昨日、9月6日火曜日は、学芸大学、千本桜ホールに、月蝕歌劇団『中国の不思議な役人』を見に行った。

Photograph of a Chinese man holding a flower
 『中国の不思議な役人』は寺山修司の脚本であるが、それにしてもヘンテコな題名である。もともとレンジェル・メニヘールトと言うハンガリーの人(レンジェルが苗字)が脚本を書き、バルトークが音楽を付けた「中国の不思議な役人―グロテスクなパントマイム」という無言劇が元になっているそうだ。そっちは見たことがないが、Wikipediaで調べてみると、たしかに今回の脚本の骨組みになっているが、わりと単純な筋書きだ。

 今回の芝居は、それに「草迷宮」の世界を組み合わせ、主人公の少女が娼館で働かされている一人の娼婦になっている。この少女が、前回「黒蜥蜴」、「津山三十人殺し」から月蝕に出ている、リアル美少女の水幾まどかさんで、月蝕の猥雑な舞台に出していいのかな〜という、本当に清純なお嬢さんであるが、その清純と邪悪のミスマッチさが良かった。最初はしゃべらなくて、お人形さんのような役なのかなあと思っていたが、終盤になって取り憑かれたように長台詞を喋り出すという演出が最高である。鳥肌が立った。

 その少女娼婦に妄執する、娼婦に愛されるまでは死ぬことができないという、文字通り中国の不思議な役人を演じるのが、いつも日本軍の軍人を演じる白川沙夜さんであった。こちらはいつもながら迫力のある美しさで、少女娼婦と身長差もあって好対照なのが良かった。最初は少女に愛されて死ぬことを望んでいたが、いざ愛されてみると命が惜しくなってくる―という、「本当に欲しいものは絶対に手に入らない」という人間の悲しさが伝わってくる。

 他にも美少女がいっぱい出てきて、今回初めて見る人としては慶徳優菜さんというショートカットの人が可愛くて目立っていた。最初に売られる「手書きおみくじ」で、「凶」が2枚当たったのだが、ボールペンで3ミリ角ぐらいの字でびっしりと書いているのが2枚当たって、それが慶徳さんだった。このおみくじは人によって方針が違い、性格が出て面白い。

 今回女優も男優もおびただしい数の人が出ていて熱演していた。新大久保鷹さんの怪力?を生かした演技も、マンガ家、田村信先生の体当たりの演技wも良かった。あと、俳優さんに全身黒タイツの「影」がつきまとうという演出があって度肝を抜かれた。

 ナチュラルボーン・アーティスト岬 花音菜さん(高取さんが苗字を考えたそうだ)の相変わらずの人間離れしたダンスも良かった。今回花道脇で見ていたが、なんと花道で踊り狂うところがあって、激突したら大変なことになるな〜と思っていたが、激突しなかったのはさすが。
 三上ナミさんの美声も相変わらずで、今回は苦味のある選曲で良かった。あと最後の名乗りの声が迫力があって、あーすっかりこの人月蝕人間になったなーと思って感慨深かった。
 それにしても豪華な舞台である。マリー・ホルンさんの迫力の踊りも、看板女優倉敷あみさんの緊縛姿も拝めた。本当に月蝕感てんこ盛りの豪華な舞台で、最初から最後まで熱気と楽しさが詰まっていて良かった。なんと今日からキャストが変わり、また明日からは詩劇ライブもあるということなので、また何回か見なければならない。