棒グラフ、円グラフ、折れ線グラフなど、グラフは無味乾燥な数字をビジュアルにして、物事をひと目で分かりやすくするものだ。
しかし、新聞テレビや役所の統計などで、分かりにくいグラフというのが多い。

最近ネットで話題になったひどい例としては、フジテレビのニュースで報じられた「目立つ“若い世代”の不祥事 警察に迫られる対策」というやつである。

20140717_fushouji_1

20140717_fushouji_2
あからさまにひどい。
まず、円グラフの中心が円の中心にない。
円グラフの基本ができていないのである。

次に、手前に向かって遠近が付けられていて、手前に並べられた若い世代が大きくなるようになっている。
この、3D円グラフという手法は、絶対に変に見えるのに、よく使われている。

そして、10代と20代は合算されている(!)。
なぜか60代がない。

50代は、10代と20代を合わせた数とほとんど変わらない。
あと、30代と40代はまったく一緒の数なのに、40代が過小に小さく見える。

こういうのを作図する方が、かえって難しいと思える。
数字の他に、どのデータを多く見せたいかを入力するグラフ作成ソフトとかあるのだろうか。

では、まっとうなグラフにしてみよう。
ここでいう不祥事とは、懲戒処分を下されたものということだから、10代と20代を按分すると、10代が少なくて20代が多くなると思う。
高校生以下の子が暴走しても不祥事とは言わないだろう。
しかし、データがないので、ここは合算する。

となると、30代40代も合算せざるを得ない。

で、問題の60代だが、不祥事ゼロ人とする。
実際は年金受給年齢の引き上げなどで、60代でもバリバリ働いている人が多いので、相当数の不祥事もどうしようもなく発生していると思うが、ここはお年寄りに超甘めに見積もる。

すると、こうなる。
20140717_correctedCircle1
若い世代少なくね?
普通若者というと、今の60代が10〜20代だった1960年代にはセックス、ドラッグ&ロックンロールと言って、若者とは明日なき暴走を繰り返すものだったのではないか。
(実態がどうだったか知らないが!!)
こうなると、もとのフジテレビのグラフは、明らかに意図があって若者を不当に貶めている、そして警察に対応を迫っていると言わざるを得ないだろう。
その意図が那辺にあるか、推測することは避けるが、とりあえずおかしい。

★★★

次は最近よく聞く論調があって、若者の自殺率が多いというものだ。
こういうやつである。
20140717jisatsu_ritsu
若い人が大勢自殺しているとなれば、これはかわいそうだし、日本の国益から見てもなんとかした方がいい。

ところで、このグラフは「率」を指している。
全体に対する割合を示しているのである。
であれば、何かの原因がトップになるのはあたりまえだ。
「他殺」がトップになるかもしれないし、「飢餓」や「戦争」がトップになるかもしれない。
では「率」ではなくて「数」で見たらどうなるだろうか。

この統計のグラフは見いだせなかったので、政府の統計を取ってきてグラフを作ることにした。
以下のページから、

統計表一覧 政府統計の総合窓口 GL08020103

「性・年齢別にみた死因年次推移分類別死亡数及び率(人口10万対)」をダウンロードし、上の「率」のグラフと同じ2012年(平成24年)の各年齢別の死亡者数を、死因別に色分けして、積み上げ折れ線グラフにしてみた。

こうなる。

20140717_deathNumber

わかりにくいが、一番上のオレンジの帯が自殺者数である。
全体の山の高さが死亡者数だ。

たしかに若者は、全体に対するオレンジの部分が厚いが、死亡者数で言えば中高年がはるかに多い。

死因は、一番下の緑の部分、悪性新生物(ガン)が圧倒的に多い。
これはガンが急に増えたというよりも、他の病気が治せるようになったということかもしれない。

でも、人間年を取れば死ぬのは仕方ないことで、若い人の死、そして自殺死とは問題が別だと考えるべきかもしれない。
(だったら最初に掲げたグラフのように、他の死因や世代と比較して若者の自殺を問題にする考え方も良く分からないが)
では今度は自殺者数だけで比較してみよう。
こうなる。
20140717_suicide
やっぱり中高年が多い。

詳しいことは浅学に知らないが、「自殺の原因を割合で見てそれを比較すると若者が多い」というのは、「若者の自殺が多い」ということの論拠としては薄弱なのではないだろうか。

体が元気で、世の中が平和であれば、自殺以外の死因が減るということも勘案した方がいいのではないか。

どうも、やはり、「若者」をことさらに問題視したい恣意的な論調を感じる。

他にも変なグラフはいっぱいある。
当たり前すぎることだが、グラフはもっと事実を分かりやすくするために使われるべきだ。

あとこのブログを書いて思ったこととしては、MacのNumbersはすごく使いやすい。

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