昨日(2014-08-04(月))、目黒にあるAmazonジャパンで開催された「初心者向けKDPセミナー」に参加した。
KDPとはKindle Direct Publishingの頭字語で、Amazonで売っているKindle書籍を個人が作成して売ることが出来るシステムである。
最近はKDPの他にもPuboo、BCCKSなどのインディーズ出版支援サービスが多く登場している。

電書によるインディーズ出版は著作者に取ってメリットが大きい。
まず、従来の物理本の自費出版のようにお金も掛からず、在庫を持つようなリスクもない。
それでいて文字通り全世界にクリックひとつで売り出すことが出来る。
しかも、編集、出版、印刷、取次という中間業者が存在しないので、高い印税を得ることも可能である。
一方、素人が勝手にワープロで作ってプロの目を経ずに配信することが可能なので、従来の出版物のようなクォリティが保証出来ないというリスクもある。

KDPは他のサービスと比較して、以下のような特徴がある。
 ・Amazonという大メジャー会社が売ってくれる
 ・他の電子書籍出版サービスと平行して販売することも可能だが、KDPセレクトという契約を結ぶと、高い印税率やセールへの参加などの特典がある
 ・MOBI(モビ)という、Kindle端末、およびiOS/Androidで使える無料のKindleアプリ用の、DRM(デジタル著作権保護機能)付きのファイルで配布しなければならない
  (iOSの場合はMOBIをさらにAZKというファイルに変換する)

このセミナーは、KDPで本を出版しようとする著作者のために、入門的なセミナーを、本家Amazonの方が無料で教えてくれるというものだ。
大変たくさんの応募が来たそうだが、無事当選した。
KDPアカウントを持っていながら、電書を出版したことがない人を招いたそうだ。

Amazonのビルは大変きれいで、電子改札のようなゲートがあってさすがにセキュリティが厳しいなあと思った。
エレベーターが例の段ボールのようなデザインになっていて、超かわいいので、係の人に写真取っていいですかと言ったが、撮影はご遠慮くださいということだった。
エレベーターもダメか!
ビルの外から入口を撮影したけどこれはいいよね。


前半:サービスとマーケの概要

まず最初に小菅さんという方から、KDPのサービスとしての概論やマーケ的なお話があった。

※2014-08-05追記:
 最初から書くつもりだったが忘れていました;
 以下、セミナーで私が理解したところをガーガー書く流れになりますが、私が拙い理解をしたところを私なりに要約して書くので、スピーカーの方がおっしゃったことを正確に伝えているとは限りませんこと、ご寛恕ください。
 また、内容の真偽についても保証できませんので、オウンリスクでお願いします。

最 初に「Kindleというのはあくまでサービスの総称で、Kindle PaperwhiteやKindle Fire HDXのような専用端末がなくても読めます。iOSでもAndroidでも無料のビューワーアプリを配布しています」というお話があって、そこからか!と 思った。
でも本当にここは引っ掛かるらしく、いぜん別の電書セミナーに行った時もこの話から入っていた。

ちなみに、いまググって知ったのだが、Kindleという名前の由来はラテン語のcandereで、輝く、明るく照らすという意味だそうだ。
ろうそくのキャンドルとか、あと灯具のシャンデリアも同じ語源だとか。

Kindleの由来・意味 - タネタン

セミナーに戻る。
Amazonでは、「KDPのお客様」という用語で2つの人を指しているそうで、一方は著作者で、一方は読者だそうだ。
本ブログではややこしいので、たんに著作者、読者と呼ぶ。

KDPは完全無料で、出版のコストが掛からないので、「自出版」という言い方はやめて欲しいそうだ。
でも、著者にしたら、いろいろ勉強するのにも時間がかかるしパソコンの電気代もかかる。
まあそれにしても、何十万円も書けて紙の本を印刷して在庫を抱えて・・・という話とはやはり違う。

アメリカではIndependent Authors(独立著者)という言い方をするそうだ。
インディーズというと、ぼくなどは世代的に70年代のパンク・ロックを想起する。
いまのインディーズ電書ブームは出版史におけるパンク・ロックのようなものかもしれない。

「KDPセレクト」の話があった。
これは著者が「電子書籍はAmazon、Kindleから独占的に売り出す」という契約を結ぶことだ。
(紙の書籍としては自由に売っても良い。)
著作者側のメリットとしては、印税が高くなるし、無料セールを設定できる。
(無料セール中は印税もゼロになるが、最初に順位を上げて可視度を高めるという戦略が可能である。)

面白いのが、Amazon側が特に評価の高い本を選んで日替わりセール、週替りセールなどに出すということだ。
日替わりセールで安くなった本は、500倍ほど売れるという。
しかしながらセールなので当然一冊あたりの印税は低くなる。
これは、当然ながらセールの前にあらかじめ著作者にセールで売っていいですかという了解を取り付けるということだ。

気になる印税だが、KDPセレクトにしないと最大35%だが、KDPセレクトにすると70%になるという。
ただし、PubooもBCCKSも印税率がもともと70%である。
まあAmazon/Kindleのネームバリューを考えるといちがいに比較できないだろう。
いろんな会社が群雄割拠していて、楽しくもあるし悩みどころでもある。

次はツールの話。
Amazon は、さまざまなファイルをMOBIファイルに変換するKindleGen(キンドルジェン)、MOBIファイルがいろいろな端末で正しく見えるか確認する Kindle Previewer、マンガのような固定レイアウト型のファイル作成に特化したKindle Comic Creater(KC2)を無料で提供しているとのことだ。
また、商用ツールとしては、ジャストシステムの一太郎やホイジャーRomancerが使える、という話があった。

後半:コンテンツの作り方、テクニカルな話

後半は、加藤さんという方が実際の制作の雰囲気について話された。
ブログを書くのも疲れてきたので箇条書きにすると

・コンテンツと表紙をアップロードし、書籍情報を入力すれば出版できる
・リフロー型の場合、入力ファイルはEPUBの他にWord(Doc/Docx)、HTML、RTF、XMDFが可能である
・HTMLからEPUBを作るには、読み順情報のopfというファイルが必要である
・Wordから作ると、縦書き、ルビがうまくいかない
・Romancerは縦書きもルビも使える

・リフロー型は読者が(端末側で)自由にフォントを選べる

この点に関しては、セミナーの後で個別に質問できる時間をくださったので質問した。
 Q:著作者が、ここは明朝にしたい、などとフォントを指定できるのか
 A:見出しは明朝にしたい、とか、一部なら出来ます。全体は出来ません
 Q:一部できるのなら、全体できるのではないか。あらゆるパーツにフォントを指定するとどうなるか
 A:あまり指定しているとファイルがアップロードエラーになる可能性があります
へー。

・固定レイアウト型はEPUB/MOBIを使う必要がある
・KC2を使ってフロー型は作れない

ところでぼくはフロー型の対義語はフィックス型だと思っていたのだが、今回のセミナーではなぜか「固定レイアウト型」に統一していたようだ。

Word、一太郎推しの話が多かったが、Macユーザーの人はPagesでは作れないのか、フリーソフトで行きたい人はLibreOfficeで作れないのか、と思ったのだが、聞くのを忘れてしまった。

・Amazonでは「Kindle本を作成するには」という無料の電書をKindleストアで公開している。内容はWord主体
・他に「Kindleパブリッシング ガイドライン」という100ページぐらいあるPDFもある。これはEPUB主体。全部読まないと出版出来ないというわけではない

・Wordで作るポイントとしては、目次の作り方と画像の挿入の仕方である

・Wordは見出しスタイルを使って挿入メニューから目次を作る
・このときページ番号をオフにする。電子書籍にはページ番号がないから
・かわりにハイパーリンクが使える

・画像は挿入メニューから図を取り込む
・コピー&ペーストをすると、Word上は画像が入っていても仕上がりで欠落することがある

・EPUBを作成するときのポイントは、目次の指定と言語の指定

・EPUBの目次はHTML目次と論理目次がある
・本の先頭に出てくるいわゆる目次にあたるのがHTML目次
・本のどこにいても呼び出せるのが論理目次
・必ず両方作ってください

・Wordで作る場合は、両方の目次がひとりでにできるから気にするな

・EPUB作成におけるOPFファイルの言語設定は、必ず「ja」にする
 ○ja
 ×JP、ja-JP
 <dc:language>ja</dc:language>のように指定する

・言語が正しく指定されていないとiOS用が売り出されません

・KC2は、高いピクセル数の画像がUI上貼れないように見えるが(?良く分からなかった?)ピクセル数ではなくアスペクト比が合っていればOK

・プレビューについて
・Kindle for Androidは実機でないとだめ。あまりにも機種が多く対応できない
・Kindle for iOSはMOBIをさらにAZKに変換してプレビューする
 (???ちょっとこのへん曖昧???)

・品質の瑕疵について。コンテンツのエラーベスト5

・第5位 インデントや改行、改ページがおかしい

  なぜか不要な改行が
  入ってしま
  うので読みにくいで
  す。
  1.箇条書きが
  2.    変です

 みたいな感じ。プレビューをしっかりすること

・第4位 目次がない、ハイパーリンクが機能しない

 しっかりリンクを貼ること。論理目次も作ること

・第3位 KindleGen以外でMOBIファイルを作っている
  中間のオーサリングはどんなサードパーティのツールを使ってもいいが、最終のMOBI作成はKindleGenを使わないと販売開始にならない
  いろいろなツールがあるが、なんとなく名前がモビでもダメ。正規のツールを使ってください。
  一太郎がバックエンドでKindleGenを呼び出している

・第2位 マンガ、写真集がリフロー型
  余白だらけ、見開きページにならない

・第1位 誤字、脱字
  紙の本は徹底的に校閲されている
  ブログを書くよりももう少しがんばって校閲しろ

質疑応答

 Q: 多岐に渡る機種で実機確認は出来ないが、画像の潰れ、切れということはないのか
 A: 縦横比は保証する。機種によっては余白が入って調整する

 Q: 広告目的、不適切なコンテンツではねられたという都市伝説があるが本当か
 A: 個別の案件には答えられないが、あまりにも読者の不利益になるようなコンテンツへのチェックはあるし、ガイドラインもある

 Q: ライブドアブログのEPUBを入力にできるか
 A: できる

 Q: 英語で本を出版したいが、amazon.comから出したほうがいいのか
 A: どっちから出した方が有利ってことはないです

ここが分からなかったので後で個別に質問した。

 Q: amazon.co.jpから出しても、自動的にamazon.comやco.ukから出るのか?
 A: 登録時に地域限定指定というのがあり、全世界にすると全世界の支社から配信される
 Q: 常に全世界にした方がいいのか
 A: たまに著者が国内の著作権しか保有していないケースは限定するようだ

以下はすべて個別に質問したもの。

 Q: Kindleの本の作り方って本を出すときスクリーンショットとか使っていいもの?
 A: そういう本はあるようだから問題ないのではないか

 Q: 電書で誤字、脱字があると、後から差し替えられるのではないか
 A: コンテンツプッシュというのを以前やっていて、間違いがある本は自動的に端末の本を書き換えていたのだが、4月からルールが変わり、それはしなくなった。
  よほど品質に重要な瑕疵がないかぎり、誤字脱字というレベルでは、差し替えは行っていない。

この件、ぼくはショックだった。
いぜん例のジョブズの日記をamazon.comで買ったら、しばらくして「写真が間違っていた」という理由で版が差し替わったことがあった。
それでぼくは、さすがは電子書籍、間違っても、間違っても、間違っても差し替えが行えるのかと安心していたが、そうではないということだ。
と、いうことをツイッターで呟くと、愛読している本の著者さんで、「プッシュではないけれど、読者が自主的に手動で新版をダウンロードするという形では差し替えが行えるはず」という風に教えてくださった方がいた。
詳しくは確認していない。
(スミマセン)

以上、初心者向けとはいいながら、なかなかどうして骨のある内容だった。
まあ本を一冊世に問おう、それも著者と編集者と出版社をすべて個人が兼ねようというのだから、覚えることが多くて当然だ。
ぼくはこの分野でヒトハタ上げようと思っているので、勉強になったし、これからも勉強大変だなあとも思った。