学生時代は制服が嫌いだった。サラリーマンのスーツと一緒であって、基本的に西洋人のコスプレである。セーラー服、詰め襟の場合は軍人のコスプレだ。伸び縮みしないし、チクチクする。調整が効かないから、夏は暑いし、冬は寒い。真っ黒で、すぐに白い汚れが目立つ。詰め襟のカラーが痛い。こんな不合理なもの、ぼくが大人になる頃にはすぐに廃止されると思っていたが、営々と残っている。なぜだろう。
 いまも学生が制服で電車に集団で乗ってくると、憂鬱になる。サラリーマンの集団に遭った時も同じだ。みんな同じ暗い色の服を着ているのが息苦しい。

Ichikawa Gakuen school uniform

義務教育、重い負担なぜ 制服、かばん…中学入学で9万円 - 西日本新聞

 この記事を見て驚いた。制服は高いのである。普通の服より高いのだ。ぼくは大人だけど、洋服に9万円なんて使わない。
 制服の規制は、ぼくが子供の頃に比べて、年々厳しくなっているんじゃないだろうか。ぼくの子供の頃はニットのセーターやベストに規定なんかなかった。みんな色とりどりのを着ていた。まあ派手なピンクとか着ているやつはいなかったけど。個々にニットのセーターを着て、温度を調整していたのである。
 いまはセーターやベストも規定以外のは使用不可で、しかも校名や氏名を刺繍しないといけないという。なぜ!? 個人を識別するために、制服に刺繍しないといけないというのならば一定の論理がある(それはそれで批判にさらされるだろうが)。しかしセーターやベストは購入は任意で、しかし規定外のものは不可、そして買うときは校名や氏名を刺繍しないといけないという。わけがわからないよ! セーターは6千円、ベストは5千円と、ユニクロのものより高いし、名前を刺繍してしまったら、人に譲ることもできなくなる。ジャージーに刺繍というのもぼくの頃はなかった。なぜ必要なのか。体育の時間に小さな刺繍を見て、生徒を識別しないといけないことってあるか?
 下の記事も奇怪である。

「リボンだけでもいいの買って」公立中の制服“経済格差”  同級生との「比較」に不安も (西日本新聞) - Yahoo!ニュース

 公立中学の保護者説明会に、指定の制服業者が4軒現れて、うちのはこういう特徴があっていくらになります、とプレゼンしたようだ。詰め襟上下の最安値は2万2450円、最高値は大手スポーツメーカーの「数量限定品」で4万4千円だそうだ。「数量限定品」って何!? ウチの子は高いの買ったけど、これもう売ってませんのオホホということだろうか。でも制服は貧富の差をなくすために導入されたんじゃないの?
 こんなの、絶対「安いやつを買ってるのは貧乏人だ」みたいな話になる。「リボンだけでもいいのを買って欲しい」という女子がいたそうだ。まあ、そりゃ、そう思うだろう。でも制服のリボンなんかに、なぜ差を付けた商品を作る必要があるんだろ。そして、制服のリボンって2千円もするもの!? ユザワヤで適当に材料を買ってきて、自分で作ったやつを着けて行ったら怒られるんだろうか。
 詰め襟の上下なんて、ユニクロ、しまむらが参入して見た目も機能も違わないものを1万円で作ったらどうなるだろうか。きょうだいのお下がりを着るのはオッケーだから、指定業者で買わないといけない、ということはないんじゃないだろうか。

 前から、公立学校が無償でないのはおかしいと思っていた。給食費が掛かる。習字道具や美術の絵の具代が掛かる。1個1個、生徒の親が買わないといけない。その割に、シャープペンシルはダメだとか、くつしたは白でワンポイントまでとか、変な規定があって、1個1個教師がチェックしている。超・アホみたいだ。いちいちうるさく言うなら必要なものは全部支給すればいいのである。教師も生活指導なんてめんどくさくないんですか。ぼくは中学生の子に変な靴下を履いてるから怒る職業なんて絶対にイヤだ。

 すごくお金が掛かるのが部活の制服だという。試合用のユニフォームはまだ分かるけど、練習用のジャージーが高いらしい。練習用のジャージーなんて体育と一緒の体操服でいいんじゃないの。でも、校名入り、名前入りのをお揃いで着たいという。そんなのダサいと思う。貧乏の家の子が、どんなにバスケの天才選手でも、お揃いの練習用のジャージーが買えないからバスケをあきらめることもあるんじゃないだろうか。電車に校名入りのジャージで、集団で乗ってくる部活の学生いるけど、正直1回もカッコイイと思ったことないよ!

 まあ美意識はひとそれぞれだが、制服も、運動着も、部活のユニフォームも揃いのジャージもすぐに着られなくなる。その時だけのものなのである。そんなものに何万円も掛け、あとはゴミになる。正直MOTTAINAI。お金だけでなく、資源としてもったいないと思う。

 栃木県足利市くらしの会という、主婦の人のボランティア団体が、制服のリサイクルというのをやっていて、総理大臣賞を受賞したそうだ。

足利市くらしの会「繊維のまちの制服リサイクルバンク」 (栃木県足利市) - YouTube

 このビデオは15分もあって、足利市の歴史とかも入っているけど、見応えがあった。これはいい。制服が千円とか、2千円で買えるのである。女子生徒もいろいろ選べて楽しそうである。すこしもビンボくさい気がしない。足利市だけでなく、全国でやった方がいいと思う。そう思って「制服 リサイクル」で検索したら、全国各地でやっているらしい。そりゃそうか。ここはPTA主導で、学校内でやっている。

中3学年委員会

 あちこちのリサイクルの様子を見て思ったけど、冒頭で紹介した西日本新聞の記事は、「学校は不合理なことをやっている」、「親は困っている」という悲劇的な話に少し寄せ過ぎだと思う。こういうリサイクルをやっている動きがあることも、セットで伝えた方がいいだろう。自分の地域、学校がリサイクルをやっていなければ、立ち上げればいい。先人の例が参考になるだろうから、それもメディアがばんばん伝えた方がいいと思う。公立の制服はリサイクルが当たり前、という話になれば、「数量限定品」なんかで儲けようとするダサいメーカーも淘汰されるだろう。