演劇、それも都内の小劇場で演じられるアングラ演劇を見るのが、ここ数年の楽しみである。
このブログにも劇評のようなものをチョコチョコ書いている。



「評」であるから、見終わったあとに書く。
昔、元気があってこのブログを毎日書いていた頃は、面白い劇を初日に見たらその夜に書いていた。
次の日以降、見てくれる人が少しでも増えればいいなと思っていたのだ。
さいきんは仕事が妙に忙しく、体力もなくなっていて、その元気もなくなった。

今回は初めて、まだ初日を迎えていない演劇のことを書く。

演劇は、毎晩たくさんやっているから、その中から面白そうなものを選んで見る。
小劇場であるから、役者さんと顔見知りになるし、だんだん、今度これやるから見てくださいよ、言われることもある。
行きたい。
できれば全部見たいのである。
でも、時間もお金も有限だ。
仕事をサボって見に行っていたら、貯金が尽きて、演劇を見に行くこともできなくなる。
それで、泣く泣く、面白そうなもの、見たほうがいいもの、間違いなさそうなものを事前に選んで見に行く。

こんかい紹介するのは、次の土曜日、6月9日から新宿サンモールスタジオで行われる舞台、『偏執狂短編集IV』である。
これは、どう考えても確実に面白く、演劇やアングラに馴染みがない方が初めて見るのにも好適な作品であるので、事前に紹介しようと思う。

Paranoia Papers 〜偏執狂短編集Ⅳ〜

偏執狂短編集IVという題名で、ある程度内容がわかる。
お察しの通り、過去の猟奇殺人、異常な事件(実話)に題を取った、短めの演劇を、3本ずつ2パート、6本立て続けに見られるというものである。
毎年1回やっていて、今年はIVということで、もう4回目ということらしいが、ぼくは去年のIIIから見た。
去年も超絶面白かった。

それぞれ有名な事件に題を取っているが、単純な快楽殺人から、独裁者の圧政に発したもの、ガチで頭がおかしい人が正しいと信じ切って行ったものまで、さまざまな事件を、忠実に演じるものもあれば、思い切って舞台を変えたものまで、いろとりどりで、異常心理を通じて人間性の本質に迫る作品ばかりだった。
演出が凝りに凝っていて、小劇場の間近な舞台で、ド迫力の演出が展開して恐ろしくも楽しかった。
最後に、登場人物が、その登場人物のテイで繰り広げるアフター・トークというのがあって、ついさっきまで凄絶な殺人を犯していた異常者たちが、和気あいあいとゆるいトークをしていたのも大いに笑えた。

今年も、演目からして楽しみである。
まず、ご贔屓の紅日毬子さんが、前からおかっぱ具合とキリッとした御尊顔がクレオパトラ(7世)の生まれ変わりだなあと思っていたのだが、ついに満を持してクレオパトラを御自ら演じられるということで、これはどうしようもなく楽しみだ。
また、後述する事情があって去年たいへん面白かった「ウエストご夫妻の偏り尽くした愛情」が再演されると言うことで、去年よりもパワーアップした内容になっているそうで、これは間違いなく面白いので楽しみである。

さて、なぜこんな文章をつらつら書いているかというと、もちろん上記のようにこの舞台が確実に面白く、見やすく、楽しいおすすめの演劇だということもあるが、きっかけとなったのは、この芝居がアート以外の部分で、ちょっと話題になっているということである。

一部スポーツ新聞などでも話題になったが、ちょっと複雑な事件(そしてカナーリしょうもない事件)なのでぼくの解釈で箇条書きにする。

*子役出身の美少女、はるかぜちゃんこと春名風花ちゃん(17歳)が出演している演目に、性的な描写があると警視庁に通報があった。
*警視庁はこれをわざわざ重く見て、劇団に演目の自粛を求めた。
*劇団は、演目の変更を一部行うとともに、忸怩たる思いを声明文として発表した。

ということのようである。

Paranoia Papers 〜偏執狂短編集Ⅳ〜

で、これだけだと劇団と世間と警察と、誰がいいのか悪いのか分からないが、通報したのがどうも、昔からはるかぜちゃんに粘着している、愛をこじらせたストーカー的な人による悪意の通報らしい。

春名風花 公式ブログ - 偏執狂短編集IVに関する重要なお知らせ - Powered by LINE

気持ち悪い!

これこそ、まさに偏執狂だ!!

こんなことありますか。
つまり、わいせつかアートかという高尚な問題ではなく、どちらかというと芸能人の殺害予告で握手会が中止になるとかいうのと同じカテゴリーの事件のようである。
劇団や出演者のみなさんは完全なトバッチリだ。

この舞台の件も、尾ひれがついて、間違った情報が広まっているので、微力ながら、知っている限りで正しいこと、つまり、Voyantroupeのみなさんは出演者の人権を、慎重に守りながら真剣にアートを追求しているということ、そして、『偏執狂短編集IV』は必ず素晴らしい舞台になるということを、勝手に宣伝させてもらうために、贅言を弄した。
みなさん一緒に見に行きましょう。