いぜんライフハックスとかに凝っていた時、「マルチタスクは良くない。かえって能率が上がらないばかりか、ウツ状態になる」という記事を読んだ。

CNBC NJ HQ Control Room
複数の人がそう書いていたし、それなりに説得力のある意見だったから、そんなもんかなと思って説得された。
ぼくは仕事がしばらくうまく行かず、人生何度目かのうつ状態になりかかっていたので、その原因は習い性となっているマルチタスクであったか! と思って、やめてみた。
2年ぐらい、意識的に複数の仕事をやらず、単一の仕事に集中するように心がけた。

これがうまくいかない。

ぼくはもともとものすごいマルチタスク派である。
本を読みながら飯を食う。
歩きながら音楽を聞く。
睡眠しながら落語を聞く。

時間が節約できるからというのが第一義だが、より大きくは、精神が安定するのである。
2年ぐらいの強制シングルタスク生活で強固な確信を得たのは、ぼくのような雑念の多い人間は、マルチタスクを我慢してシングルに切り替えると、空いた思考スロットで、無意識に、ペンディングの心配事を考え始めるのである。
「ぼうっと浮かんでくる嫌な考え」と仕事のマルチタスクになってしまうのだ。

であれば、無理のない範囲でマルチにしてしまって、今の自分にプラスになることばっかりした方が、全体がうまくいく。
どれかが頓挫してもどれかは前進しているので、目の前マックラ感が軽減され、気持ちがアガるので、頓挫していたことも打開策が見つかる、ということも多い。
ぼくは、むしろ、マルチタスクにした方が、集中できて進む。
人によると思うが、シングルタスクでダメな人は、マルチを試してみたらいかがか。

コンピューターにおけるマルチタスクと一緒で、人間のマルチタスクも、2台のパソコンを両目両手で操って、ものすごいスピードで全然違うプログラムを書くとか、そういうわけじゃない。
たいてい一瞬一瞬、時間をスライスして交互にやっているのである。
特にコンピューターの仕事は「待ち」が多いから、最低2個はタスクを持っていないと、イライラする。

むかしブラック企業に務めていた時、直属の上司が急にぼくに悪い意味で目をつけて「深澤に頼んでいる仕事は簡単なはずなのにいつまで経っても終わらない、サボっているのではないか」的なことを言い出した。
売り言葉に買い言葉で「じゃあつきっきりで監視してくれたらいいんじゃないですか。どこでどう時間が掛かっているか説明します。その上で、なお俺が気に入らなくて交代させられるなら、説明することで引き継ぎもできるし」と言ってみた。
その上司が面白い人で、本当に次の日の午前中ぼくにつきっきりでついて回った。

ぼくは人にものを説明するのが好きだし、説明することで作業が合理的になるという利点もあるなあと、実際にやってみて思った。
今で言うエクストリームなんとかとか、アジャイルなんとかとか、ペアプログラミングの走りみたいなものである。
「ここでプログラムAがプリントを出している間にプログラムBを作ります」
「プログラムBをコンパイルしている間にプリントを取ってきます」
「プリントを見ながらお客さんに電話していいですか」
みたいなことを言っていると、その上司はいま思うとイイヒトだったと思うのだが「深澤さんはずいぶんいろんなことを同時にやってるんだねえ」と感服した様子で言った。
「昨日はスミマセンでした。今後もよろしくおねがいします」と言って、凸凹コンビのペア作業は半日で終わった。
まあ自慢話だ。
サラリーマン何十年もやっていたら1回ぐらいこんなことありますよ。
でも結局その会社問題が多くてその1〜2年後に辞めたけど、こんなセッコイ思い出が、輝かしい成功体験であって、ブラック企業で働いたのも悪いことじゃなかったなと思うし、今も辛い時苦しい時、オッサンの照れくさそうな笑顔を思い出す。

話を戻すが、ぼくは一時期、シングルタスクじゃないとダメですよ、と断定的に言われて、しばらくは試してみたけど、ダメだった。
こんなの、人によると思う。
マルチがうまくいく人は少数派で、ぼくはもしかして、流行りのなんとか症候群とか、なんとか障害なのかもしれない。
逆にシングルタスクにさえすればうまくいくのに、マルチにして苦しんでいる人もいるだろう。
でも少なくともぼくの場合は、マルチタスクにすることぐらいで能率が上がるんだったら、素直にそうすればいいという結論に達した。

それでも「シングルタスクにすれば今ぼくが抱えている問題は解決するかもしれない」という仮説を立て、しばらくそれを信じてやってみた、やってみてうまくいかなかったという知見を得られたこともまた、良かった。
まあ2年は試しすぎだけど。