昨日、6月28日日曜日、新宿花園神社特設紫テントに、劇団新宿梁山泊公演『二都物語』千秋楽を見てきた。

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2回めだ。
最初から2回見る予定だったが、2回見て本当に良かった。
1回じゃ全然分からないよ。

1回目は初日に見たが「階段予約席」で観た。
これは客席を前後2つに分けた後半部分で、段に座椅子が置いてあって居住性がいいが、舞台から遠い。
しかも初日は1分ほど遅刻してしまって、隅の席になってしまった。

今回は「桟敷自由席」で観た。
これは客席前半で、畳が敷いてあって、座布団が置いてある。
ぼくは17番だったが、最前列の最左端に入った。
舞台が近い!

客入れで役者さんが花道を歩き回って「前に詰めてください」、「団扇をお貸しします」などと声を掛ける。
この日は涼しくて良かった。
舞台の隅に蚊取り線香が焚いてある。
唐組『透明人間』の時もそうだったが、蚊がいるのは想定内として、結構な大きさの蛾がいるのはびっくり。
舞台の灯りに引き寄せられるのだ。

開演前は、舞台の後壁が取り払われていて、花園神社の森が見える。
『透明人間』の時は反対に、終演後に後壁がダーン! と取り払われて森からサアッと風が入ってきたのを思い出す。
テント芝居の醍醐味を感じる。

開演前になって役者さんが「舞台の上には玄界灘(溝のこと)があって、みなさんに波しぶきを味わってもらいます。今日は千秋楽なのでサービスが過剰になる恐れがあります。どうぞ大事なお手荷物をお守りください」という意味のことを言って、ビニールシートとレインコートが配られた。

月蝕歌劇団でも血糊と蝋燭の蝋が飛んでくるということでビニールシートが配られる。
『透明人間』のときも水が飛んでくるということでビニールシートが配られた。
とは言っても、そうそう液体なんて客席まで飛んでこないものである。
ところが、この『二都物語』では、本当に、半端無く、ジャブジャブ水が掛かる。
もう、笑っちゃうぐらいぶっ掛けられるのである。
ぼくは持っていたミニショルダーに水が染みて、中のポケットティッシュがへろへろになった。
奇跡的にiPhoneは壊れなかったが、結構あぶなかった。
来年同じ花園神社で『新・二都物語』をやるそうだけど、その時は気をつけよう。

初日、最初の1分を見逃してしまったが、これは本当に損をした。
ここを見逃すと全体が分からない。
と同時にこの時に、第1回の大量の水が桟敷席を襲う。
最前列の客が一致団結してビニールシートを被る。
とその時、本当に、ビニールシート越しに水がジャブジャブ掛かって、水滴に濡れたビニールシート越しに役者がキラキラ輝いて見える。
海から上がってきた元日本兵の頭目、浪花の唄う巨人・パギやんこと趙博(チョウ・パク)さんが「みんなで下品になりましょう!」みたいなことを客席に叫んで、客席が笑いに包まれ、一気にヒートアップする。
何度も浴びせかけられる水を避けているうちに、客席の連帯感がどんどん高まり、いかにも難解なアングラ劇なのに、ロック的な盛り上がりが生まれてくる。
イヤー桟敷席で見て本当に良かったよ。

一番左端で見ていると、ご贔屓の柏木亜優美さん(あゆみっくわぁるどさん)が左端で踊るので楽しかった。
造花を作る5人の少女はみな愛らしく、かつ歌声が力強くて良かった。

肝心な内容はすっ飛ばして書くが、千秋楽はカーテンコールにサプライズがあった。
役者全員の紹介の後で、脚本家唐十郎さんの奥さんで、今回二枚目を演じ「状況劇場はこの人に受け継がれます」と紹介された大鶴義丹さんのお母さんである李麗仙(リ・レイセン)さんが客席にいることを紹介され、舞台に上げられたのである。
まさかの親子ツーショット。
ぼくは世代的に李麗仙さんの活躍に触れたことがなかったが、さすがの凛とした美しさであった。

李麗仙さんが1972年、軍政下のソウルでのゲリラ的な初演の思い出を語る。(記憶に頼って要約)
「当時はソウルに唐十郎と、私(李麗仙さん)と、大久保鷹と、不破万作と、根津甚八の5人だけで、観光ビザで渡りました。その前にカフェなんとか(失念)という喫茶店で出来るって話があったんだけど、その喫茶店はもうつぶれていた。それで金芝河(キム・ジハ)さんと知り合って、唐十郎が金芝河さんの芝居に、金芝河さんが我々の芝居に出てくれるって言って、金芝河さんの協力でこの二都物語が上演出来ました。金芝河さんは韓国でも反体制詩人で有名で、日本でも名が知られていた方なんですけど、結局金芝河さんは出演できなかったんですが(このへん記憶があいまい)こんな話をしているとあと30分ぐらい必要ですね」
会場笑い。
李麗仙さんは、『二都物語』の演出もされた金守珍(キム・スジン)さんの演出で、今年9月30日から『少女仮面』を再演されるそうで、これは絶対見ねばと思った。