自炊シリーズ第4回。ここで自炊というと料理の自炊ではなく、紙書籍を断裁してスキャンし、無理やり電子化することである。主に部屋を狭くするため、タブレット端末でどこにいても読めるようにするため、OCR(Optical Character Reading 画像の文字をデジタル化すること)して検索可能にするために行っている。

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 自炊したファイルは、PDFにすることが多く、ぼくもそうしている。マンガをスキャンして画質にこだわる人などは、JPEGファイルをzipやrarといった形式に圧縮する人もいる。
 自炊の結果できたPDFは、いわゆるAmazonのKindleや楽天のKoboなどのストアーで売っている電子書籍とは別物だ。最大の違いは基本1ページ1画像になるため、必然的にいわゆるフィックス型(固定レイアウト)になってしまい、端末の大きさに合わせて本が拡大、または縮小されることだ。
 基本、iPhoneだと、文庫本であってももう小さすぎて苦しい。
 iPad miniやAndroidタブレットで主流の7インチ液晶の大きさであれば、文庫本やコミックスの場合は紙書籍よりむしろ大きくなる。A5版以上のハードカバーであってもまあ読めるが、技術書などの大型本は厳しい。ぼくはコミックスをiPad miniで読むのが気に入っている。ただし見開きが2ページに分断されるという欠点がある。
 大型本はiPad Proのような9インチ以上のタブレットか、PCで読みたいところだ。ちなみにPCでコンピューター関係の技術書を読むのがぼくは好きだ。立てて読め、キーボードで移動できるので、パソコンのエディターを起動してプログラムを書いたり、メモを取ったりしながら読み進めるのがカンタンだからだ。電子書籍をパソコンで勉強する方法についてはそのうち別に書く。

 フィックス型という言葉を説明なしに使ってしまったが、KindleやKoboで売っている本には、このフィックス型と、もうひとつフロー型という種類がある。写真集やマンガなどはフィックス型でレイアウトが固定されているので、自炊PDFと原理的に同じである。フロー型は、字の大きさをユーザーが端末側で指定できる。すると1ページあたりの文字数が変わり、全体のページ数も変化する。iPhoneで小説を読む時も、字を大きくすると1ページあたりの文字数が減り、ページ数がやたら増えるが、字は読みやすくなる。実はiPhoneでKindle小説を読むのがぼくは好きで、入院中はこれで命を救われたものだ。だが、自炊PDFを出先で読むなら最低でも7インチタブレット、できれば大きなiPadなどが欲しいところだ。

 さて、前回までは本を断裁する断裁機について、ぼくが購入したDURODEX 200DXを例に取って書いた。
 今回からは、今日は断裁した紙を電子化するドキュメント・スキャナーについて、やはり購入したキヤノンDR-C240について書く。DR-C240のことは、以下はC240と呼称する。
 まずはスキャナー一般について簡単に述べる。

 スキャナーは紙を中心とした目で見て認識するモノの視覚情報を画像として電子化するものだ。紙以外にクレジットカードのようなカードであっても電子化できる。(クレジットカードをコピーした電子ファイルは漏洩しないように注意してください!)固定式のデジカメのようなものだ。

 事務所やコンビニに、コピー機という機械がある。あれは紙を入れるとコピーされた紙が出てくる。あれを上下半分にスパッとスライスして、下半分を取ったものがプリンターであると考えられる。で、上半分を取ったものがスキャナーだ。実際、スキャナーとプリンターを両方パソコンにつなぐとコピー機が出来る。で、スキャナーとプリンターの間に電話回線を挟んだのがファックスであると考えられる。このように、紙の視覚情報を電気信号に変えてパソコンに画像ファイルとして入力するのがスキャナーだ。

 スキャナーにはフラットベッドスキャナーとドキュメントスキャナーの二種類がある。

 フラットベッドスキャナーは本をコピーするときのようにガラス面が上にあって、そこにスキャンしたいものを押し付けて使うものだ。本を断裁しなくてもスキャンできるが、1枚1枚ページをめくって押し付ける作業をしなければならない。面白い使い方としては、フラットベッドスキャナーに人間が座ってスキャンするとおしりの画像ができる。変な画像をばらまかないように注意したいものだが、このように3次元の物体の一面をスキャンすることができる。

 フラットベッドスキャナーも、ぼくは持っていて、CanoScan LiDE700Fという製品だ。



 調べたら2009年の製品である。それから1回も買い換えてない。めったに使わないのだ。プリンターというのもあまり使わない製品だが、それでも月に1回は使う。スキャナーは年に2〜3回とかしか使わない。ぼくの場合は「手描きのイラストを入稿するとき」に使うが、それはぼくにとって清水の舞台から飛び降りるような、そうとう勇気のいる行動であって、めったに行わない。あと、ネット証券会社に口座を作るときなどに「身分証明書のコピーを求められる時」だ。これもコピー機を借りにコンビニに行ったりせずに、手元でできる。もっとも、最近は両方ともiPhoneのデジカメで用が足りるのだ。

 ドキュメントスキャナーは事務用のコピー機のようにオートシートフィーダーという部分がついている。



 ここに束になった本を押し込むと、自動的に次々にスキャンしてくれる。多数の紙をほうっておいたらスキャンしてくれるので手間なしだ。ただし、そのためには本を断裁してバラバラにしなければならない。なお、ドキュメントスキャナーは受光器が2個備わっていて、紙の表裏両面を一気にスキャンして2つの画像ファイルにしてくれる。100ページコピーすれば100個の画像ファイルにすることもできるし、付属ソフトの機能を使って100ページひと続きのPDFにすることも出来る。

 くわしい使用感は来週以降に譲るが、こっちは本当に使う。買って1ヶ月で、LiDE 700Fの10年間の使用回数を追い越してしまったと思える。本来の用途である紙書籍の電子化はもちろん、身の回りの書類の電子化に大活躍している。フラットベッドではこうはいかない。やっぱりこういう製品は機能性がたいへん大きい。

 なお、さいきん三種類目の非破壊スキャナーができた。これは、フラットベッドスキャナーの受光器部分を上に持ってきたようなもので、デジカメを書籍撮影用に固定したものである。大きな教室で書画カメラというのを見た人があるかもしれないが、あれにスキャナーの機能をもたせたようなものである。



 本を断裁するのは抵抗があるし、断裁さえしなければブックオフで転売できると考えればこれに食指がうごくが、本をめくる手間は変わらない。「本を押さえている指」が映り込む可能性がある。ソフトで消せるそうだが、いろいろ手間が多い。値段が5万円と高く、なかなか安くならないので、あまり人気がないと思われる。
 なお「自作」で本をめくる装置を考えた人もいる。スキャナー部分は一眼レフカメラを使っているようである。また、iPhoneアプリで自炊する(ページをめくると自動で撮影する)アプリもあるようだ。

 ということで、断裁機で断裁してドキュメントスキャナーで自炊、という方法は、最も一般的ではあるけども、他の方法もある。とりあえずぼくは断裁機と一緒にドキュメントスキャナーを買った。以下次号!