先日、昔のイエスに関するブログに、ツイッターでコメントをもらった。
トレヴァー・ラビンのギターで日本に来た時の東京公演は、武道館ではなくて代々木体育館ではないか、というものである。
そういわれればそうだった。
訂正しておわびします。

Yes concert このブログで集中的にイエス評を書いていた頃、コメント欄にいくつかメッセージをいただいた。
それで、現役でイエスを聴いていた70〜80年代には聴いていなかったアルバムを聴いてみた。
ライヴ/アルバムの『イエスショウズ』だ。
メンバーとしては『太陽地形学の物語』、『リレイヤー』、『究極』、『トーマト』の時代で、ぼくが一番好きな時代である。
しかし、なぜか、聴かなかった。

このアルバムが出たのが『トーマト』と『90125(ロンリー・ハート)』の間の『ドラマ』期、いわば「クーデター・イエス」の時期だった。
ぼくはイエス好きの中でも急進的なジョン・アンダーソン原理主義者であって、ジョンが抜けた、それもポップ・バンドのバグルスが入ったイエスなんか、無理に聴く必要もないと思っていた。
今はこだわりがなくなっているので『ドラマ』も面白く聴く。
トレヴァー・ホーンがジョン・アンダーソンのモノマネ風に歌っているのなんか最高だ。
しかし当時は聴かなかった。

なぜこんなジョン・アンダーソンばりばりの時期のライヴ盤がクーデター期に出たんだろう。
実は、このアルバムはトーマトを出した後の、ジョンがいた時期に出る予定だったという。
しかし、出る直前にジョンが急に自信がなくなって出すのを中止したそうだ。
そんなことあるんだろうか。
プロダクションはどこまで終わっていたのだろうか。
ロジャー・ディーンのジャケット・アートとか終わっていたら大変だ。

しかし、ジョンが脱退して、晴れて出すことになった。
ちなみにこのアルバムのミックスはベースのクリス・スクワイヤーが担当していて、妙にベースの音が大きいのがおかしい。
ジョン脱退の理由は、このライヴ盤をめぐるイザコザもあったんじゃないだろうか。

オープニングは、さきに出たライヴ・アルバム『イエスソングス』に続いて、小澤征爾指揮シカゴ交響楽団の『火の鳥』のエンディングが流れる。
この曲に合わせて、イエスのメンバーがバンバン演奏を足しているのが楽しい。
クラシックの演奏にロック・バンドが演奏を足すと言えば、チャイコフスキーの「1812年」にリッチー・ブラックモアズ・レインボウ時代のコージー・パウエルがドラムを叩くやつがあって、これが楽しかった。

1曲めはスクワイヤーの曲「パラレルズ」だ。
産業ロック丸出しの、個人的にあまり面白みが感じられない曲だが、『火の鳥』にうまくつないでリックがオルガンを弾いているところをみると、当時のイエスのライヴはこの曲で始まっていたのだろう。



2曲めは「時間と言葉」で、セカンド・アルバムの表題曲だ。
めずらしい、スティーヴ・ハウ加入前、リック・ウェイクマン加入前、シンセサイザー導入前の曲で、当時はオーケストラとやっていた。
このアルバムのラインアップの中ではテンションが高くないホンワカとした曲だが、楽しそうに演奏している。
リックのエレピがめちゃめちゃ華やかで楽しい。



4曲め「錯乱の扉」はパトリック・モラーツがキーボードを引いている。
モラーツが参加したライヴはDVDにもなっている。
このDVDが音質が悪くて、モラーツが『危機』などの曲をめちゃめちゃ独自解釈していることもあって不当に評価が低いが、いま見ても全然古くない名演奏だ。



5曲めは「クジラに愛を(Don't kill the whale)」という曲で、モロ当時もりあがっていた日本の捕鯨に反対する曲だ。
こういうアーティストが当時多くて、オリヴィア・ニュートン・ジョンが来日をキャンセルするという騒ぎもあった。
この曲はシンプルなロックで、あまり面白みがない。



面白いのが次の「儀式」で、『海洋地形学の物語』の曲だが、6曲めと7曲目に分かれている。
たぶんレコード(ビニール)のアルバム時代に、2枚目の表と裏(C面とD面)に泣き別れになったのであろう。
普通CDになったら、マスターから作り直すと思う。
マイルスの『アガルタ』、『パンゲア』などもCDで聴くとつながっている。
(逆に当時はどこで切れていたか知りたい)
ところが、このアルバムでは堂々と切れている。
iPhoneで聴くとつながって聞こえるのだが、いちおうジャーンというキリのいいところで切れているようだ。



『海洋地形学』を録音している最中にリックはイエスを脱退したのだが、この曲はモラーツが弾いている。
こんなややこしい曲を覚えるのも大変だ。
「儀式(Ritual)」という題名がよく分からなかったのだが、DVDで見るとジョン、クリスがアランのドラムに合わせてパーカッションを打ち鳴らす場面があり、ここが「儀式」なのかなー(笑)と思ったりする。

シメは「不思議なお話を(Wonderous Stories)」で、この曲をシメに持ってくるあたり、当時のジョンのなごみ系指向が伝わってくる。
このアルバムを制作していたときのクリスは、ジョンと意思の疎通が取れていたのであろう。



という、全7曲8トラックであるが、今聴くと演奏がめちゃめちゃうまく、何より音がイイ。
イエスというと、ライヴもすごいことはすごいけど、スタジオ盤よりは一枚落ちる、という感じで、積極的に聴こうと思わなかったが、当時の不明を恥じる。
めちゃめちゃハイ・テンションなアルバムである。
選曲もほどよくバランスが取れていて、「イエス入門」にも好適である。