イジハピ!

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面白い本を読みたい!

【第1142回】【書評】カズオ・イシグロ『私を離さないで』

去年の10月半ば、日系イギリス人のカズオ・イシグロさんがノーベル文学賞を受賞したということが話題になった。

Kazuo Ishiguro in 2017 03

早川書房は「特需」に湧いたそうだが、そうそう刷っていなかったので、どこの本屋さんでも売り切れていた、と話題になった。
電子書籍がないのか……? と思って、楽天koboを見ると、ある。
電子書籍はファイルをサーバーからコピーしてくるだけなので、売り切れるということが絶対にない。
絶版もまずない。
(ストアーが閉店したりして読めなくなってしまうことはまれにある。)
なのに、誰も買わないのである。
電子書籍ってマイナーなんだなあ~と思った。

それで、一番ポップそうな『私を離さないで』を買って読んだ。
具合が悪いときにベッドで読み始めたのだが、出だしが読みづらくて一回挫折した。
いかにヤワな本しか読んでないか、である。

通勤電車で読み始めたら、調子が出てきて、引きずり込まれた。
そういえば大江健三郎氏も「電車の中は逃げ場がないから難しい本を読むといい」と少年向けの公演で言っていた。

一人称の、おぼつかない口ぶりで、主人公の境遇が、だんだん明らかになってくる。
イシグロ氏の特徴的な手法は「信頼できない語り手」と言って、一人称の語り手が語らない、あるいは、知らないことがある、という特徴があるようだ。

この本には秘密がある。
イシグロ氏じしんは、別にミステリーではないし、ネタバレしてもらってかまわない、と書いているようだが、この秘密が明らかになるタイミングが斬新だなと思った。





以下一部ネタバレ





イシグロ氏がノーベル賞を受賞したとき、ツイッターに「英国人であるイシグロ氏の受賞を、日本の誉れであるかのように喜ぶマスコミは間違っている」という意見が踊った。
いぜん筒井康隆が「文学者は必ずしも国家のために作品を書くものではない。ガルシア・マルケスも大江健三郎も作品は反国家的である。むしろ、現代の文学は反国家的であることから生まれるのではあるまいか」という意味のことをたしか書いていて、それにぼくも共鳴していたので、イシグロ氏の受賞を喜ぶマスコミを揶揄するツイートを書いた。

しかし、イシグロ氏の受賞スピーチおよび記者会見での数々の発言は、日本への思いがあふれたものであった。
長崎での母親の核体験、日本という国について想像を巡らすことが虚構を仕事とするもととなったこと、村上春樹の受賞を願っていたはずの日本人が我がことのように受賞を喜んでくれて感動した、などなど。

『わたしを離さないで』を一通り読んで感動した後に、他の人の感想を読みたいと思って、一通り検索してみると、Dan Kogaiさんが書評を書かれていて、作品の筋立てに根本的な疑問を呈されていたので、あらためて本を読み返し、自分なりに考えた。

404 Blog Not Found:書評 - Never Let Me Go

Never Let Me Goというのは、作品の中で掛けられる架空のレコードの題名である。
意味としては「恋人よ、私を離さないでくれ(自分を愛し続けてくれ)」という意味にも取れるが、この作品を読むと「ご主人様、自分を逃さないで下さい(自分が脱走するのを阻止して下さい)」という意味にも取れる。
そして「私を殺さないでくれ(私の命を取らないでくれ)」とも感じる。

文学作品を、すぐに社会批判に結びつけるのも愚かなことだが、ぼくはこの作品に出て来る不幸な子供たちを、どうしようもなく今の日本人に結び付けざるを得なかった。
不幸な状況にいて、それを嘆きながら、しかし逃げはしない、自分の環境を変えたり、物理的に外国に移住したりしない民たち、そして、最終的には支配者は自分のことを良くしてくれる、大勢の集団を良くしてくれはしなくても、自分だけは(なぜか)いい目を見せてくれるのではないか、という、淡い希望を持っている民たちのことを考えたのである。

しかし、それは、よく知らないが、イギリスの下層階級にも言えることらしい。『わたしを離さないで』は、どうしようもなくイギリスの階級社会についての批判とも読める。
イギリスの虐げられた民たちも、逃げない。
どういうわけか、逃げないで、自分たちだけは、なぜか、いい目を見られるのではないか、と思っている。

イシグロ氏は5歳から母の国日本を離れて、イギリスに住んで、根っからのイギリス人に育ったと言われているが、しかし見た目は日本人であり、イギリス社会の中で、有形無形の差別を受けたに違いない。
そしてその文学の中にも、被差別者としての体験が織り込まれている。

イシグロ氏はやはり平和賞を受賞した、日本人を中心とした反核団体ICANのことも褒め称えている。
彼が受賞したことを、日本人として喜び、感謝したい。



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