昨日、5月7日土曜日は、学芸大学の千本桜ホールに、月蝕歌劇団『黒蜥蜴』を見に行った。
 月蝕歌劇団としては2月に『少年探偵団vs.怪人二十面相』を見てから連続で乱歩作品を見ることになった。

イジハピ! : 【第1024回】月蝕歌劇団『少年探偵団vs.怪人二十面相』を見た!

 女賊・黒蜥蜴は、怪人二十面相と並ぶ明智小五郎の好敵手である。三島由紀夫が戯曲にして美輪明宏が演じたのが有名だ。美輪さんは「三島さんの『黒蜥蜴』と寺山さんの『毛皮のマリー』は(私が演じて)残さなければならない」と言っていたそうだ。

 ぼくは三島・戯曲版は読んでいない。文庫本が高値になっていて手がでないのだ。

 乱歩による原作版は、子供の頃にも読んでいるし、今年没後50年を迎えて青空文庫になったのをまた読んだ。Kindle電子書籍の『【江戸川乱歩作品集・92作品・原作図表29枚つき】』は、200円で92作品が読めるが、第1作品が怪人二十面相、第2作品が黒蜥蜴で、月蝕の演目をそのまま並べているようで、笑った。

 『少年探偵団vs.怪人二十面相』は、少年向け中編の『怪人二十面相』に、大人向けエログロ作品の『陰獣』をそのままシームレスで繋いで、乱歩が愛した少年愛の世界を思わせる、背徳的でゾクゾクする舞台だった。

 月蝕版『黒蜥蜴』は、三島版ではなく乱歩・原作版をアレンジしているようだ。もともと大人向け小説であり、やや長い。そのまま演じると長いので、稽古中にどんどん内容をカットしていったらしい。
 乱歩の小説は大人向けと言っても、大人向け少年小説という感じで、思わせぶりな文学的晦渋さはなく、猟奇的、エログロな事件がバンバン起こる。もともと夢野久作や小栗虫太郎に比べて乱歩の文章は論理的で抜群に読みやすく、特に風刺とか、哲学というものがない。ただ、そのアッケラカンとした文章の中で凄惨な事件がバンバン起こり、探偵も盗賊もゲーム的にその運命を楽しんでいるところが、逆に、怖い。余談だが、乱歩は『芋虫』を反戦文学として読まれることを嫌い、「戦争反対か賛成かよりも、人間の生死そのものについて考えるほうが過激だ」という意味のことを言っていたそうだ。

 閑話休題、月蝕の舞台も大勢の少年たち、少女たちが、文字通り舞台狭しと暴れ回る作品で、むんむんとした人間の体温を感じた。内容は原作通り抜群に分かりやすく、だからこそ黒蜥蜴の美への執着や悲しい恋が描かれていた。

 主演は美女・湖原芽生さんで、大ハマリの黒蜥蜴だった。昭和の映画女優を参考にセリフを特訓されたそうだが、分かりやすくも妖艶で良かった。対する明智小五郎は『少年探偵団vs.怪人二十面相』に続く倉敷あみさんで、ちょっとユーモラスな快演だった。

 原作に出てこない少年探偵団が出てくる。これが中高生の美少女揃い。で、後半にバッチリ、ホンモノの柊一華さん+MモデルさんによるSMショーが出てくる。いいのかなー!? この背徳的なつながりがゾクゾクして良かった。

 ご贔屓の百津美玲さんはこの日だけの登場、『少年探偵団vs.怪人二十面相』に続いて人形の役で、セリフこそ少ないものの、青い目の美しい姿のまま微動だにしないところが原作の剥製人形を完全に再現していて良かった。今日日曜日は同じ役を柴奏花さんがやられるそう。これから見に行きます。
 明後日10日火曜日までやっているから興味のある方はぜひお運び下さい。