机に向かって原稿を書く。
こういう仕事をしていて困るのが、どれぐらい頑張れば今日のノルマ達成か、わからなくなることだ。
今日中に終わるとか、明日が締め切りとか、そういう場合は終わるまで頑張ればいい。
がんばるしかない。
でも、数ヶ月先までに800ページ書くとか、そういうときは、どうせ今日中に終わらないので、いずれ作業を中断しなければならない。

すぐになまけたくなる。
適当に切り上げたくなる。
ぼくはずいぶんダラダラした人間なので、本当にすぐなまけたくなるのだ。

なまけたくなる時というのは、「ああ、俺はダメな人間だから頑張りが効かないなぁー。よしサボっちゃえ」とかマンガの登場人物のようなことを考えてやめるわけではない。
「いま、もしかして調子が悪いんじゃないか?」
「調子が悪いのに無理にがんばったら、体に良くないんじゃないか?」
「明日もあさっても頑張らなければいけないのに、体を壊したら何にもならないだろう?」
「明日早く起きて、スッキリした頭でやった方がいいだろう」
「よし、今日は戦略的撤退だ! 英気を養うぞ!」
という、実にもっともらしい悪魔のささやきが聞こえる。

だからといって、しゃにむに体力の限界まで、無計画にがんばるのがいいとも限らないのも事実である。
人間いずれは休まなければならず、長期的な作業の途上であれば、計画的に休まないといけない。

そうやって考えたら、サラリーマンの8時間労働、朝9時に始めて、お昼に1時間休憩、3時からはラジオ体操、水曜日はノー残業デーで、ハナキンは飲み、というのはけっこう理にかなっている。
外的な要求で強制的に休養を入れることで、じゃあ残りの時間ぐらい頑張れよ、という気になるのだ。

ちょっと前にポモドーロ・テクニックというのが流行った。
キッチンタイマーをつかって25分パツパツに働いて、5分休憩、合わせて30分を4セットやったら、エクストラで30分休憩、というやつだ。
これも外的な要求で強制的に休養を入れて、その代わり作業時間の集中力を高める方法だ。

最初これに凝って、導入していたが、25分というのはどうもぼくには短すぎるということが分かった。
60分がいいと思う。
ぼくは、良く言えばスロースターターで、エンジンの掛かりが遅い。
また、調べ物が意外と多かったり、トンネルを掘っていて岩盤に当たるような難所に当たると、すぐ時間が過ぎてしまう。
難所に取り組んでいる時に、25分の作業時間が過ぎてしまって、5分休憩なんか入れたら、もう何をやっていたか忘れてしまうのだ。
面倒だ。

まあ、人によって適した時間はいろいろあると思うが、ぼくは1時間1セットにした。

さて、キッチンタイマーだが、ダイソーのカード型のものにした。
iPod nanoをどうかしたような形をしている。

20141013timer

MINを1回押すか、1秒押し続けると1分カウントアップする。
これでタイマーをセットする。
60分で作業を中止したい場合は60:00にセットする。
これでSTART/STOPを押すとカウントダウンが始まる。
60:00でセットしていた場合は59:59、59:58・・・と減っていき、00:00になるとピピピピピ、と音が出る。
START/STOPを押すと音が止まる。

すばらしいのは、60分経って音を止めると、前の設定を覚えていて、60分にセットされている、ということだ。
けっこうセットが面倒なのだが、一度セットするともうセットする必要がない。

リセットももちろんできる。
MIN+SEC長押しだ。
あと、この機械は裏にスイッチがついていて、切ると表示が消えるのが特徴だが、セットも消えてしまうので、つけっぱなしにしている。
何十日も使っているが、まだ電池は切れない。

これで60分仕事をする。

和田秀樹さんが書いていたことだが、「きょうは1時間勉強をしよう」とか思っていて、やっかいな心のクセとして、時計を見て6時50分だと、せっかくだから10分休憩して、7時きっかりになったら勉強をはじめよう、とか思うことだ。
これが大いなるムダであって、こういうときは7時きっかりになるとトイレに行ってしまったりして、結局ダラダラと時間が過ぎてしまう。
なんと自分ちゃんの手間の掛かることだろうか。
でもタイマーを使うと、6時50分であろうと、6時51分であろうと、思い立ったその時が自分の勉強開始時刻であって、ピッとタイマーをSTARTしてしまえば、きっかり1時間が計れる。

タイマーを使って仕事をやっていると思うのだが、15分、30分ごろに怠けたいヤマが来る。
ちょっと横になりたくなったり、「まとめサイト」で他人の不幸話を読みたくなったりするのである。
しかし、横でタイマーの時間が刻一刻と減っているのに、わざわざサボるのも気が引ける。
ちゃんとした意識のときの自分が、ダメな意識の自分に喝を入れてくれるのである。

あと、何十回かこれをやっていると、「このだらけ気分のヤマを、気を引き締めて超えれば頑張れる」という感覚がわかってくる。
理由は完全には分からないが、「調子悪いな、休まないと死ぬのではないか」などというあらぬ妄想を取り除いてくれるのである。
体調が悪くても1時間ぐらいがんばれるだろう、と思ってがんばっていると、調子が上向いてくる。
1時間ぐらいなら頑張れる自信というか、心のクセのようなものがつくのだ。
やっぱりぼくのようなダラダラした人間は、ある程度意識してがんばらないとだめだ。

30分を超えるとノリノリになってくる。
ときには60分になっても、もうちょっとがんばった方がいいのではないか、次いつこのビッグ・ウェーブが来るかわからないから、貯金をしておいたほうがいいのではないか、などと思うこともある。
しかし60分でストイックに作業を中断している。

この、際限なく頑張ってしまおうという心も、裏返しの怠け心、作業を中断するという決断を怠けている心なのではないだろうか。
ある程度したら腰を伸ばさないと、体を痛めてしまうし、リバウンドがくる。

ここで家事を入れるといいような気がする。
洗濯機を回すとか、床をシュッと掃除するとか、机の上に落ちた抜け毛をコロコロで掃除するとか、それぐらいのことをやった方がいい。

もちろん60分がんばってヘトヘトになっているときもあるので、この時はガッと休む。
ベッドにひっくりかえって、目をつぶって、曲を1曲聴くと驚くほど休める。



実はキッチンタイマーをもう1個買っていて、そっちは休憩時間用にしていた。
10分も休めばいいだろうと思って10分にセットしていたが、これはすぐに廃止してしまった。
10分も休まなくていいことが多いのである。

このタイマーの欠点として、10分にセットしていて、そのセットを消してしまうようなフルリセットはできるのだが、計時中に計時を取りやめて、また10分に戻すようなリセットはできない。
5分も休んで、もう休まなくていいから仕事に戻ろう、と思ってSTART/STOPボタンを押すと、5:00の時点で止まってしまう。
次にSTART/STOPボタンを押すと残り5分のカウントダウンになってしまう。
じゃあMIN+SECの長押しでリセットするとどうなるかというと、10分セットまで消えて初期状態に戻ってしまうのだ。
せっかくスイッチがついているので、スイッチを切るとセットが消える、MIN+SECを押すと10分に戻る、という仕掛けにして欲しい。
まあ、100円のタイマーにそこまで求めるのは酷かという気もするが。
逆にこの機能があるやつがあったら、多少高くても欲しい。

作業は別にスプレッドシートで記録している。
1時間セットを1日何回やったか、それでどれほど仕事が進んだ、という記録をつけるのである。
こっちもそのうち公開する。

だいたいサラリーマンと同じ8時間も仕事すると、そこそこ作業が進むが、一方でくたびれて作業の質も落ちてくる。
最初の4時間は新規執筆に向け、次の2時間は画像の作成、あとの2時間は推敲に使うとか、濃淡を付けるといいような気がする。
こういうの、それほど続けてもいないのにうれしがってブログで紹介して、実はそんなに実績があがっていないということもあったが、このタイマー法に関してはもうかれこれ7月から3ヶ月以上も回っているので、そこそこ自信を持っておすすめする。
お試しあれ。