さいきんパワードリンク、というのが話題だ。
仕事をして、疲れたときに、飲むと、元気になるというものだ。
不思議な感じがする。
その元気はどこから来るのだろうか?

Abri de Tuquerouye, (Félix) Regnault, Henri Passet, octobre 1892 (2902380436)
こういうドリンクはたいてい、カフェインと砂糖が入っている。
昔から、疲れたらコーヒーを飲むといいと言われている。
カフェインは脳を興奮させる物質である。
砂糖も疲労回復の効果がある。
だから、昔からあるコーヒーに砂糖を入れて飲めば、パワードリンクと同じような効果が得られるのだ。

パワードリンクはコーヒーと違って、わざわざ淹れる必要がなく、プシュッと缶から飲めて手軽である。
しかし、そういう意味では、缶コーヒーでもいいような気がする。
缶コーヒーのCMを見ていると、不自然なほど男のサラリーマンが出てくる。
コーヒー飲んでひと頑張り、みたいなイメージである。
つまり、パワードリンク登場以前からも、缶コーヒーはカフェインと糖分を摂取して仕事をがんばるためのパワードリンクとして使われていた。

缶コーヒーは貧乏くさいイメージがある。
所詮ドリップコーヒーの代用品である。
最近はスタバやタリーズのような気楽なカフェとか、コンビニでもコーヒーのテイクアウトをやっているから、わざわざ缶コーヒーを飲まなくてもいいかもしれない。
でもぼくは昔から慣れ親しんでいる缶コーヒーがけっこう好きだ。

ジョージアは日本コカコーラの独自製品だが、最初「コーヒーを缶に入れて売れるものか」とアメリカ本社に言われたそうだ。
それをなにくそと思って、奮起するためにアメリカ本社のあるジョージア州になぞらえてジョージアと名付けた。
そのうちコカコーラの販売力も手伝って、日本の缶コーヒーで売り上げ一位になったそうだ。

コカコーラにも、かつてはコカの木の葉から取れる覚醒物質、コカインが微量ながら入っていた。
コカの葉とコーラの実から作ったからコカ・コーラ。
コカ茶はいまでもペルーやボリビアなどで飲まれている。
高山病の症状を緩和させるという。
微量のコカインを生活の中で摂取しているのだ。
ボリビアでは鉱山労働者がコカの葉を噛みながら飯も食わずに仕事をするそうだ。
これも日本のサラリーマンを対象にした缶コーヒーのCMを思わせる。

SNSなどに、海外のIT企業がいかにすばらしいか、という話があって、確かにすばらしいこともたくさん書いてあったが、中に「パワードリンクを無料で支給されている」とあって、それは違うんじゃないかと思った。
ボリビアの鉱山労働者がコカの葉を無料でくれるからウチの親方はすばらしいとはあまり言わないだろう。
そういえば昔ブラック企業に勤めていた時、お客さん(某大メーカー)から差し入れに栄養ドリンクを差し入れされてむかついたことがあった。

カフェインは風邪薬や頭痛薬にも入っている。
だるい気持ちをスッキリさせるそうだ。
だが、コカインやメタンフェタミン(覚醒剤)と一緒で、しょせん「元気の前借り」である。
あとでまとめて疲れが来る。

メタンフェタミンは、今でこそ蛇蝎のように嫌われていて、持って歩くだけで逮捕される。
だが、あれはもともとヒロポンと言って、戦時中に大手を振って売られていた。
日本人が発明した薬である。
疲労がポンとなくなるからヒロポン。
そう思っていたが、ギリシャ語でΦιλόπονος(ヒロポノス)、労働を愛するという意味も掛かっているそうだ。
へー。
ということで、昔は、戦意高揚、増産のために覚醒剤の使用が推し進められていた。
来るべき本土決戦のための最終兵器として軍が備蓄していたのが、戦後どっと市中に流れて、それで中毒患者が増えたそうだ。
今では厳しく禁止されている。

しかし今はパワードリンクが蔓延している。

疲れたら休めばいい。
眠くなったら眠ればいいのである。
でも人間は社会の中で生きていて、他人と都合を合わせないといけないから、なかなかそうも行かない。
決まった時間に会議にいかなければならないし、無理な締め切りに合わせなければならない。
サラリーマンの場合、特に用事がなくても、朝定時に行かないだけで不真面目な人と思われる。
あれはなかなか大変だよ。

かつてバスの運転手さんが覚醒剤で捕まった事件があった。
仕事を真面目に遂行するために薬物を摂取したわけだ。
ドラッグというと若い不真面目な人が不法に摂取してウヘヘヘヘ、というイメージがあるが、そうではなく、バスの運転がきつくて、やる気を出すためにクスリをやっていたわけで、悲しすぎる。
不法行為によって成り立っている労働は良くない。

たしか鶴見済さんの本に書いていたことだが、覚醒剤中毒の人が、なぜシャブ(覚醒剤)に手をだすか、と言われたら「シャブい世の中だから」と答えていたそうだ。
なにしろ元気で、がんばっている人が尊ばれる社会である。
ぼくもふだんから元気がありあまっていて、働いても働いても疲れなければどんなにすばらしいだろうと思う。
でも、人によってペースは違うから、そこはムリしないほうがいい。

とかいいながら、ぼくも起き抜けにはコーヒーや「ストロングコーラ」を常用している。
どないやねん。
いや、事情があるのだ。
もともとうつ症状気味で朝が弱いほうだが、朝起きて夜寝ないようにすると恐ろしい昼夜逆転現象になってしまう。
そこで、朝カフェインを摂取して、調子を出し、太陽を浴びながら一仕事して、夕方から夜に掛けてペースダウンするようにしている。
この場合大事なのは、夜カフェインを摂らないようにすること、だけでは足りなくて、午後からもうカフェインは摂らないようにする。
そうしないと、夜ちゃんと眠れず、次の日ちゃんと起きられない。

ガールズバーなどで、お酒が飲めない女性が、パワードリンクを飲む例もあるそうだ。
酒というのはある程度ハイになって場を盛り上げるために飲むものだが、同じような効果を狙ってなのだろうか。
夜中にハイになるためにカフェインを増強した飲み物なんかを飲むのは大変危険だ。
「パワードリンク」は要注意だと思う。