昨日、3月16日木曜日は、世田谷パブリックシアターに演劇実験室◎万有引力の『身毒丸』を見に行った。
 圧倒的な迫力で感動した。

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 正式な題名は『説経節の主題による見世物オペラ 身毒丸』という。
 もともとは寺山修司自身の劇団、天井桟敷によって、1978年に初演された。
 それが、当時から音楽と共同演出をつとめていたJ・A・シーザーが旗揚げした劇団、万有引力によって、2015年に再演された。
 そして2017年に再再演されたということである。

 舞台上に、指揮とパーカッションをつとめるシーザー氏を中心に、ギター、ベース、ドラム、オルガン、フルート、バイオリン、チューバ、琵琶、琴からなるロックバンドと、女声4人、男声2人、ボーイソプラノ1人からなるコーラス隊が乗っている。
 その上に、総勢42名の役者さんが演じ、踊り、飛び跳ねる。
 すごい迫力で、完全に引きずり込まれてしまった。

 オペラ、という言葉の意味が分かった。
 演劇でもコンサートでもない。
 それらがまじりあった、まったく別のものだ。
 演劇は言葉で、脳の言語野がゆすぶられる。
 音楽と踊りは別の野(や)がゆすぶられる。
 ドンドンドンという和太鼓の音圧で、客席が揺すぶられるような体験をしながら、放浪するしんとくと義母の妖しい葛藤の物語に興奮する。
 全部の脳が刺激されて、トランス状態になる。

 同じ演目を、ぼくは2012年12月の劇団A・P・B-Tokyoでも見た。
 こちらは小劇場のアングラ舞台で、こちらはこちらで感動した。
 演劇の中に17曲という挿入歌が入っていて、一瞬も気が抜けないスリリングな舞台だった。
 舞台でマッチをする匂いが客席ではっきり感じられたことも、はっきり覚えている。
 A・P・B版と万有版の違いとしては、万有版の方がセリフの隅々までメロディがついている。
 「家族合わせ」をするところの「お母さん〜金のなるきち家の〜」というところにメロディがついていたりする。
 ぼくはA・P・B版を事前に観ていたので、万有版がより深く理解できたような気がする。

 それにしても万有版は大勢出て来る超・複雑な舞台である。
 今回遠くの席しか取れなくて、オペラグラスを振り回して観たのであるが、とても追いきれない。
 千秋楽も見に行くが、2回じゃとても足りない。

 月蝕歌劇団のナチュラルボーン・アーティスト花音菜ちゃんが出てくる。
 はっきりわかるところとしては見世物小屋の蛇娘になっている。
 
 指定席は完売してしまったが、まだ立ち見席の当日券が出る場合もあるようである。
 機会がある方は絶対見たほうがいいよ。