Web版コミックエッセイ劇場で無料で見ることができた青木光恵さんの「中学なんていらない。」が、紙の単行本、Kindle本に続いて、作者のサイト「うさぱらーず」でスマホ版として発売された。

『中学なんていらない』スマホ対応版を上下巻で発売! - まんが家 青木光恵の公式サイト|うさぱらーず
スマホで見やすいように、4コマ1本1ページになっていて、値段も上下巻合わせて紙版・Kindle版に比べて約半分の500円と安い。
早速購入した。
なぜこんなに安くできるかというと、作者直販だからだ。
これが出来るのも、紙を印刷する必要がなく、在庫も管理する必要がない、電子書籍ならであろう。

では電子書籍は誰でも簡単に出来るのだろうか。
うさぱらーずの場合は青木さんのご主人である小形克宏さんが編集、電子出版の専門家だからできているところではあるだろうが、青木さん、小形さんは、電子出版の普及、啓蒙活動に力を入れられているようだ。
紙書籍のように出版社に企画を持ち込んで交渉する必要もなく、電子原稿さえ用意すればすぐに発表でき、印税率も高く設定できる。
読者はパソコンやスマホやタブレットを使って自宅でも移動中にも本を買うことができ、カラフルな電子コンテンツを読むことが出来る。

もちろん紙の書籍は紙の書籍で、長い歴史があって親しまれている。
ぼくは電子書籍が大好きだが、あらためて紙の書籍ならではの価値を考えてみると、
 ・書店でふと手に取ってみる
 ・図書館でふと手にとって見る
 ・自分の家や友達の家でふと手にとって見る
ということにおいては、やはり電子書籍はまだまだ、かなわない。
本の装丁、サイズ、厚みで大体どんな本か分かる。
この題名でこれくらいの厚さの本であれば、手にとって読んでみようかなあ、と思う。
この、存在そのものが読者を引きつける(あるいは遠ざける)機能は、まだまだ電子書籍には備わっていない。
適切な比喩か分からないが、紙の書籍との出会いを飲み会で人と知り合うこととすると、電子書籍は出会い系サイトで人と知り合うような感じがする。
書いてみてやっぱり全然適切な比喩でなかったような気がするが、電子書籍はまだまだスペック重視で、内容がよく分かっている本じゃないと買わないし、そもそもその本に到達できない(その本のことを知ることができない)。

あと、書く側からすると、初版が数千部ということで、まとまったお金が入るので、自分の本の企画に公共的な価値があり、出版社の企画として受け入れられる機会があれば、現状では紙の本の方がお得である。
電子書籍は購入が決まってから初めてファイルを出版社のサーバーから読者の端末にコピーするので、初版部数n千部(n万部)ということがない。
(その代わり返品もないし、在庫もないから、良し悪しだ。)
あと、上に書いたことの裏返しで、「思ってもいなかった読者」に対するリーチは紙の方がはるかにいい。

あと、プロの編集部や出版社の営業の目を通さないので、変な内容の本でもそのまま出てしまう危険性がある。
でもこれも危険性とばかり言えなくて、変な内容の本がそのまま出せてしまう(読めてしまう)という楽しみもある。
今の電子書籍は、80年代のパンクロックに似ている。
パンクロックのようなレコードを誰でも出せるようになったからと言って、昔ながらの音楽が滅びたかというと、そんなことはなかった。
今後も共存共栄していくだろう。
ぼくは好きな作家の本は両方出て欲しいし、紙ではちょっと出ないという本に、電子で出会うのもすごく楽しみだ。

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