういう視点を持っているから、ライバルであっても惜しみなく教えるのではないだろうか。