先日、電車に乗っていたら、隣の席に父親と娘とおぼしき中年男性と女の子が乗ってきた。
中年男性が女の子にプリントをもらって、仔細にチェックしている。
国語のテストらしい。
「次の物の名前(名詞)と、飾り言葉(修飾子)を、線でつなぎなさい、か…
「『赤ちゃんが』―『にぎやかだ』…ううん、これは、これで、正解だよな…
「『メロンが』―『きれいだ』…ううん、これも、これで、正解なような…」
問題を読むほどに、答えを読むほどに、娘の誤答に親が引っ張られているようで、聞いていておかしかった。
これは問題が悪いと思う。
文法の誤りと、世間の常識を同じレベルで並べているのだ。
まあ小学校の『国語』なるものの指し示す範囲じたいが良く分からないのだが。

いまさらだが、インターネットで大勢の暇な人が「掛算に順番があるか、ないか」ということで議論している。

数学の「文章題」で
3人の子供にみかんを1人あたり4個配ることにしました。
みかんは全部で何個ですか。
式を立てて答えなさい。

というのが出た。これが
4×3=12 A:12個

だと○をもらえるが、
3×4=12 A:12個

だと×になるようだ。

どっちでも12個になるからいいじゃん、と思うのだが、「問題の意味」を理解していないからダメだと言う。
どうやら、この「式の意味」を理解させることが、この問題の眼目であると思っている人もいそうな勢いである。

掛ける数と掛けられる数の違いが理解できないとダメだ、という。
掛ける数と掛けられる数ってあるのか。
でもこれ、子供の数とみかんの数と、どちらが掛ける数なのか。
そもそも掛算は交換してもなりたつところが眼目なんじゃないだろうか。

4個掛ける3人だから12個になるので、3人掛ける4個だと12人になる、という説を唱える人もいる。
これは単純に間違いである。
100キロで5時間はしると500キロ進むが、5時間100キロで走ると500時間になる、と言っているようなものだ。
実際には100キロ/時間 × 5時間で、時間が約分されるから、500キロになる。
5時間 × 100キロ/時間=500キロとしても一緒である。
数と一緒に単位も掛けあわせれば、掛算が可換であること、自明である。
みかんの問題に当てはめれば、3人の子供に4個/人(1人あたり4個)のみかんを与えた。
3人 × 4個/人であっても、4個/人 × 3人であっても、数は12になり、単位は人が約分されるから個数が得られる。
この、量は数と単位(次元)で成り立っていること、掛算は可換であること、その面白さが、数学を教える意味であろう。

掛算は長方形にものを並べた数で求められる。

  ●●●
 個●●●
 数●●●
  ●●●
  人 数

いま、子供1人あたりの個数を縦軸に、子供の人数を横軸に置いた。
みかんの数は12個だと分かる。
縦×横でも、横×縦でもかまわないことが、ハッキリ分かる。

と、思っていたが、最近の学校の教師の中には、本物の長方形の面積でも「縦×横」と教科書に公式が書いている以上、縦×横と立式しないとバツにする人もいるというからまあびっくりだ。
子供のテストがバツになっているのを見て、憤慨した父親がツイッターにアゲていたので、いま引用しようと思ったが、反響の大きさに驚いてか、発言者のお父さんが削除されていたので、ここにも載せないことにする。
でも、そういう先生がいるらしいので、いるという前提で先に進む。

この教師は完全に間違っている。
長方形というのが世の中にはたくさんあるが、どっちが縦でどっちが横かは、人間の勝手で決まる。

いま、テーブルに1辺3cm、1辺4cmの長方形の紙があって、テーブルの隣り合った辺に座っているAくんとBさんが同じ紙を眺めていた。
20151113rect
Aくんは縦×横だから3cm×4cm=12cmになると答える。
Bさんは縦×横だから4cm×3cm=12cmになると答える。
つまり、どっちが縦で横かはたまたま紙がどう置かれているかによって決まる。
だから掛算の順番に意味はない。
ちなみに、センチメートル×センチメートルだから平方センチメートルと、単位も正しく計算されていることに注目しよう。

もし、風が吹いて紙が斜めになったらどうなるか。
20151113rect2
この場合、先生に教わった公式通りに立式しないとバツになるというので、縦×横にこだわっていると、Aくんも、Bさんも、答えが出せない。

学校で習っていることにあまりにも逐語的に拘泥すると、実社会に出ると困るのはこのことだけではない。
先生だって、人間だ。
能力に限界はある。
だから変なことを言うことぐらいあるので、それは批評的にとらえて、自分の中で妥当な教えに落としこむのが正しい。

ちなみに、みかん理論を援用すると、単価×個数=金額としなければ請求書は正しくないことになるが、実社会ではどちらもありうる。
いま、Googleで「請求書」を画像検索すると、1個目が単価先、2個目が個数先である。





ぼくは前の会社で10年以上請求書システムを開発運営していたが、個数先にしていた。
単価があまり変動せず、個数が多い場合、個数先にしないと見づらい。

               ワード数 ワード単価      金額
 インストールガイド      500    20  10,000
 チュートリアル      2,000    20  40,000
 ライブラリーマニュアル 10,000    20 200,000
 QA          12,500    10 125,000

 合計                       375,000

これ、ワード単価先にしてたら絶対見づらいと思う。

でも、こんなの、別に、どっちが正しいから丸暗記すればいいというものではない。
そんなこと覚えなくていい。
会社ごとに、仕事ごとに話し合って決めればいいのである。
逆に、今のやり方が正しいか、どうすればより良く出来るのか、批評的に、協調的に考えるのはいいことだ。
ただ、絶対に1つ覚えなければならないことがあって、それは、掛算は順番をどうしようが答えは同じになるということだ。

学校の先生は、南京大虐殺があったとかなかったとか、人間ピラミッド10段は必要だとか不要だとか、いろんなことを言う。

人それぞれ考えはあるから当たり前だけど、生徒は、たとえ子供であっても、「この先生のいうことは絶対ではない」ということを念頭に置いて、自分の人生にあてはめて考える必要があると思う。
そして、図書館で本を調べたり、親の意見を聞いたりして、常に大人同士の意見を検証する姿勢が大切だ。

なお、最近おもしろい話があって、アメリカでも掛算の順番にこだわる先生がいて、「間違った」順番で書くと○をくれないという。
ところが、その順番が日本と逆なのだ。

The Lansey Brothers' Blog: 3rd Grade Math Fail

掛算には順番がないこと、そして、日本にもアメリカにもいろんな先生がいることが良く分かる。