昨日、11月23日は自分の誕生日だが、月蝕歌劇団公演「G線上のアリア」を見に行った。ぼくは「笑う吸血鬼」も「G線上のアリア」も2回ずつ見た。あと、舞台の間の「詩劇ライブ」は1回ずつ見た。超楽しかった。

Eclipse Christophe Colomb

 「笑う吸血鬼」はカリスマ的な人気を持つ漫画家の丸尾末広さんの原作で、シリアスな内容で緊張感があったが、テンションが高くて良かった。
 さいきんぼくは思うんだけど、恐怖というのは、外界にあるものが怖いのではなく、それを恐ろしいと思う自分の心の持ちよう、狂気が恐ろしいのではないか。
 中学生という、何にでも敏感になっている世代の目を通した世界の恐ろしさが、「笑う吸血鬼」の怖さで、それが見ているこっちの(ぼくというおっさんの)心に憑依するところが恐ろしくも面白いと感じた。

 「G線上のアリア」はフランス革命と芸術座旗揚げをかけ合わせた、高取英さんおなじみの歴史改変ストーリーで、比較的リラックスした雰囲気で時事ネタのボケにも笑いがはじけていて良かった。おなじみの設定で、いろいろな話を見ると、立体的に理解できて楽しい。同じ劇団のいろいろな舞台を見続ける楽しさがある。
 今回は松井須磨子と島村抱月が出てきて、演劇の中で演劇を考察する、芸術座の劇中劇がフランス革命の本筋と混ざるのも面白かった。でもこれ、1回だけ見ていたのではわけが分からない。1回見てわからないのが、2回みてなるほどー、と思って感動する。
 前半で、はるのうらこさん演じる老婆まつが一瞬にして若くなって花音菜ちゃんが演じる少女になって笑わせて、倉敷あみちゃん演じるサン・ジュストが一瞬で老いて竹内緑郎さんになって泣かせるという趣向も良かった。

 余談だが以前月蝕に森田彩乃さんという長身で超美形の女優さんが出ていて、彼女の桐朋学園の卒業公演を見に行ったのだが、その舞台の題材が松井須磨子と島村抱月を中心にした話で、森田さんは劇中劇でサロメを演じたのだ。
 このサロメの劇中劇が今回の「G線上のアリア」にも出てきて感慨深かったし、比較して面白かった。

 月蝕の11月公演に戻るが、どちらの「詩劇ライブ」も面白かった。
 月蝕の「詩劇ライブ」といえば三上ナミちゃんの生歌がもれなくついてくるのが超オトク感があるが、今回は特に良かった。
 まずピアニカが地道に上達していて、スイング感があると思った。
 あとやっぱ「ヒトリ遊ビ」という曲がぼくは一番好きだ。ロック的で、ハードで、どんどん人を心理的に追い詰めるところが好きなのだ。そこそこ長い曲だけど、3回ぐらい連続で聞きたい気がする。こういう曲をもっと聞きたい。
 あと「G線上のアリア」の詩劇ライブの花音菜ちゃんのダンスが感動的で良かった。

 はるのうらこさんが、生ギター一本をバックに野坂昭如の、「笑う」のライブでは「バージン・ブルース」を、「G線上」のライブでは「マリリン・モンロー・ノー・リターン」を歌うのだが、後者の方で、わざわざブログで記録に残すことはないのだが、豪快に歌詞を飛ばすのが、言っちゃあ何だけど楽しかった。
 「バージン・ブルースと混ざっちゃって」とおっしゃっていた。
 分かる!
 野坂昭如の曲は全部七五調でブルース調なので混ざるのだ。
 あと「バージン・ブルース」には「マリリン・モンロー・ノー・リターン」という歌詞があるのも紛らわしい。
 「黒の舟唄」(♪ロウ、エンド、ロウ〜)も良く混ざるので次回はこれを歌って欲しい。

 今回有料チェキという制度があって、アイドル枠の高坂琴水さん、松本弥玖さん、松田千沙采さんと撮らせてもらった。
 みんなしっかり演技できていて、同時に幕間のMCでは笑いが弾けていて、ギャップが良かった。
 月蝕は若い子が出てきて、リラックスできる場面があるので、かえって本編のシリアスな舞台も深く理解できる気がする。
 松田千沙采さんは少女人形舞台でも見たことがあるが、歌がうまくて、突き抜ける歌声で良かった。

 あと超、微妙な話だが物販コーナーが簡略化していて流れがスムーズで良かった。
 ということで、主宰が緊急入院でどうなることかと思った月蝕歌劇団だが、あいかわらず楽しさがいっぱいつまっていて、熱演が堪能できて良かった。
 明日のマチネが最終公演である。