あらためて思うけど、ぼくは異常に電書が好きだ。
最近はリアル書店に不必要に行かなくなった。
以前は用もないのに本屋をぶらぶら渉猟して、知的な気分になって満足していた。
今思えばたいへんもったいなかった。
止めて大幅な時間の節約になった。
空いた時間を本の中身を読むのに使うことが出来るようになったのである。
もちろん、必要とあれば本屋さんにも行きますよ。
用もないのにダラダラ行く必要はないということだ。

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電書は、まだまだタイトルが少ない。
というのが、ちょっと前まで深刻な悩みであった。
正直、日本はアメリカに比べるとまだまだ遅れている。
でも、去年あたりから急速に伸びてきている。

タブレット端末さえあれば、何百冊も持ち歩ける。
本から本へ同じ端末で移り変われる。
その場で(電車の中であっても)すぐにコンテンツを買える。

こういう利点は以前から認識していたが、最近新しいことを認識した。
技術書をPCで読むと異常に捗る、ということである。
技術書は、プログラミングやWebのオーサリングをしながら、何なら別のドキュメントを書きながら見ることが多い。
PCと同じ机で分厚い本を開くのがしんどいのである。
さいきん電書を買った本で超ヒットだったのがオライリーの『詳説 正規表現第3版』だ。
恥ずかしい話、紙版を買ったのが積ん読になっていたが、あらためてオライリーのショップからPDF版を買い直した。

O'Reilly Japan - 詳説 正規表現 第3版

紙より電子の方が千円も安い。
PDFで、DRMなしである。
この本をビューワーで開き、同じPCでテキスト エディターを開きながら、読む。
面白いことはすぐにメモする。
気になることはすぐテストしながら読む。
楽しい。
読書を中断するときは、何時何分に何ページまで読んだ、とそのメモファイルに書いておく。
本とメモを開きっぱなしで置いておくことも出来る。

再開するときは、メモファイルを読み返してから本の続きを読む。
完全な読書時間記録、読書メモを残しながら読むことが出来るのである。
手を動かしながらなので眠くもならない。
異常に楽しいのである。
これは捗るよ。
オススメである。

しれっと宣伝になるが、拙著、『文字コード【超】研究』も電子化されている。
ノーDRMのPDFである。
ラトルズネット / 【電子版】文字コード「超」研究 改訂第2版

紙版をラトルズネットで買うとPDFも無料で付いてくるというサービスもやっているようだ。
ラトルズネット / 文字コード「超」研究 改訂第2版

技術書はもっとインタラクティブに、練習問題をテキストボックスに入れたり、プログラミングの実験をするプラットフォームを内蔵したらウケるかなとも思う。
今後の研究課題である。

さて、最近電書のプラットフォームや、ストアによって個性というか、いいところとダメなところがいろいろ出てきたので、状況を書いておく。

ハードウェア

Kindle Paperwhite、Kobo Gloのような6インチ、白黒の電子ペーパー端末が流行っている。
ぼくは両方買って試したが、結果から言ってダメだったので手放した。
目が悪いので、字が小さくてダメなのだ。
あと、表紙がカラーでないのが読書体験を削がれる。

結局iPad miniが一番いい。
とりあえず大きさ(小ささ)、軽さ、容量の大きさ、液晶の見やすさ的にベストバランスである。

ASUSのAndroid7インチタブレットも買ったが、馴染めなかった。
これは単純にiOSに慣れてしまったということだろう。

ソフトウェア

Kindleで買った電子書籍はiPadで読める。
これを知らない人がいまだに多くて驚く。
あえてAmazonがそういう誤解を解いていないところもある気がするが、Kindle本はiPad miniで読むのがぼく的には最高である。

ただ、iOSのKindleアプリは以下の欠点がある。
 ・アプリから本が買えない
 ・フォルダー分けが出来ない
 ・アプリから本を一時削除出来ない
 ・(iPadには関係ないが)PC版がない

フォルダー機能がなく、一時削除出来ないのが結構最悪で、気まぐれに買っては見たがそんなに見ない本が、いつまでも本棚に居座っていて、整理整頓も出来ない。
電子書籍の最大の美点を自ら失っているようなものである。
これは改善を望みたい。

あと、Kindle PaperwhiteのTVCMが超ウザい。
深夜にどこのチャンネルでもやっていてユーウツである。

Koboは、楽天という狂ったように宣伝メールを送ってくる企業の製品なので悪いイメージを持っていたから、あまり積極的に使う気もしなかったが、使ってみると意外といいやつである。
楽天を見直した。
Kobo電子書籍もKobo端末でないと読めないと思っている人いないだろうか。
Kindle電子書籍どうよう、AndroidでもiPadでもアプリをインストールすれば読める。

Kindleアプリに比べていいところは以下の点である。
 ・アプリから本を一時削除出来る(一度買った本は削除しても再ダウンロード出来る)
 ・(iPadには関係ないが)PC版がある

iOSと共通の欠点は以下である。
 ・アプリから本が買えない
 ・フォルダー分けが出来ない

自炊PDFをiOSで読むときは、ComicGlassというアプリで読んでいる。
階層フォルダーに対応していて、きめ細かい表示オプションがすばらしい。

Kindleアプリでも、自炊PDFを自分宛てに添付メールで送れば読めるという話だが、わざわざ試していない。

ストア

電子書籍ストアにも、いろいろ芸風の違いがある。

Kindleは、さすがに最大手だけあってコンテンツが多くて使いやすい。
たまにガッとセールがある。
角川文庫70%オフというのがあったので、寺山修司、横溝正史、阿佐田哲也を買いまくって、一気にKindle本棚の中身が昭和になってしまった。

楽天Koboは台風の目的存在である。
青年マンガなど、Kindleにはないコンテンツが多い。
あとセールをこまめにやっていて、楽天ポイントもつくので、とにかく安く買える。
デビュー当初はWikipediaの項目を本にしたり、版権が切れた楽譜を本にしたり、意味不明な行動で大きく評判を落としたKoboであるが、偏見を捨てて付き合ってみると意外といい感じである。

ただ、ポイントセールやクーポンポイントなどの画面が、例のあの原色ギラギラの楽天風であって、目がチカチカする。
楽天という企業にはものごとをオシャレにしたいとか、人からオシャレに見られたいとかいう欲求が全然ないのだろうか。
アメ横の問屋で本を買っているような感じである。

あと、どの本がセール中なのか、どのクーポンが何の本に適用するのか、迷宮のように分かりにくい。
これも楽天風である。
もうちょっとスムーズにしてもらいたい。

あと、大きな落とし穴があって、小学館のコミックをKoboで買うと、5年経つともう再ダウンロードできなくなってしまう。
5年単位の貸本である。

実際にはKindleであっても、DRMつきの電子書籍は実は購入ではなくて読む権利を(無期限で)借りているだけで、いつストアの都合で削除されても、あるいはストアがつぶれて読めなくなっても文句は言えない。
小さな小さな字のユーザー契約書にそういうことが書いてある(らしい)。

それにしても、5年という期限付きの貸本はエグい。
いかに日本の出版社がセコいか、電子端末で本を読まれることを本心では蛇蝎のように忌み嫌っているかが分かる事例である。

実はこれ、KindleもKinoppieも同じ制限があったが、その後撤廃している。
なぜかKobo版だけ撤廃していないのである。
そのかわりKoboの小学館コミックは、他ストアよりも100円前後安いが、100円ぽっち安くても期限付きはきついので買わない。

Koboは電子書籍界のSoftbankという気がする。
ギラギラしているし、やることなすこと目立つし、サービスが分かりにくいし、批判する人も多い。
しかし、とりあえず、安い。
Kindleが狂ったようにセールをやっているのも、はっきり言って楽天への対抗措置であろう。
そういう意味ではKoboにがんばってもらいたい。

技術書では、上でも述べたが動物の表紙で有名なO'reilyが電子書籍を充実させている。
DRMぬきのPDFであって、しかも安いし、セールもやっている。
オライリーは社是として電子書籍を普及させようとしている気概が伝わってくる。
最初に書いたが、分厚い技術書は電書になってぐんぐん読めるようになった。
早く「ラクダ本(Camel Book、Programming Perl)」と「ハリセン本(CJKV)」を電子化して欲しい。

他にもKinoppie、BookLive!などいろいろあるが、ハッキリ言ってDRMつき電書ストアはKindle、Koboだけでいっぱいいっぱいだ。
それ以上に専用アプリを増やしたくないのである。
あの本はあのストア、あの本はあのアプリなどと覚えているのがものすごい大儀である。
で、アプリを起動するとフォルダー分けされていないわけである。
萎える。

このへんがまだまだ、商用電子書籍はダサい気がする。
ライツの固まりというイメージがある音楽産業の方がずっと進んでいる。
早く使いやすくなってほしい。
DRMつきでもいいから、アプリだけでも統一できないか。
アプリが統一できて、フォルダ分けが出来たら本当にうれしい。
「読者の権利を制限するために使いにくくしている」のであれば、本当にダサい商売だと思う。
知性の象徴である書物なのに、お寒い状況である。

「スマホでみつえちゃん」はPubooで連載購読している。
DRMなしのPDF/ePubで読めて快適である。
「群雛」はBKKCSで、やはりDRMなしのePubを買っている。
これから自分で本を出すならBKKCSかなあと思っている。

個人出版的なタイトルが買えるのも電書の楽しさだ。
本の本来的な楽しさがあるような気がする。

これから進歩するしかない分野だが、まだまだ改善点はある。
いろんなストアの状況をウォッチするのも面倒くさいのだが、過渡期なのでしょうがないかなとも思う。