さいきんまた、iPhoneで出せる絵文字が変わった。

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FRONTROW(フロントロウ) | iPhoneの絵文字がガラリと一新!そのあまりの変貌ぶりに世間がざわざわ…
絵文字は、もともと、IDO(当時)とかDoCoMo(当時)とかJ-PHONE(当時)とかが、JIS漢字の空き領域を使って、各社適当にやっていた。
互換性がなかったのである。
どこそこの会社のハートは揺れてかわいい、とか言って、それで携帯キャリアを選ぶという時代があった。

iPhoneをSoftbankが導入したとき、iPhoneでは絵文字が出ないということが問題になった。
あと電池が持たない、ワンセグが見られないというのも問題になった。
孫正義社長は電光石火で、TV&バッテリーというワンセグチューナー付き外部バッテリーを開発した。
そして自らアメリカに飛んで、ジョブズに「日本では絵文字が出ないと商売にならない」と直談判した。

それがきっかけかどうか知らないが(ひどくてスミマセン)、アップル&グーグル提案というのがUnicodeコンソーシアムに提出された。
UnicodeはISOとも連携している、文字の世界規格である。
クレジットカードの大きさとか、フィルムの感度とか、DVDの規格とかは世界で共通だが、あれもISOで決まっている。
そこで、絵文字と文字コード(文字を数字にする規則)の世界規格化が図られた。

相当な議論があったそうだ。
たとえば虎の顔を「TIGER」という名前で登録しようとしたが、「これは虎じゃなくて虎の顔じゃないか」と文句を言われ、結局名前を「TIGER FACE」に変更し、かつ虎の全身像の絵文字を追加してそっちに「TIGER」と付けたそうだ。
すごいな。

こうして絵文字は世界規格になった。
最初は日本のガラパゴス携帯が世界規格に準拠せず、docomoから音符の絵文字をGmailに送ると、Gmail側でウンコの絵文字が表示したりしたそうである。
音符がウンコになったら困るよ!
いまはどの会社もUnicode絵文字を使っていて、こういう問題もなくなった。

この絵文字が、世界で予想外に人気になった。
ツイッターをやっていると分かるが、英語は文字数あたりの情報量が少ない。
英単語1つが漢字1字から2字に相当する。
だから、同じ140字でも伝わる情報が少ない。
今日「ビール」飲みに行こうよとか、そういう風に絵文字が使えると便利だ、というのだ。

それで、流行っていたが、社会問題も起こした。

もともと、日本の絵文字は、政治的に無思慮であった。
うちうちで使っていたからしょうがない面もあった。

最初、日本の絵文字では地球儀が日本中心だった。
これはUnicode化に伴って各地が中心の地球と、陸地がない無地の地球が追加された。

次に、国旗が適当に数か国しかなかった。
これは、国旗を示すのは特殊なアルファベットの文字コードということになり、特殊なアルファベットで「J」「P」を受け取ったら日本の国旗を表示するとか、そういうややこしい仕組みが導入された。

十二支の動物があったが、十二支はアジア各国で微妙に違う。
今は多くの国のパターンが収録されている。

最も大きな社会問題は、人間の顔がみんな白人、というのである。
これは、ありそうな問題であって、日本のマンガやアニメを見ていれば分かる。
アメリカだったらあらゆる人種、性別の混成チームになりそうなスーパーヒーローが、しれっと白人顔の日本人チームになったりしている。

国際社会ではそれは通用せず、あらゆる人種の顔を出さなければならなくなった。

理屈はそうでも、実装は大変そうである。
人間の顔と言っても、子供、大人の男、大人の女、サンタクロース、女王、バニーガールなどさまざまである。
全員白人、黒人、アジア人、その中間を用意するのは大変である。

そこで、スキントーンモディファイヤーという特殊な肌色の修飾文字が登場した。
サンタクロース+白人だと白人のサンタ、サンタクロース+黒人だと黒人のサンタのように、2文字で1つの顔を表す。
で、サンタクロースだけ1文字で表示すると、世の中にはありえない真っ黄色な顔(ピースマークのような色)が表示されるようになった。

iPhoneを使っていると、ある時から絵文字の顔が妙に真っ黄色になった。
あれはこういう事情で、絵文字キーボードで顔を長押しすると、いろんな色が選べるようになったのである。

これって去年の2月からだが、AKB48の大家志津香さんはつい先日知ったそうだ。




知られてないなー。

でも当たり前だと思う。

普通の人は絵文字キーボードなんか使わない。
日本語キーボードで「さんた」と書いて変換される字を使う。
ここで「はくじんのさんた」で変換すると白人のサンタになって欲しいのだが、そういう機能はない。

ほんらいなら、スキントーンモディファイヤーもカナ漢字変換機能で選べてしかるべきである。
「さんた」で変換すると真っ黄色のサンタが出て、「はくじん」で変換するとさっき入力した真っ黄色のサンタが白人化するのが望ましい。
でも「はくじん」とか「おうしょくじんしゅ」とかいう変換語を登録するのも議論を呼ぶかもしれない。

なかなか難しい。

さて、人種同様に問題になったのが性別の問題である。

昔は男女がキスしている絵文字とか、男女が手を繋いでいる絵文字とかしかなかった。
これがいまでは、男男、女女も選べるようになった。
知ってましたか。

ところがこれ、真っ黄色のありえない肌色の男男、女女しか選べない。
長押ししてもスキントーンモディファイヤーが効かないのである。

考えたら当たり前だ。
どの肌色の人と、どの肌色の人が付き合うかわからないからだ。
同色の人しか付き合えないとなったら大問題だ!!!

かりに肌色が黒人、白人、黄色人種の3つだけだったとしよう。
黒人の男性と黒人の女性、黒人の男性と白人の女性、黒人の男性と黄色人種の女性、黒人の男性と黒人の男性、黒人の男性と白人の男性、黒人の男性と黄色人種の男性、黒人の女性と黒人の女性、黒人の女性と白人の女性、黒人の女性と黄色人種の女性、つごう9種類選べないといけないのである。
非現実的だ。

4人家族、というのもある。
同性婚もあるし、養子縁組を考えたら、性別だけで16種類、肌色だけで81種類だから、掛け合わせて1296種類の家族がいる。
現実にはどれも存在すると思うので、出せてしかるべきだ。
単純に長押しして選ぶのではなく、もっと論理的なUIを考えないといけないかもしれない。
今のところは、ありえない真っ黄色の4人家族しか選べない。

さいきん男性のバニーガールが選べるようになった。
ばにーがーる、とカナ漢字変換する時点で「がーる」と入れているわけだから、女子が問答無用で出てくるべきかと思ったが、現実には「ばにー」で出てくる。
これもおかしい。
「ばにー」だと野うさぎが出てこないとおかしい気がする。

それはいいとして、「ばにー」で検索すると男男、女女のペアのバニーガール、バニーボーイが出てくる。
これもおかしい。
男女ペアのバニーも絶対いると思う。

で、人種も選べない。
現実にはありえない真っ黄色のバニーしか選べないのである。

ということで、いろんな人が必死で知恵を寄せ合った結果だが、かなり、今の絵文字はカオス状態だ。
とりあえず、肌色に関しては「インターネットでは人間とはありえない真っ黄色の顔をしているもの」という前提を受け入れるしかないかもしれない。
ピースマークと一緒である。