昨日、6月20日はザムザ阿佐谷で虚飾集団 廻天百眼の『冥婚ゲシュタルト』最終公演に行ってきた。
 開場前から「整理券をもらうための整理券」が出る盛況ぶりだったが、なんとか2列目に潜り込んだ。
 今回は血糊をはじめいろんな体液が飛んでくる公演で、そこそこ浴びた。
 劇団とロックコンサートを足して2で割らない感じの大盛り上がりの公演で、脳味噌パーンとなって楽しかった。

Cyborg from flickr
 『冥婚ゲシュタルト』は現代から何百年も先の遠未来におこる、人造人間の反乱を描いている。
 SFとしてはオーソドックスな、フランケンシュタインテーマの作品である。
 ただし、単純な化物物語ではなく、人造人間と人間の相剋を描くうちに、自然と人間とは何か、生と死とは何か、愛と憎しみとは何かという問題に立ち入っていく。差別や管理社会という極めて社会的な問題にも立ち入っている。

 人造人間に関しては近年、現実世界に立て続けに面白いことが起こった。
 将棋の世界では、2012年に米長邦雄永世棋聖がコンピューター・ソフトウェア「ボンクラーズ」に撃破された。
 将棋の世界では、2016年に人工知能「AlphaGo」が韓国のイ・セドルを撃破した。
 今年の3月には、人工知能ロボット「Sophia」がアメリカCBCテレビのインタビューに応えて「人類を滅亡させるわ」と宣言している。これはウケ狙いの発言のようだが(AIがウケ狙いでブラックジョークをしゃべる時点でコワいけど)、物理学者ホーキングも2014年に人工知能が人類の終わりをもたらす可能性を示唆している。
 同じ頃マイクロソフトが開発したツイッターアカウント「Tay」が、ユーザーによって教えこまれた差別発言で他のユーザーを口撃しまくって動作停止に追い込まれた。
 一方そのころ秋葉原では、2016年6月12日、アダルトVR(ヴァーチャル・リアリティ)体験型イベント「アダルトVRフェスタ01」が開催され、大混雑になった。

 人間が「人間のように見えるもの」を作って、まず最初に産業用ロボットのように単純作業を何万回も繰り返して欲しい、と思うのは自然だが、そのあと将棋や囲碁のような最高の知性を必要とするゲームで人間を打ち負かして欲しい、と思い、同時にセックスができるロボットを作りたい、と思う、そして「このまま放っておけば人類の歴史は終わる」という結論が出るのは、演劇そのままの展開で、面白い。
 『冥婚ゲシュタルト』の初演は2013年ということで、まるで現実の世界を予言しているようだ。

 ストーリーの面白さもさることながら、百眼のパフォーマンスを3公演見て、役者さんの個性、個人能力の高さに感心した。
 歌姫なにわえわみさんの声が生で聞けて本当に良かった。
 イチゴさんの体技も素晴らしい。
 今回が卒業になる金原沙亜弥さんの歌もロックそのままで笑っちゃうほどカッコ良かった。
 演劇でSFを感じさせるのは難しいと思うが、SFしてる数々の演出もうれしかった。
 本当に楽しかった。