衆議院解散総選挙が決まった。
突然の選挙である。
消費税引き上げを延期するために、国民に「信を問う」選挙ということである。
つまり、消費税を来年の10月に上げて欲しくない人は安倍首相を支持してください?ということか。
これがいろいろ疑問である。

Asanuma Inejiro 1948

誰が消費税を上げたいのか

消費税はそもそも、自民党の大平首相の一般消費税構想、中曽根首相の売上税構想を経て、竹下首相が3%でスタートした。
この頃から日本はバブル景気に入った。

1994年に日本新党の細川首相が深夜の記者会見で「消費税は廃止するが、7%の国民福祉税を新設する」と言い出した。
これは何の根回しもしていなかったらしく、結局翌日(暦の上では同じ日)に撤回した。

自民党の橋本首相が5%に上げたときは、バブルははじけていて、このあと日本は長期不況に苦しんだ。
消費税による税収増を、所得税+法人税の税収減が上回り、4兆円の税収増を見込んでいたが結局4.4兆円の税収減になったと言う。

 消費税 - Wikipedia

そのあと民主党の野田首相が自民党、公明党との「三党合意」で消費税を上げることを決めた。
実際にこの法律に従って8%に上げたのは安倍首相(第2次安倍内閣)である。

という歴史を見ると、どの党が来年10%の消費税上げに賛成しているのか、よく分からない。
自民党の中でも意見が割れているという。

大平内閣で消費税構想が上がったとき、ぼくは子供で、大分県別府市に住んでいたが、地元の大物政治家、佐藤文生氏(故人)がテレビで「自分は消費税に反対です」と言っていて、自民党でも意見が割れてるのか、と、子供心に思ったのを覚えている。
選挙のポスターにも、後付けで「消費税反対!」というシールを貼る候補者もいた。

今回、個々の候補者は、自分は消費税反対なのか、消費税賛成なのか、せいぜいはっきりしてもらいたい。
口を濁す政治家も多かろうが、今回ばっかりはさすがに、常識的に言ってはっきりさせるのではないだろうか。

しかし、政党単位で投票する比例代表制の方は、どうすればいいのか分からない。
自民党に入れたら消費税賛成になるのか、反対になるのか。
民主党に入れたら消費税賛成になるのか、反対になるのか。
それがはっきりしないと、「信を問う」ことにはならないのではないかと思う。

選挙しないと消費税アップを止められないものなのか

消費税増額を定めた法律には「その時の経済状況を見て決める」という「弾力条項」が定められている。
来年の増税の可否は、11月17日に発表された国内総生産(GDP)の速報値を見て決めることになっていた。
しかしその値が、2期連続のマイナス成長になっていた。
ということは、経済状況が悪いということだから、わざわざ選挙で信を問う必要がないのではないだろうか。
法律に従って粛々と先送りすることは出来ないのだろうか。

選挙には600億円掛かるとも、800億円掛かるとも言われている。
ロッピャクオクエンとか言われると、どれぐらいのお金なのかぼくなんかには想像もつかない。
いま財務省が、経費削減のために35人学級を40人に戻せと言っていて、その結果節減できるお金が86億円ということだ。
選挙って金かかるんだなー!

なお、安倍政権は再来年の4月に消費税を上げるときは、「その時の経済状況を見て決める」という「弾力条項」を外すという。

問われるのは消費税アップだけか

さきの野田内閣は、「国民の信を問わず」に「三党合意」で消費税を上げたと批判された。
野田内閣退陣後に政権の座についた安倍首相は、圧倒的な多数を背後にTPP参加、特定秘密保護法可決、そしてなんといっても集団的自衛権の行使を可能にする解釈改憲を行っている。

先の衆議院、参議院の選挙で自民党は歴史的な大勝利を上げたが、このとき、自民党に投票した人たちは、ここまでたくさんの、日本の国のかたちの変更を伴う大改革に対して、全面的に支持、委任を行ったのだろうか。

これからも派遣法の改正、共謀罪の新設、原発の再稼働、そして憲法改正も予定されているという。
今回、自民党が大勝したら、安倍首相は「国民の信を得た」として、これらの懸案事項をバンバン思い通りに解決していくのだろうか。

1960年、社会党の委員長であった浅沼稲次郎氏は、演説で以下のように語った。
「重大な案件が、選挙のさいには国民の信を問わない、そのときには何も主張しないで、一たび選挙で多数をとったら、政権についたら、選挙のとき公約しないことを平気で多数の力で押しつけようというところに、大きな課題があるといわなければならぬと思うのであります。選挙の際は、国民に評判の悪い政策は、全部伏せておいて、選挙で多数を占むると…」